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PLAY new FOOTBALL”で若者のスポーツ離れに挑む!20代サッカークラブオーナーの施策(前編)

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世界でも類を見ないサッカークラブが、東京にある。

TOKYO CITY F.C.──。

東京・渋谷を起点に活動し、J1から数えてJ9にあたる東京都社会人サッカーリーグ3部に所属するクラブだ。

すべからく世のサッカークラブが第一義とするのは、「勝利」という結果であり、カテゴリーを駆け上がり、頂点を極めることだ。もっと究極的に言えば、レアル・マドリーやマンチェスター・ユナイテッドといったビッグクラブを目指すことかもしれない。

しかし、2014年2月に若手起業家やスポーツビジネス関係者を中心に設立されたTOKYO CITY F.C.は、少し違う。

もちろん都の社会人リーグを真剣に戦いながらも、彼らが真に向き合っているのは、「若者のスポーツ離れ」という社会課題なのだ。

クラブを立ち上げて5シーズン目だが、創設者でCEOを務める山内一樹さんを含め、現在、本業として運営に携わっている人間はいない。全員がセカンドプロジェクト、すなわち『2枚目の名刺』を持って、ライフワークとしてこのクラブに関わっているのだ。

興味深いスタンスを提示するTOKYO CITY F.C.。山内CEOに設立の意図や将来のビジョンを聞いた。

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(「サッカーダイジェスト」や「ワールドサッカーダイジェスト」などのサッカー媒体で長年取材に当たってきたインタビュアーの吉田治良(左)とTOKYO CITY F.C.創設者の山内一樹さん(右))

 

──まずは一枚目の名刺、つまり山内さんの本業について聞かせてください。現在は株式会社大学スポーツチャンネルの取締役ですが、この会社を立ち上げたきっかけは?

「立ち上げ自体は(青山学院大学の)大学3年生の時。ゼミの活動の一環として、東京都主催のビジネスプランコンテストに出場して優勝したのがきっかけです。大学スポーツの試合映像をネットで配信するというアイデアで優勝したんですが、賞金の300万円は会社を立ち上げることが前提だったので、一緒に参加したメンバー数人と起業したんです」

 

──そのまま現在まで?

「いえ、当時は会社を作ってのし上がってやろうという思いもなかったので、卒業と同時に就職しました。サイバーエージェントに」

 

──就職してみて、いかがでしたか?

「楽しかったですよ。短い期間の在籍ではありましたが、新しいことにどんどんチャレンジしていこうという環境はすごく刺激的でしたから」

 

──その後独立したのはなぜですか?

「ゼミ活動の一環であったとはいえ、自分の中で立ち上げた会社に残らず、就職という道を選んだのも、ある種の逃げみたいなところがあって。いろんな経験を積んで、力を付けてから、いつか自分の好きなスポーツの世界で何かをやってみたいと考えていたんですが、じゃあ、それっていつなんだ?と。就職をしたのが2011年の4月で、東日本大震災があった直後。いつ、何が起こるか分からないと考えざるを得なくなったことも大きかった。それに、失敗してもまだ22歳ですからね。短い期間でしたがサイバーエージェントを退職して、自分たちが立ち上げた会社に戻ったわけです」

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──上手く軌道には乗りましたか?

「DAZN(ダ・ゾーン=パフォーム・グループが提供するスポーツ関連の動画コンテンツ配信サービスで、2017年からJリーグの試合中継も配信スタート)の大学スポーツバージョンみたいなことをやっていたんですが、実際にサービスインするとまったく売り上げにならならなかった。当時はスマホも普及していなかったし、Wi-Fi環境も脆弱で、なかなかネットで試合を見るということが難しかったんです。3か月くらいで立ち行かなりましたね(笑)」

 

──そこからは、どうやって?

「自分たちがメディアとなって、人を集めて配信するのではなく、大学に向けて『プロモーションの一環としてスポーツを活用しませんか?』と提案したんです。大学が持っているYouTubeのようなソーシャルメディアでは、それまで学長の挨拶とか研究成果の発表とか堅苦しいものしか配信されていなかった。せっかくなら、スポーツのドキュメンタリーとか試合映像を通して大学のことを知ってもらったほうがいい。それで、そういった動画の制作・運用をやらせていただき、大学から広告予算をもらうというモデルに切り替えたら、比較的スムーズに軌道に乗りましたね」

 

──今はどのくらいの大学と取り組みを?

「母校の青学から始めて、現在は関東を中心におよそ30大学。部活の数で言うと1000くらい。サッカーやバスケットボール、ラクロスなんかが多いですね」

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(画像出典:株式会社大学スポーツチャンネルHP)

すると、ここから山内さんたちの取り組みは大きな広がりを見せていく。

いわゆるミレニアル世代と呼ばれる、2000年以降に成人になった若い人たちに対して、いかにSNSを使ってスポーツコンテンツを届けるか──。そうした「ミレニアルズマーケティング」という発想に、Jリーグが魅力を感じたのだ。

「当初は大学と学生連盟を中心にビジネスをやっていたんですが、2015年頃にJリーグから仕事をいただくようになりました。当時の我々は、大学や学連のコンテンツを同じ現役の学生に届けて、彼らの足を試合会場に運ばせることを目的としていましたが、そこに観客の高齢化という課題を抱えていたJリーグが興味を示してくれたんです。インスタグラムを立ち上げてみたけれど、若い人向けに運用するのは難しい。だからまずは、そこから手伝って欲しいというお話でした。その後、ツイッターとフェイスブック、そして最近ではLINE運用のサポートも始めています。これが初めてのプロとのお仕事で、ここで結果が出始めてから、バスケのBリーグとか野球の侍ジャパン、それにアマチュアのカテゴリーにも広がりが出るようになりました」

 

──Jリーグでは具体的にどんなコンテンツの制作を?

「Jリーグが持っているSNSのアカウントと、リーグサイトの一部のコンテンツ作りのサポートを任されているんですが、インスタだと試合結果よりも、『こういうファッションで試合を見に行ってみよう』とか、『観戦アルバムを作ってみよう』とか、日常にJリーグがあるライフスタイルを提案するものが多いですね。フォロワー数は現在約18万人です」

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(大学スポーツチャンネルが運営サポートするJリーグの公式Instagram)

順調な企業運営。では、ここからなぜ、サッカークラブを設立するという動きに至るのか。山内さんがサッカークラブのオーナーという2枚目の名刺を持つに至ったのは、強い課題意識からだった。

———後編につづく

INFORMATION
TOKYO CITY F.C.が2枚目の名刺としてスポーツに携わりたい人に向けたイベント開催!

TOKYO CITY SPORTS MEETING #スポミ

「ライフワークとして携わるスポーツビジネス」

・開催日時:2018年8月3日(金)19:30~21:30 (※受付開始は19:00〜)

・会場:TOKYO CITY F.C. 渋谷オフィス

・対象:スポーツに関する仕事に興味のある学生及び若手社会人

・参加料金:一般2,500円・学生1,500円(軽食代込み)

・登壇者:細野 雄紀氏(JX通信社取締役COO)

中村 友美氏(アメアスポーツジャパン株式会社)

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ライター

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編集者

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カメラマン

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吉田 治良(よしだ・じろう)
ライター
サッカーダイジェスト、ワールドサッカーダイジェストの編集長を歴任し、現在はフリーのライター兼エディター。1967年生まれ。