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「本業も主催イベントも、同じライフテーマ上にあること」ベネッセ社員×渋谷papamamaマルシェ2017実行委員長(後編)

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4歳の子を持つ母として、ベネッセコーポレーションで働きながら、渋谷区で子育てをする家族のためのイベント「渋谷papamamaマルシェ2017」の実行委員長という“2枚目の名刺”を持つ神薗麻智子(かみぞのまちこ)さん。

実行委員としてともに活動してくれる仲間はもちろん、当日の運営ボランティアも、神薗さんが同じ会社で働く同僚や、子育てを通じて知り合ったママ友・パパ友など自身が持つ人脈から声をかけ、参加に至った人が少なくない。自分自身だけでなく、周囲の人にも2枚目の名刺を広げ、2枚目の名刺を持つきっかけまで与えてしまうアンバサダーのようだ。

前編「渋谷の子育てを、地域のサポートで楽しいものに」はこちら

「一緒にいたらおもしろそう」と思われるような存在でありたい

過去にも本業とは別に、さまざまなプロジェクト活動に参加してきたという神薗さん。自己紹介のときなどに、「趣味は?」と聞かれると、「プロジェクト活動」と答えるらしい。その原点は、小学生時代の児童会活動にあったという。

「児童会長として私がやりたいことを、全校生徒と先生を巻きこんで実現するのが楽しくて(笑)。その後も生徒会や部活の中で人と協働する取り組みをしてきましたし、大学ではサークルを立ち上げたり、NGOの活動など、さまざまな取り組みをしました。ただ、社会人になって2、3年は仕事以外、何もせずにモヤモヤしていた時期もありました。あるとき、異業種交流会に行ったんですけど、“なんだこれ!? 名刺交換してごはん食べるだけで、全然おもしろくない!!”と思って。私の場合、テーマがない状態で人と出会ってもアドレナリンが出てこないんですよね。それがわかってからは、テーマに共感できるプロジェクトに参加したり、自分自身が主催者となってプロジェクトを企画したりしました」。

プロジェクト活動をより円滑に進めるためには、一緒に目的に向かうメンバーも重要だ。そうした仲間を見つけるために、新たな人とのつながりを積極的に作るようにしている。

「常に“人探し”のアンテナは立てていますね。社内で積極的に後輩社員のメンターをしたり、子どもの保育園の保護者とつながりを持ったり。そこで“巻きこめる人がいないか”と探しているんです(笑)。今回のマルシェでも、自社の新入社員2名に声をかけ、当日の運営ボランティアをお願いしました」。

もちろん2人とも、先輩に頼まれて、断り切れずに参加したわけではない。幼児教育や小学生の教育に関連する部署に配属となり、これからキャリアを重ねていく自分にとって、またとない“学び”の場になるだろうと参加したのだ。

「仕事でもユーザーアンケートやヒアリングを行う機会はたくさんあります。でも、データ集めとしてお膳立てされたものではない、リアルなパパママの声を聞き、触れ合った経験は、必ず彼らの仕事に生きてくると思います」。

ただ闇雲に声をかけているのではなく、「想いを持っているが、まだはじめの一歩を踏み出していない」人や「プロジェクトのテーマとリンクしやすい」人など“やってくれそうな人”を選んで声をかけるのは、小学生時代からプロジェクトを立ち上げ、まわりの人を「巻きこんで」きた神薗さんの嗅覚といえるだろう。

「常に“何かあったらこの人に頼もう”と思える人たちが周囲にいるのも、その人たちが首を縦に振って協力してくれるのも、小学生時代からの経験の積み重ねかもしれません(笑)」。

「人には恵まれてると思います」と神薗さんは言うが、ただ周囲の人を“巻きこんでいる”だけではない。

「仕事でもプライベートでも、自分が関わったチームが楽しくないとイヤなんです。困っていそうな人には、すぐに声をかけるようにしています。チームに関わる人みんながハッピーであって欲しいし、気持ちいい状態でコミットして欲しい。そこは意識しています。

それから、私自身が“(困っていたら)助けたい”、“この人から声をかけられたらやってみよう”と思われるような存在であることも大事ですよね。自分を作り立てるわけではないけど、一緒にいたらおもしろそうだと思われるような人間でありたいです」。

“未来をつくる子どもたちを育てる”ことがライフテーマ

神薗さんが現在本業で携わっているのは、ICTプラットフォームを通じた中学校や高等学校への支援事業。「渋谷papamamaマルシェ」実行委員という2枚目の名刺と本業は、神薗さんの中でどのようなつながりがあるのだろうか。

「就職活動のときに “未来をつくる子どもたちを支援していくこと”に自分の人生を注いでいこうと決めました。それは今も変わっていません。仕事で中学校や高等学校の支援を行っていく中で感じたのが、もっと下の年代で築く土台の大切さ。0歳から未就学期にかけて、親子の関係であったり、食べる・寝る・遊ぶみたいな生活をしっかりやることだったり、人間としての基礎を形成することがとても重要だと気付きました。だから仕事では、学校を通じて中高生を支援しているのに対して、プライベートは土台側である0歳から未就学期の子どもに関わる活動をしようと。仕事と社外活動という違いはありますが、どちらも自分のライフテーマの上にあることです」。

今年は、「渋谷papmamaマルシェ2017」の準備が佳境である時期に、本業もかなり忙しかったという。どのようにして乗り越えたのだろうか。

「朝4時に起きて、そこから2時間半くらい自分の時間があります。でも、だいたい1時間半くらいは本業に関わる時間になっているので、それ以外のことに充てられるのは残りの1時間。あと夫の協力も得て、土日のどちらかに数時間。合計すると一週間に約8時間程度を実行委員の活動にあてていました。

今年の3月4月は記憶が薄れるくらい忙しかったですけど(笑)、それは一時的なもので恒常的に続くわけではないと思って乗り越えました。どんなときも、一つひとつ、目の前のことに向き合い、取り組んでいくだけです。

あとは、人に頼ることも大事だと思います。自分だけで抱え込まず、困る前に相談して、誰かに自分の抱えているものを持ってもらったほうがいい」。

神薗さんの話を聞いていると、周囲から必要とされるスキルを持っていることだけが、2枚目の名刺を持つための必須条件ではないと感じる。

「プロボノのように仕事で培ったスキルを生かして参加している人もいますが、『渋谷papamamaマルシェ』の掲げるコンセプトに共感し、集まった人がほとんどです。そこが会社の仕事で取り組むプロジェクトとは少し違うところですよね」。

今の子どもたちが、やがてサポートする側に立ってくれたら…

最後に、「渋谷papammaマルシェ」について今後の展望を聞いてみた。

「渋谷区では年間2,000人子どもが産まれていて、今年のマルシェの参加者が大人と子ども合わせて428名。0歳〜3歳の子どもを持つ家庭の10分の1にもリーチできていません。特に0歳~1歳のお子さんがいると、近場にしか出かけにくいこともあって、今回は半分くらいが開催場所である代々木地区にお住いの方でした。

そう考えると、必要な人に届けるためには、渋谷区内のいろいろな場所で、回数を重ねて開催していくしかない。今年のマルシェにゲストスピーカーとして登壇してくださった恵比寿新聞の方が、毎年秋に『恵比寿文化祭』というイベントを開催されているので、そういうところに出展者として参加させてもらうのもいいかなと思っています。自分たちでできることには限界があるので、いろいろな方たちの力も借りていければと思っています」。

神薗さん自身はすでにお子さんが4歳に。これからどんどんマルシェの対象とは子どもの年齢が離れていくが、それに伴って関わり方は変わってくるのだろうか。

「まだはっきりとはイメージできていませんが、実行委員長はマルシェの対象年齢である0歳〜3歳児のパパママがやったほうがいいとは思っています。ただ、“地域をつくる”という観点で、ずっと関わっていきたいです。自分の子育てのためだけにやっている活動ではありませんから。

それから、うちの子を含め、実行委員の子どもたちが小学生になったとき、今度は彼らがボランティアとして参加してくれたらいいなと思います。今は大人たちがミーティングをしている隣で遊んでいる子どもたちが、サポートされる側からサポートする側になってくれたら…。そして20年くらい経ったとき、子どもたちの誰かが親の立場で実行委員をしてくれたら嬉しいですね」。

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写真:原田麗奈(ライフログ)
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古川 はる香
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フリーライター。主に女性誌や育児誌、WEBで執筆。