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【二枚目な行政マン】4つの志事に挑む現役公務員・島田正樹さんインタビュー

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さいたま市役所に勤務する公務員でありながら、NPO二枚目の名刺など、自らが“志事”とする4つの課外活動に取り組んでいる島田正樹さん。私生活では2人の子供の父親としての顔も持っている。「仕事・私事・志事」の3軸を行き来する生き方を選んだきっかけは何なのか、現役公務員でありながら複数の名刺を持つ理由は何なのかー。NPO二枚目の名刺・代表の廣が聞いた。

島田正樹さんと代表の廣

魂を燃やして挑む「4つの志事」

まずは、島田さんの4つの志事を簡単に紹介しよう。

■公務員キャリアデザインスタジオ

2015年3月に自ら立ち上げ、代表を務める団体。大学生に向けた「公務員の仕事」をテーマとした講演活動や、若手公務員のための勉強会などを行っている。

■関東自主研サミット

年に一度開催される公務員イベントの実行委員。首都圏を中心に、自主的な研修や研鑽活動を開催している公務員団体の運営者が集い、共通の関心事について話し合うイベントを実施している。約2年前から参加。

■SAITAMA TOMIN LABO

公務員に限らず、「都内で働く埼玉県民(=埼玉都民)で地域を盛り上げよう」という大宮を中心とした取り組み。地元の祭りやイベントを企画したり、新しいお土産を作る活動を行ったりしている。2015年春より参画。

■NPO法人二枚目の名刺

2016年2月に行われた作戦会議に初めて参加し、夏フェスで2つのイベントの統括を担当したほか、埼玉では初めての作戦会議を行った。「2017年は埼玉に二枚目の名刺を広げていくための起点になってもらいたい(廣談)」

こうして見ると、2015年の春頃から、本業以外の活動に関わり始めたり、自らで団体を立ち上げたりしている。さらには2015年1月に、ブログ「公務員 島田正樹 ~仕事と私事と志事と~」をスタートさせている。この頃、志事に通ずるきっかけが何かあったのだろうか。

島田正樹さん

内閣府への出向が、複数の名刺を持つ契機に

聞くと、2014-2015年度にかけての2年間、内閣府に出向したことが契機になっているという。「地域活性化」と「地方創生」を掲げ、“全国の人たち”のために業務にあたっていたのだが、「自分の住んでいる地域のために仕事をする機会がない」ことに気付いたのだ。

さらに、職業人生の中で最もハードだったという出向前の職場に比べ、時間的にも精神的にも余裕ができたこと、各地方から派遣されてくる志の高いメンバーから刺激を受けたことも、「やりたいと思ったことを形にしていこう」と決意する一端となった。

「自分の住む地域のためになることがしたい」
「まずはできることからやってみよう」
「じゃあ何からやろうか」

こうして立ち上がったのが、公務員キャリアデザインスタジオだ。自らが発起人となり、周囲に呼びかけ、同じ職場の先輩を含む公務員4人が集まった。

「枠を越えた仕事の中に楽しみがある」ことを若手に伝えたい

公務員キャリアデザインスタジオの活動を通じて、公務員の仕事のリアルな姿を学生に伝えているのは、「与えられた仕事を粛々とやるのではなく、枠を越えた仕事に取り組んで欲しい」という思いがあるからだという。仕事は突っ込んだところにまで入りこむことで、充足感を得ることができる。そして、公務員がこうしたモチベーションで仕事をすることが、延いては地域のためになると考えているのだ。

公務員を志望する学生の中には、9時から5時までの勤務で、決められた仕事をすれば良いのだと思い、就職してくる人もいる。だが、公務員の配属先は、こうした職場だけではない。間違った思い込みをしたまま、いざ公務員になってから「こんなはずではなかった」と肩を落としたり、辞めたりして欲しくはないのだ。

“リアリスティック・ジョブ・プレビュー”と言われるが、働く職場の良い面・悪い面を含めたありのままの状況を事前に知っておくと、その仕事に対して一生懸命に取り組んだり、ハードなことがあっても乗り越えられたりすると言われている。島田さんはそれを目指している。「若手が積極的に仕事に取り組むことで自らの可能性を広げ、生き生きと働くことで、地域を活性化する起爆剤になって欲しい」そう願っている。

リアリスティック・ジョブ・プレビュー

“2枚目の名刺”を、関心事に携わり続けるツールに

本業と志事としての活動を掛け持ちする中、2016年2月、FacebookでフォローしていたNPO法人二枚目の名刺が主催する作戦会議の案内が、島田さんのフィールドに流れてくる。

時はちょうど内閣府からさいたま市役所に戻るタイミング。「4月以降に何か一緒にできることがあるかもしれない。まずは一度話を聞いてみよう」と、初めてNPO二枚目の名刺に足を踏み入れ、7月に行われた夏フェスで「(プレイベント)2枚目の名刺で行政マンの限界を超える」と、「フィナーレ」の2つの統括を担当した。

「2枚目の名刺で行政マンの限界を超える」では、地方の行政マンが2枚の名刺を持つためにはどうすれば良いのか、またこうした行政マンを地域がどう受け入れたら良いのかをディスカッションしたが、このテーマはまさに島田さんの課題意識の中にあったものでもある。

人口減少にともない、地域のまちづくりの担い手が減っていく一方で、行政マンに限らず、何かをやってみたいという気持ちを持つ人が増えてきているという実感がある。だが、現実にはせっかく「やりたい」人と「やってほしい」人が揃っているのに、うまく結びついていない。地方自治体の中に両者を繋げてくれる担当者がいると良いのだが、そんな仕事はまだない。

「2枚目の名刺は、公務員をはじめ、特定の分野に対する興味はあるけれど、異動などで継続的にその分野に携わることが難しい人たちが、関心事に関わり続けられるフィールドにもなるのではないか」と島田さんは言う。しかし、そんな生き方があることは、まだあまり知られていない。

行政マンに2枚目の名刺を広めるために必要なのは、雰囲気作りとロールモデルだと思う。まずは自分がNPO法人二枚目の名刺の力を借りて、もしくは活動に参加しながら、地域行政マンが持つ2枚目の名刺の一つのモデルになれたら」。そんな想いで、夏フェス後も定例会に参加するなど、二枚目の名刺の活動に携わっている。

2枚目の名刺で行政マンの限界を超える

「168時間をどう切り取り、どう使うのか」にこだわる

本業と4つの課外活動、そしてプライベート。考えるだけでもハードだが、どのようにタイムマネジメントを行っているのだろう。

「“一週間=168時間”という決められた時間に対し、どう優先順位をつけて、どこをどう切り取って使っていくのか」を常に意識しているのだという。仕事時間と家族時間を差し引いた残りの時間は自分でコントロールできる最大のリソース。「自分がやりたいことと使える時間は分かっているので、あとは切り貼りしていくだけだ」と教えてくれた。

島田さんの一週間のタイムスケジュール

(島田さんの一週間のタイムスケジュール)

※イベントがない週は、オレンジ部分が少なくなる。
※課外活動の中には原稿やブログの執筆も含む。

使った時間に対し、どの程度の価値を生み出せるのか

本業を越えた取り組みを始めてから、「今日やらなくても良い仕事と、今日やるべき仕事の線引き」がよりシビアになったそうだ。 “時間という分母に対して、どのくらいの価値を生み出せるのか”という視点が、働き方を変えたのだという。

特に志事としての活動は、短い時間と限られた人数で推進していかなければならない。そうすると、それぞれのタスクにかける時間と、諦める部分を考えながら動いていくことになる。“時間が惜しい”という気持ちが芽生え、本業でも一つのタスクにかける時間とこだわるべきことをものすごく意識するようになった。以前は資料を作る際、細かな部分にまでこだわり、時間をかけていたが、「組織を支えるために本当に必要な作業なのか」を考えると否であったため、割り切ることにした。

そんな時間に対する価値観の変化は、島田さんのプライベートにも及ぶ。タイムスケジュールを見ても分かるように、プライベートに関する時間は、ほとんどが家族との時間だ。決して人付き合いを避けているわけではないが、限られた時間の中で、優先順位を考えると、自然と飲み会や友人達との付き合いが減っていった。

本業と志事で地元に貢献していきたい

そんな島田さんの姿を、家族は歓迎しているという。内閣府へ出向した頃から、彼が目に見えて生き生きとしてきたからだ。

「志事としての活動は、想いをもってやっている事。一方で本業の仕事が志の仕事ではないのかと問われればそうではなく、昔と比べて重なる部分が増えてきているんです」。

島田さんは現在、さいたま市役所の東日本交流拠点整備課でまちづくりを担当している。大宮駅近くにある市有地の有効活用のための施策が、本業で向き合っているテーマだ。「自分の住む地域のためになることがしたい」そんな自らの想いに一歩近づく仕事である。

志事でも「地元に貢献したい」という思いを形にするために、まずは自分の手が届く範囲から少しずつ変革を起こしていきたいと考えている。「地方自治体に勤める身。働くことや価値を見出すことに関心があるとは言え、“地域”というキーワードは、どうしても切り離せないんです。みんなが豊かに生き生きと暮らせるまちづくりのために、さいたま市だけではなく、自分が住む上尾市のためになることも、今後仕掛けていきたいですね」。

二枚目な行政マン・島田正樹さんの挑戦は続いていくー。

自分の住む地域のためになることがしたい
写真:布川航太
聞き手:廣優樹(二枚目の名刺)
撮影協力:Bon Vivant渋谷店
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はしもと ゆふこ
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。