TOP > 「渋谷の子育てを、地域のサポートで楽しいものに」ベネッセ社員×渋谷papamamaマルシェ2017実行委員長(前編)

「渋谷の子育てを、地域のサポートで楽しいものに」ベネッセ社員×渋谷papamamaマルシェ2017実行委員長(前編)

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2017年5月21日、渋谷区代々木にある地域交流センター代々木の杜で「渋谷papamamaマルシェ2017」が開催された。

渋谷区在住・在勤の0歳~3歳児を持つ家族のためのイベントで、出張プレーパークや絵本の読み聞かせなど、子どもとパパママが楽しく遊べる企画のほか、パパママが子育てについての思いを語り合う場もつくられ、さまざま形で新たな「つながり」が提供された。

大人と子ども合わせて428名が集まったこのイベントを企画・運営したのは「渋谷papamamaマルシェ実行委員会」。ほとんどが参加者と同じ、渋谷区内で子育てをするパパとママで構成されている。

実行委員長を務める神薗麻智子(かみぞのまちこ)さんも4歳の子どもを持ち、普段は株式会社ベネッセコーポレーションで働くワーキングマザーだ。ただでさえ多忙な中で、子育て世帯向けのイベントを主催する実行委員会の委員長という「2枚目の名刺」を持つ、そのモチベーションを聞いた。

自分たちと同じように“孤育て”に苦しむママに“つながり”を

昨年度、第1回目として「渋mamaマルシェ」という同様のイベントが開催され、神薗さんは実行委員の一人として参加した。今年は実行委員長のバトンを引き継ついだ形だ。

「子どもが産まれてから、いろいろな子育て関連の活動に参加しました。その中で、同い年の子どもを持つ渋谷区在住のママがつくる“Shibu mama”という育児サークルに入り、コアメンバーになりました。Shibu mamaメンバーの子どもたちが成長していく中で、自分たちの子育てを振り返ると、特に0歳~1歳の頃のつらかった“孤育て”の記憶がありました。今、渋谷区の出生数が年間2,000人くらいなので、2,000人くらいのママが同じ思いをしてるんじゃないかと。そんなママたちが少しでも“孤育て”から解放されるような“つながり”をつくるための手助けをしたいという想いが形になったのが、昨年スタートした『渋mamaマルシェ』です」。

(第1回目ながら、約400名が参加した「渋mamaマルシェ2016」)

実行委員長を引き継いで、神薗さんが去年の企画から進化させようと決めたことが2つあった。

「一つはパパにも参加してもらうこと。子育てがママだけで完結しないために開催しているはずなのに、名称が“ママ”だけになっているのはおかしいと思い、『渋谷papamamaマルシェ』と改めました。

また、渋谷区在住の知人のパパに声をかけて、実行委員に入ってもらいました。イベントのメインコンテンツであるワークショップのファシリテーターも現役パパママにお願いし、今年はファシリテーターにもパパが2名。お二人とも昨年ファシリテーターをしてくれたママのパートナーです。

もう一つは、年に1日だけのイベントで終わらせず、継続的に開催すること。昨年はゼロからつくりあげたこともあって、イベント終了後に実行委員の全員が完全燃焼してしまいました(笑)。でも“つながり”って、何度も顔を合わせることでできていくものだと思うんです。だから今年は小さいイベントもいくつか行っていこうと考えていて。まず“渋谷おとなりサンデー”の企画の一つとして、代々木公園でピクニックをしました」。

全員が無理なく2枚目の名刺を持てる工夫

実行委員のメンバーは現役パパママがほとんどだというが、本業や子育てで多忙な中、どのようにコミュニケーションを取り、それぞれの任務を遂行していったのだろう。

「昨年も同じでしたが、まずは全員がリーダーになることを大切にしていました。特定のリーダーがチームを引っぱるのではなく、支え合っていくという“サーバントリーダシップ”ですね。そういう働きかけを意図的に強くしていました。どうしても誰かが判断しなければいけない場面もあるので、そのような場合には私がするけれど、基本的には役割をチーム制にして、2人くらいのチームで動き、迷ったり、確認したいことがあれば声をあげてもらうという形で運営していました」。

連絡ツールとして使われたのはFacebook。全員が日常的に使用しており、スマホさえあれば、コミュニケーションがスムーズに取れるからだ。新たなツールを使用するとなると、使い方を覚えたり、新たにアプリを起動する必要がある。

「テーマごとにスレッドをつくり、各ページのURLを本ページの固定欄に貼っておく、投稿したものを絶対見てほしい人にはタグ付けをするなど、プロジェクトにかかる時間や労力を減らす工夫をしました。実行委員の中にWEBエンジニアをしているパパがおり、便利な使い方をいろいろと提案してくれました。あとは、googleの共通アカウントをつくって、外部とのやりとりはそのGmailに一元化。書類やデータなど蓄積されたものは、googleドライブにアップしていきました」。

顔を合わせてのミーティングは月1回、渋谷区の地域交流センターなどに集まって行った。子どもがいる人は子ども同伴で、「子どもたちが遊んでいる隣で大人たちが話していました」と言うように、この場自体も地域の人同士がつながるコミュニティーの一つになっていたようだ。

(子連れミーティングも、地域の人とのつながりが生まれるきっかけに)

タテ・ヨコ・ナナメに人がつながることで“地域”ができる

「渋谷papamamaマルシェ2017」のコンセプトに“タテ・ヨコ・ナナメのゆるやかなつながり”というフレーズがあるのだが、実行委員のメンバーこそが、このコンセプトを体現している。

「今年の実行委員10名のうち、パパとママが8名。残り2名のうち1名は、私たちが子どもを持つよりずっと前から渋谷区の子育てのために活動している『渋谷の遊び場を考える会』の副代表の方で、昨年からバックアップしてくださっています。もう1名は、私がとある場所で出会った現役高校生。幼児教育に興味があるということで声をかけました。

社会貢献のためにやっているというよりも、自分の街の子育て環境をよりよくするためにやっているという話を実行委員同士でよくしています。決して“意識高い系”なのではなく、“地域の仲間と一緒に、子育てにやさしい渋谷の街をつくりたい”という想いでやっています」。

渋谷というと大都会のイメージがあり、“地域のつながり”や“子育て”というワードとは結びつきにくいところもある。

「私も地方から東京に出てきた人間なので、大都市渋谷には地域や地元の人のつながりなんてないのでは?と思っていたところがありました。でも、渋谷区で生まれ育った人たちの話を聞いていくうちに、人と人とのつながりはどこであっても生まれるし、タテ・ヨコ・ナナメのつながりが、薄く何層にも重なっていくことで、“地域”になるのだと感じました。そして、“地域”の中で子育てをしていければ、“孤育て”から抜け出せる。親も子もいい状態でいられると思ったんです」。

こうした地域づくりに掛ける想いが、神薗さんを突き動かす原動力になったようだ。ただここで、一プロジェクト参加者と違うのは、知人のパパ然り、別所でつながった高校生然り、身近な人に声をかけて、自分の関わるプロジェクトに巻き込んでいること。かくいう私(ライター古川)も、保育園のママ仲間であるというつながりから、ファシリテーターの一人として参加した。一緒にプロジェクトを実施する仲間を見つける“嗅覚”はどこからくるものなのだろうか。

後編「本業も主催イベントも、同じライフテーマ上にあること」につづく

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写真:原田麗奈(ライフログ)
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古川 はる香
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フリーライター。主に女性誌や育児誌、WEBで執筆。