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ベクトルを社会に向けて一歩動く【”働き方改革”とにっぽんの将来】分科会レポート③

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2017年11月18日有楽町国際フォーラムにて日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラムにおいて「“働き方改革”とにっぽんの将来」というテーマを元に、パブリックセクター(行政)、ビジネスセクター(企業)、ソーシャルセクター(NPO)の3つの分野の人々が集まり、働き方改革を通してどのようにイノベーションを起こしていくか、それぞれの視点からのプレゼンテーションとディスカッションが開催された。

「働き方改革」をソーシャルイノベーションにつなげる【”働き方改革”とにっぽんの将来】分科会レポート①

あなたは“働き方改革”にワクワクしていますか?【”働き方改革”とにっぽんの将来】分科会レポート②

 

働き方改革は自分で働き方を選ぶということ

最後第三走者のバトンはNPO法人二枚目の名刺・代表の廣優樹(以下廣)のプレゼンテーションに。廣自身ははじめに「共感」というワードから話し始めた。

「僕自身は現在NPO二枚目の名刺の代表ということと、一企業人という立場でもあります。また過去パブリックセクターに2年間在籍した身として、経産省伊藤さん、ユニリーバ島田さんお二人のプレゼンテーションに実感を持ちながら非常に共感しています」。

働き方改革で会社も変わり始めています。その中で、個人という立場では、自分の働き方、生き方を自分で選ぶということが大切だと考えています。僕自身も会社の仕事、それ以外の取り組み、そして3人の娘、妻を含めた家族との時間をどのように設計をするといいのかなと常に考えています。丁度会社の働き方改革の一環で4月からPCを持ち帰る制度が導入できたので早速積極活用しています。好きな時間に好きな場所で働くまでには至っていませんが、定時の17時30分に職場を離れ、21時くらいまでは家族との時間をとり、必要あればその後仕事するという生活です。働き方改革は、会社だけが取り組むものではなく、働き手である自分たちもどんな生活をしたいのかを考えて働き方を実行していくことなのだと思っています」。

具体的な個人の生活から見る“働き方改革”への一歩の話から、いよいよNPO法人二枚目の名刺の活動に話は展開していく。

「ここに3人の2枚目の名刺を持つ人たちをあげています。左端の女性はPR会社で働いている中で、国際協力NGOの事業推進に取り組むプロジェクトに参加しました。プロジェクトを終えた時、『NPOの活動を“広報”のプロとして後方支援したい』という学生時代からの想いを、改めて確かな想いであると確認した彼女は、PR会社の仕事の傍ら、NPOでは広報を担当し、さらには大学院で広報をテーマに研究にも取り組んでいます。

中央の男性は僕の同級生ですが、教科書出版の営業の一環で全国を飛び回りながら、同時に行く先々で高校ラグビーのコーチをしてきました。そんな彼は徐々にその取り組みの幅を広げ、現在は解説者や高校ラグビー日本代表のスカウティングも担当するようになっています。彼にとって、ラグビーは自分自身を形作ってきた大切なスポーツであり、そしてその取り組みを通じて人を育てることがライフワークにもなっているのです」。

 
3人目は、ある自動車メーカーで働きながら自分の夢である『空飛ぶ車』を作ることを2枚目の名刺にされた事例です。東京オリンピックの聖火を『空飛ぶ車』で点灯させたい、そんなことを話してくれる彼は、社内でどうしてもプロジェクト化できなかったこともあり、想いを共にする同業他社、航空機のエンジニア、大学関係者と共に、社外でプロジェクト化しました。

2枚目の名刺というと、ともすると社会貢献のための名刺かと思われるかもしれませんが、僕は“このような社会を実現したい”と組織の枠にとらわれず何かに取り組むときの名刺だと思っています。後日談ですが、この手弁当で始まった空飛ぶ車プロジェクトは、自動車メーカー、部品メーカー等から資金提供を受けて活動は継続することになり、さらにはこの方自身、所属する自動車メーカーからこのプロジェクトに出向する形になりました。

この3人は単にお金を得るためのものではなく、自分のためだけの趣味でもなく、ベクトルを社会に向けて活動しています。そして、自分の今いる組織・立場という枠から一歩、半歩踏み出て自分の想いを表現しています。“マイ・ミッション”を宣言して、自分の人生を選択している点、そして一歩、半歩踏み出して自らチャンスを広げている点も見逃せません」。

廣はここで世の中を取り巻く副業の概念にも触れた。

メディアで取り上げられている副業は会社に隠れてやっていたり小遣い稼ぎに見えたりする。そういった要素が、企業の、特に大企業の経営層が嫌がる理由となっているという。そして、隠れてやるから、結果的に自分が属す会社や組織を含む周囲からも応援されない、周りから隔離された状態でやっているから、チャンスも広がりにくい。

「そのような副業とは別に、僕らが勧めたいのは、時間制約がありながらも本気で取り組み、社会に価値を生み出し、その過程で自身の変化・成長も生み出すような“社外での活動”です」

廣からは新しい副業(複業)感として以下の3つの提示がなされた。

  1. ベクトルを自分だけに向けず社会に向ける中で、これまでとは違う様々な人と関わりを持ち、自分の価値観・やりたいことを見直す機会となる
  2. 隠れてやる必要がないから、社内外から応援してもらえるし、企業・組織で働く人は社内に持ち帰り、より大きな形に発展させられる可能性がある
  3. 限られた時間の中での本気の取り組みが、成長・キャリア構築につながる経験になる

2枚目の名刺は自分の生き方を主体的選べるようになるためのきっかけでもあり、同時に主体的な選択をするための選択肢なのだという。

「ただ、自分は何をすればよいのかわからない、そういう方は少なくありません。そこで、僕らは、2枚目の名刺をもつきっかけのプロジェクトとして、NPOサポートプロジェクトを展開しています。社会人6人程度が、3、4ヶ月の期間、社会課題の最前線にいるNPOの人たちとともに事業推進に取り組むプロジェクトです。NPOが対峙する社会課題には、解決のための正解がありません。その答えがない中で、異なるバックグラウンドを持つ人たちが出会い、互いにもがきながら一つのプロジェクトにチャレンジをしていきます。いつもの会社での自分の思考軸とは異なるものに触れることは大きな刺激なります。そして、NPOが持つビジョンやパッション(情熱)に触れることが、大きく価値観を揺さぶられる経験となり、自分自身が何者なのか、何を実現したいのか、ということを考えるきっかけとなります。サポートプロジェクトにより、NPO、社会人、そして社会人が所属する企業・組織に変化が生まれるプロジェクトです」。

マイ・ミッションを持った人たちによるコレクティブインパクトでできること

コレクティブインパクトという言葉をご存知だろうか。このイベントの場のように、立場の異なる組織(行政、企業、NPO、有志団体など)が、組織の壁を越えお互いの強みを生かしあいながら社会課題の解決を目指す動きのことだ。

今までは社会の課題に取り組むのは行政であり、NPOだと言われてきた。ただ、それぞれに強みと弱みがあって、例えば行政は広くあまねく制度を通して伝えることができる、その一方クイックに動けないことは弱い部分だ。NPOは現場の最前線で当たっているけれどスケールする力に欠ける。社会が複雑になってくる中、行政、NPOそれぞれが単独で社会課題を解決しようと思ってもうまくいかないことも増えてきている。

コレクティブインパクトは、特定の課題に対してステークホルダー(利害関係者)が連携して課題解決に取り組もうとする考え方だ。例えば、企業を巻き込むことができれば、取り組みを一気に加速させることができるかもしれない。

そのような動きが実際に起こっている現場を廣があげた。

「1つは渋谷の取り組み。SKAP というもので、小学生がフィールドワークをして自分の街に何ができるか、どう変えていくことができるかを考え、大人たちに提言、実現させようとするプロジェクト。これを立ち上げたのはマイ・ミッションを持った個人とNPO団体2<つ。取り組みは、街づくりに関心のあるディベロッパー3社が同業他社である縛りを超えて応援してくれました。商店街、町会そして渋谷区も乗りました。街づくりの中心に子どもをおき、皆が子どもたちから未来を感じられたこと。このプロジェクトは2017年3月にトライアルが終了、7月に本番プロジェクトを実施したのち、2018年も動くことが決まっています。
もう1つは汐留LifeWorkSプロジェクト。

LifeWorkS Projectがデザインする未来・会社・社会ーここから汐留のコレクティブ・インパクトが生まれる

これは汐留界隈にある企業の人事部の人たちが連携して作った仕組み。立ち上げた彼らに共通するのは、自分自身の夢や大好きなことを見つめ直すために会社を一歩踏み出し、そして今の仕事と重ね合わせてほしいという想いです。キックオフには各企業だけではなく、港区の行政、NPO、学生も多く参加していました。7人のマイ・ミッションを持った人が自ら社会で実現したい取り組みをプレゼンテーションしそこに共感する人が集まる。これからセクターを超えたコレクティブインパクト創出の場になりそうです」。

このようなコレクティブインパクトが生まれやすい状態にするには何が必要なのだろうか。そこに廣は「越境する」という雰囲気づくりや環境整備が必要だといっている。

イノベーションを望むならば、人が今いる場所を超えて踏み出し、これまでになかったつながりから、新しいコトを創出して行くことが必要になる。越境すること、マイ・ミッション・プロジェクトが立ち上がることを阻害するというのは、すなわち日本においてこれから新しいものが生まれることを阻害しているのだという危機感を持つべきだと指摘する。
廣からは社外での活動を推進する手段として、以下のアイディアが示された。

越境(副業解禁)の後押し施策としてとして、Social PurposeNPO等)の活動に取り組んだ時に得られる副業所得に関して、時限措置として上限を定め所得控除の対象とする。

  • 企業・行政は、社内外から納得を得やすい分野で社内外からな遠くを得やすい分野で副業完全解禁の助走に取り組むこができる
  • NPO は、善意だけに頼らない、価値創造と対価を受払することを意識した事業経営に向かう。担い手も有償スタッフ、無償ボランティアの間の選択肢ができ多様化する
  • 個人は、金銭的報酬が越境を行うインセンティブとなり、ソーシャル活動への参加価値創出のサイクルが実現

それぞれの一歩は自分の想いを表現することという小さな一歩からのスタートであること。その想いの表現方法は様々で、ある人は自社に何か働きかけることなのかもしれないし、ある人は自分が住まう地域に関わりはじめることかもしれない。いずれも自分の生活や仕事に関して自分は何を感じるかを明確にすることから始まるのかもしれない。

改革を始めるとしたら、今日々の暮らし、仕事の中で自分は何を感じているか、その想いを自分に問いかけて、今いる場所から一歩でも半歩でも外に出よう!と思わせてくれた。

写真)海野千尋

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海野 千尋
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2枚目の名刺webマガジン編集者。複数の場所でパラレルキャリアとして働く。「働く」「働き方」「生き方」に特化した取材、記事などの編集・ライターとして活動している。