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2017年11月18日有楽町国際フォーラムにて日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラムにおいて「“働き方改革”とにっぽんの将来」というテーマを元に、パブリックセクター(行政)、ビジネスセクター(企業)、ソーシャルセクター(NPO)の3つの分野の人々が集まり、働き方改革を通してどのようにイノベーションを起こしていくか、それぞれの視点からのプレゼンテーションとディスカッションが開催された。

「働き方改革」をソーシャルイノベーションにつなげる【”働き方改革”とにっぽんの将来】分科会レポート①

 

“働き方改革”は生き方を決めること

経産省伊藤さんの次を走るのはビジネスセクターとして、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社(以下ユニリーバ)取締役・人事総務本部長の島田由香(しまだゆか 以下島田さん)さんにプレゼンテーションのバトンが渡った。

 

「先ほど自己紹介の時間で隣に座った学生とお話したのですが、彼女になぜ今日この場に来たのか聞いたんですね。そうしたら『3日前にFacebookでみておもしろそうだから』って言っていて。私はその感覚がとてもいいなと思いました。自分がピンと来たもの、おもしろそう!と思ったこと、そう感じた場所に実際に足を運んでみるというのはとても大事。企業でもそうで、『あれ?』って思ってもやっちゃいけないって思っている人が多いんですよね。『会社がそれを許してくれない』って思っている人がとても多いです。でも私は現場でずっと言っています。『それ思っているならやっちゃおう!』って」。

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「感覚ってとても大事なのです。自分の直感、自分の感情をどうか大切にしてください。企業で長く働いている方は『感情を出すな』と言われている人が多いんですよね。でも私たちロボットじゃないんですよ、人間ですから。感情を殺すことは人間じゃなくなるってことと同じです。喜ぶことも悲しむこともできなくなってくる。喜怒哀楽の根源はパワーです。みなさん、今日の場所でどうぞ自分の感情を感じてくださいね!」

開口一番、島田さんからとてもエネルギッシュな言葉が飛び出して来て、会場の参加者の気持ちが揺さぶられているのが目に見えた。
島田さんはさらに自分の言葉に落とした話し方でユニリーバの取組について話し始めた。

「生産性を何で測るかという問題について、私は確信を持って言い切れることがあります。感覚値で良いのではないかと。生産性というのは測ろうと思えばいくらでも測れるんですよね。分母も分子もいくらでもありますから、好きな値を各企業が決めたらいいと思います」。

ユニリーバでは2016年7月から働く時間・働く場所を社員が自由に選べる「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」という人事制度を始めた。その名称の通り、平日6時から21時の間で社員が自分の勤務時間・休み時間を自由に決めていいし、働く場所も会社以外の場所、例えば自宅でもカフェでも図書館でも、どこでも良い。そしてこの制度は工場など一部の部署を除く全社員に適用であり、この働き方を選択するにあたっての理由も必要ない。この制度の革新さをさまざまなメディアが取り上げたことは記憶に新しい。実際に仕組みを作ってからさらに可視化されたことがあるようだ。

“働き方改革”ってどういうことなのかな、と考えたとき、私は生き方を決めることだと思いました。私たちの会社で取り組んだWAAはまさに自分の生き方を幸せにしていくための手段でした」。

WAAの取組みで見えてきた効果

「このWAAの導入をして実際どんな効果があったと思います?」

島田さんはにこやかな笑みを向けて参加者に質問を投げかけた。

「生産性が30%アップしました。約7割の社員がポジティブな変化を感じています。Happyに思うかどうかも33%上がっている。4人中3人の人が『生産性が上がった』と思っているのです」。

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生産性以外に様々な指標を持ってWAAの効果を検証した結果を話す島田さん

実際にWAAを使用したことによってより具体に見えてきたことは、通勤時間の割愛やラッシュアワーの回避、そして家族と過ごす時間が増えたという理由がもっとも多くの理由だったことだ。

私は常々言っているのですが、通勤ラッシュを撲滅したいのです。なぜどの会社も9時に出勤しなくちゃいけないのでしょう?WAAの取組でこの回避ができることがわかりました。でもこれってユニリーバだけがやっていてもダメなんですよね。社会全体で取り組まないと!“神話”と言われていることを疑って、当たり前だと思っていることに疑問を呈していく。そんなことができる人を増やしていけたらいいなと思っています」。

島田さんご自身がまさに今ある固定観念を打破する精神を持っており、さらにそれを自身の言葉を持ってはっきりと明言している。
「WAAが成功した要因はビジョンからスタートしたこと、これに尽きます。『長時間労働がどうだ』とか『生産性はどうだ』という具体な事象からスタートしているのではなく、私たちの企業は、社員は、どうありたいのか、幸せに生きたいのではないか、そんなビジョンから創っていったのです」。

幸せに生きるために『働く』ことは自分を表現するツール

島田さんがご自分の言葉で語っていると判断できた大きなポイントとして、人事部・HRの場所にいる人にとっては躊躇するような言葉を、ご自身の言葉でまっすぐに伝えていたから。

「私の大嫌いな言葉の1つ、“生産性”という言葉です。皆さん“生産性あげてください”って言われてワクワクします?企業ってすごくそれを言うでしょう。生産性ってインプットが分母でアウトプットが分子だと思われがちですよね。でもそれって本当でしょうか。本当のインプットは何か、それによってアウトプットも変わるのだと思います」。

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「私は“生産性”に変わる言葉を考えていて、その言葉を“生き生きと産み出したくなる状態=幸性(しあわせい)”と言っています。人はハッピーであると生産性が30%高いんですよ、営業成果もクリエイティブも。『働き方改革』とは幸せに生きていきたいかどうかを決めて、その中に『働く』と言う自分を表現するツールを用いて実行していく。そういうことなのではないかと感じています」。

島田さんからの提言はまさにWAAを使った取組みの拡張であった。

ビジネスセクター:ユニリーバ島田さんからの提言

WAAで地方創生を!
・自治体と協働・連携
・47都道府県にコワーキングスペース作る
・ユニリーバ社員は好きな地域に滞在しながらWAAで業務従事
・業務外時間は滞在地域の活動従事

ビジネスセクターの場から“働き方改革”に対してこんな伸びやかな表現と実践のプレゼンテーションが起こったことはとても刺激があるものだった。

改革は戦いでもある一方、戦いそのものを楽しんで軽やかに駆け抜けようとするマインドを持つ人と企業があることの価値。

ユニリーバの取組みから受け取った大きなメッセージとして「企業が社員を絶対的に信頼している。そういう企業がある」ということ。だから改革に踏み切れるし、だから実際に変化を起こせる。WAAの取組みを見てもっとビジネスセクターが揺れたらいい。そんなワクワクを感じる時間だった。

 

>レポート③に続く

写真:海野千尋