TOP > パソナ社員が、業務外で社会課題に向き合う「シャドーキャビネット」

パソナ社員が、業務外で社会課題に向き合う「シャドーキャビネット」

このエントリーをはてなブックマークに追加

NPO法人二枚目の名刺が運営する「二枚目の名刺ラボ」では、企業・行政・ソーシャルセクター・研究者と分野を超えた有志が集まり、これからの新しい働き方について議論をしている。

2015年12月6日に実施した、第1回セッションのテーマは、「本業外での活動で得た刺激を継続させるための仕組みをどのように作りあげるか」。「2枚目の名刺」のような社外での活動に取り組むと、参加者一人ひとりの行動が変容するのは間違いない。ただ本業に戻ってしばらくすると、以前の状態に戻ってしまいがち。そうならないためには、周囲を巻き込み、社内で「実践共同体」(ある領域に関心と情熱を持つ人が自発的に集まる組織)をつくることが重要だ。

株式会社パソナでは社員の社会への問題意識を深める独自の取り組みを行っている。取締役専務執行役員 石田正則氏に話を聞いた。

 

政府・行政と同じ目線で、社会課題に挑む 「パソナ・シャドーキャビネット」

企業理念を実践する取り組み

「社会の問題点を解決する」
これは、パソナが掲げる企業理念だ。「パソナ・シャドーキャビネット」(以下、シャドーキャビネット)はこの企業理念を実現するための取り組みの代表例と言える。
「実現のためには、社員一人ひとりの社会への問題意識を深めることが必要になります。それは容易なことではありません。様々な社会の課題を自分の目で見て、触れて、経験して初めてスイッチが入ります。だからパソナでは社員の本業以外での活動を応援しています。」

pasona01

(株式会社パソナ取締役専務執行役員 石田正則氏)

パソナグループが事業として取り組む「雇用」を切り口に、グループ各社の社員が政府や行政と同じ目線で「社会の問題点を発見、議論し、企業の立場からソリューションを社会に提言する社内組織」として2007年に発足した。
テーマごとにバーチャルな省庁を設置。2015年10月、従来東西で24省あった省庁を、ヘルスケア省、地方創生・東北復興省、教育・エンカレッジ省、グローバル省、オリパラ・マイス省という5つに再編成。現在は20代、30代の若手社員を中心に全国各地のグループ社員約7900 人中、約350人が参加している。
大臣の半分は指名だが、それ以外は手挙げ。パソナでは人事制度においても、会社や上司の指示ではなく、自ら手を挙げて公募されたポジションにチャレンジできる「オープンポジションポジション制度」などが用意されているため、上司側にもメンバーのやりたいことを応援する企業風土があり、本業以外の活動に関しても一定の理解がある。
koyou

新規事業も続々誕生

シャドーキャビネットでは年4回、毎回150人ほどが参加する「通常国会」を開催している。各省庁が新規事業提案、社内改善提案などを法案として提出し、議論する。提出された法案は採決され、その場で可決もしくは継続審議となり、可決された法案は実行に移される。
「このときのジャッジの条件はビジネスの拡大というより、『社会的な意義があるか、大義があるか。』これがないと通りません。」

実際に2007年以降、シャドーキャビネット各省のテーマに沿って、本物の内閣府に対して100件を超える特区提案、規制改革案を提出している。
とりわけ保育士受験資格の要件緩和(中学・高校卒業者に求められる保育実務経験の見直し)に関する提案は、規制改革会議による提案内容についてのヒアリング、アンケート調査協力を経て、08年3月25日に閣議決定された「規制改革推進のための3か年計画(改定)」に盛り込まれた。
保育士不足解消に向け、ようやく14年10月の国家戦略特区諮問会議で、特区として指定した地域で通常年1回である保育士試験を年2回に増やすこと、試験を受けた都府県内で通用する「地域限定保育士」資格を新設することが決定。15年秋に試験が実施されるなど多くの成果を挙げている。

また、シャドーキャビネットの提言をヒントに、新規事業も相次いで生まれている。若者未来省(当時)は、11年12月から神奈川県立田奈高校や株式会社シェアするココロなどと共同で実施した、高校生・高卒生向けの教育的有給職業体験プログラム「バイターン・プロジェクト」もその1つだ。
12年度に神奈川県「新しい公共支援事業」に認定され、パソナは企業開拓や事前研修等を担当し、若者のキャリア形成を支援。その後、このプロジェクトは内閣府が予算をつけ、事業化された。
「これらの社会との関わりのある活動で、社員として、人として、大きな成長につながっています。今後の活動も、誰もが活躍できる社会を目的に、引き続きビジネス環境や様々な法制度の変化を捉え、そこから社会課題を認識、学び、議論し社会に提言してまいります。」

注1)本記事は、二枚目の名刺ラボ(2015/12/6開催)で石田正則パソナ取締役専務執行役員が説明した内容と質疑内容をもとに作成しております。
注2)本記事は二枚目の名刺ブログ記事『【二枚目の名刺ラボ】実践共同体を作る①:政府・行政と同じ目線で、社会課題に挑む 「パソナ・シャドーキャビネット」』の内容を一部改訂し転載しています。

(荻島史江)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ライター

ライター

編集者

編集者

カメラマン

カメラマン

二枚目の名刺 編集部
ライター