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小学生の「本気の提案」で原宿の街が変わり始めている! 2018年「Social Kids Action Project」開催レポート

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放課後NPOアフタースクールと二枚目の名刺、Kids Experience Designer 植野真由子(うえのまゆこ)氏が共催している「Social Kids Action Project(ソーシャル キッズ アクション プロジェクト、以下SKAP)」が、昨年に引き続き開催された。

昨年のSKAPの様子>>“社会は自分で変えられる!”小学生が地域課題に本気で取り組む「Social Kids Action Project」密着レポ

 

SKAPは小学生が原宿の街を歩き、街に住む人、訪れる人たちの話を聞き、街の課題を発見するとともに、解決するアイデアを大人たちに向けて提案するというもの。

今年も東急不動産やNTT都市開発といった原宿の街づくりにかかわる民間企業や、渋谷区や原宿表参道欅会などの行政、地域が後援に。プログラム期間中は、各企業や行政で働く大人たちがメンターとして参加し、子どもたちをサポート。

 

昨年同様に最終日には、子どもたちが大人に向けて提案のプレゼンテーションを行う発表会が開催されたが、ひとつ昨年と違ったことがあった。それは、過去のSKAPで子どもたちが提案した内容の「その後」が報告されたことだ。

 

「外国人観光客が増えている」という街の声を聞いた、小学生の提案は?

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(最終日のプレゼンテーションに向けて、発表資料も自分たちで作成。)

SKAPの最終日、子どもたちは、渋谷区長をはじめとする大人たちに向けて「本気の提案」を行う。そして、それを聞いた大人たちは、提案した子どもたちとともに実現に向けた行動を「本気で」考える。

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(プレゼン後には、大人たちが感想やアドバイスを記入したふせんを、子どもひとりひとりに贈る。)

インタビューを行ったさまざまな店舗で聞かれたのが「外国人観光客が増えている」ということ。そんな観光客に向けて、住んでいる人だからわかるおすすめスポットを紹介したパンフレットの作成を提案した女の子には、「防災用の地図アプリと連携しては?」とアドバイスをくれた大人が。

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また、「若者の街」というイメージが強い原宿だが、実は昔ながらの商店街もあり、さまざまな年代の人が暮らしている。そんなところから着想した「1カ月に1度話題が変わり、いろいろな年代の人が楽しめるお店をつくる」というアイデアは、社会福祉協議会主催のサポートのもと、区内の各所でも増えている「サロン活動」をベースに展開できるのではと感じた。

このように、子どもたちの「本気の提案」を聞くと、大人も「あの企業と連携すれば実現するのでは?」「あの施設が活用できるのでは?」とあれこれ考えを巡らせ、手助けがしたくなってくる。子どもたちにとっても、SKAPに参加して、自分のアイデアを実現することが大きな意味を持つが、地域の大人たちも、子どもたちから課題解決のきっかけをもらっているのだ。

それが証明されたのが、昨年度の提案の「その後」についての報告。いくつものアイデアが、さまざまな形で進展を見せた。

「落ち葉拾い大会」から表参道ブランドの堆肥が誕生

「原宿には緑が少ない」という課題から発想され、キャットストリートにりんごの木を植えて「アップルストリート」に変える「渋谷を変える1本の木」は、まず賛同者を探すため、Earth Dayに出店していた店舗や企業に自作のチラシを配布。すると『パタゴニア』が興味を持ってくれ、キャットストリートの店主たちで作るコミュニティCATsにつないでもらえた。

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CATsの清掃活動に参加して、想いを伝えると、具体的なアイデアや協力を申し出てくれる大人たちが。ただ、その後、りんごの木を植えていい場所を確認するため、渋谷区役所の緑と水・公園課を訪問すると渋谷区の街路樹や公園には「実のなる木は植えられない」決まりがあることが発覚! 断然せざるを得ない状況に。

余談だが、筆者は現在、渋谷区内で植物の育成を通じた地域コミュニティ形成を目指して活動をしている。緑と水・公園課で全く同じことを聞かされ、意気消沈していたところであった。提案した女の子とともに、この決まりを乗り越える方法がないか考えていきたいところである。

また、同じ女の子は「交流しようよ!イベントで」というアイデアも提案。表参道でケヤキの「落ち葉拾い大会」を計画して、原宿表参道欅会やグリーンバードの協力のもと開催。「渋谷のラジオ」にも出演して宣伝を行った。

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(「落ち葉拾い大会」は今年も開催予定とか。)

さらに、「拾った落ち葉を堆肥にしたい」という想いを受け止め、実現してくれる大人が。区内の保育園の一角にコンポストボックスを設置させてもらい、すでに堆肥も完成している。表参道のブランド落ち葉であるケヤキの堆肥は、新たな渋谷区の名物になるかも!?

SKAPでNPO団体と関わったことから将来の夢が

大量のゴミ処理とセキュリティ対策を兼ね備えた「テロ対策のゴミ箱」の提案をした男の子は、伊勢で行われた『第1回世界こどもサミット』に参加。SKAPのようなキッズプロジェクトの重要性を訴えた。

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(『第1回世界子どもサミット』でのプレゼンテーション。)

SKAPを通じてNPO団体で働く大人に出会った彼は、「将来はNPO団体を立ち上げる!」と話している。

自由に落書きができるスペースを作る「らくがきデパート」を提案した女の子は、町会の方に連絡をして、落書き消しを体験。せっかく落書きを消した壁に、瞬く間に新たな落書きがされる悲しい経験もすることに。

彼女の想いは「もっとたくさんの人に落書き消しに参加してほしい!」ということ。

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発表会に出席した落書きに頭を悩ませる町会の方からは「いたちごっこではあるが、消さないと街が荒れてしまう」という声が。落書きができないようにする特殊なペンキもあるが、高価なため町会で用意するのは現実的ではないのだとか。

落書きやポイ捨てについての問題は、今年のSKAPでも課題として出された。すぐに解決するものではないが、きれいにした壁に落書きをされた経験も、彼女が次なる行動を起こすエネルギーに変わることを祈りたい。

提案を受けて、原宿の真ん中に「畑」が完成!

昨年のSKAPで多かったのが「原宿で野菜を作る」という提案。「きみも農家になれる!しんせん野菜タワー」「べんりで楽しいスーパー飲食店」「とってつくっていただきます」という3つの提案があった。

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これを受けて、特別協賛の東急不動産が、東急プラザ表参道原宿の6階にある「おもはらの森」に畑を作った。運営は渋谷区内で都市農業プロジェクトを推進しているURBAN FARMERS CLUBの方々が担当。

近隣の保育園児がオープニングイベントから参加し、種まきや間引きも行った。6月の収穫祭では、みんながとれたての野菜を大喜びで食べる姿が。

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提案した本人は「提案が動いたのがうれしい」とコメント。これは子どもの提案に、大人たちが乗っかって動かした例と言える。

過去の提案の実現を、今年の参加者も実感

昨年の発表会の当日に、ラフォーレ原宿の荒川社長から協力の呼びかけがあった「ファッションでイベントをしよう」。

衣:季節にあったカラーの洋服を作る

食:食イベントを開催する

住:売り上げをケヤキ並木の整備に使用する

という3つの提案をしていたが、

「季節にあったカラーの洋服を作る」として、ラフォーレ原宿が行っている清掃活動「クリーンキーパーズ」のユニフォームに彼女のデザインを採用してもらえることに。

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(プロのデザインの行程を体験することができた。 )

Tシャツ、ビブス、キャップの3種類のデザインに挑戦した。プロのデザイナーに指導してもらい、「好きなものを好きなようにつくるのがデザイナーではない」ということを学ぶこともできた。

「食イベントを開催する」は、小学校の清掃活動で作ったユニフォームを着てもらうという形に転換。清掃活動の際にビブスを着用してもらうことと、ビブスの保管方法についての相談を校長先生に行って、許可を得たのは彼女自身だ。

また、彼女がデザインしたキャップは今年のSKAPに参加した子どもたちが使用。昨年の提案が形になっていることを、参加した子どもたちすべてが実感することができたのだ。

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(完成したキャップとTシャツを身につけて成果を発表。)

提案の実現が、子どもたちを「課題解決の担い手」に育てていく

「人工知能やテクノロジーの発達で、人間の仕事が奪われる」シンギュラリティが起こると言われる時代。これから社会に出る子どもたちには、ペーパーテストで高得点をとる「学力」とは違った「力」が必要だと言われている。

その「力」とは何かといえば、自ら課題を見つける「課題発見力」、そして解決策を考えだして実行していく「問題解決力」にほかならない。SKAPで地域課題の解決に取り組み、自分たちのアイデアが実際に街を変えていくことを実感した子どもたちは、その成功体験から「課題発見力」「問題解決力」を育んでいくだろう。

育まれた力は、やがて子どもたち自身の人生を切り拓いていくとともに、彼らの周囲の課題解決にも役立つに違いない。

今年の提案も早速進展しているものがあることを、SKAPのホームページから知ることができる。引き続き提案の進展を見守るとともに、SKAPに参加した子どもたちが、いずれソーシャル・イノベーションを起こす担い手となってくれるのを楽しみに待ちたい。

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古川 はる香
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フリーライター。主に女性誌や育児誌、WEBで執筆。
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