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【ボランティア募集も!】「NPOで一花咲かせたい!」自分の暮らしも豊かにするためのNPOへの挑戦

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「ソーシャルを仕事にする」は、NPOやNGOに関わりたい思いを持ちながら、なかなか一歩を踏み出せずにいる「あなた」のための連載です。NPOやNGOで働く彼ら彼女らが、なぜソーシャルを生業としているのか、普段どのような仕事をしているのか、これから先に何を見据えているのか。そして2枚目の名刺として携わりたいあなたに、何を求めているのか。

あなたが2枚目の名刺を持つ第一歩に繋がることを祈ってお送りします。

 

Case.1はこちら↓

【ボランティア募集も!】民間企業に就職した彼女が、社会人3年目でNPOに転職した理由

Case.2
特定非営利活動法人モンキーマジック 水谷理さん

1982年愛知県生まれ。愛知学院大学文学部卒業後、株式会社ぎょうせい(出版社)、株式会社弘益(インテリア商社)を経て、ビクトリノックス・ジャパン株式会社(ナイフメーカー)にて営業とマーケティングを担当。在籍した5年間でワークショップ講座「子どもに教える正しいナイフの使い方」を1万人以上に提供。2018年7月にNPO法人モンキーマジックの正職員となり、現在に至る。

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人生=実験の連続。「NPOで一花咲かせたい」

『家を買ってすぐに企業からNPOに転職した人がいる』

こんな言葉で紹介してもらった方が、今回インタビューを受けていただいた水谷理さんだ。

「ローンを抱えてすぐにNPOへ転職なんて、世の中にはすごく度胸がある人がいるんだなぁ……」と感じたあたり、筆者自身もNPOで働くことに対する偏見がまだまだあるようだ。

だが、

「企業のサラリーマンよりもNPO職員の方が1,000万円、2,000万円プレイヤーになれる可能性があると思っています」

「会社勤めをやめて自宅で働くと出費が減るんですよ。年収は下がりましたけど、投資信託の額は転職してから上げました」

そう目を輝かせながら語る水谷さんの話を伺うと、その可能性に一緒にワクワクしている自分がいた。

「たまたまやりたいと思って転職した先がNPOだったというだけで、社会を変えたいとか、社会貢献がしたいという気概はないんです。人生は「やりたい」と思ったことに挑戦したり、「試してみたい」と思うことを実験したりする場だと考えていて。結果的にそれが誰かの役に立って、次の社会を創る何かにつながれば素敵だなと思います」

今回はそんな風に、自分の人生を社会実験に見立てて楽しんでいる、水谷理さんのお話。

 

「仕事をする実感」と「興味関心」を追いかけた社会人キャリア

水谷さんは愛知県の出身。大学を卒業後、法律関連の書籍を扱う出版社を経て、インテリア商社に転職した。愛知県に本社がある会社だが、東京支社の事業を拡大している時期だったこともあり、志願して上京。海外の工場から商品を輸入し、転売をする営業の仕事に従事することになる。

「出版社のときはシステム課の所属だったこともあり、『モノを売る』ということがしたくて転職しました。インテリア商社を選んだのは、インテリアに関心があったからですね。世の中に流通しているものに関われたことで『仕事をしている』という実感をもつことができていました」

だが、入社以来5年間一緒だった上司が独立することになり、同じタイミングで水谷さんもこの仕事を離れることとなる。

「東京って、街で出会う人が日経新聞に載っているような大企業勤めであることが頻繁にありますよね。愛知にいたときにはそんな出会いはなかったので、東京に来て、知名度の高い会社・有名企業で働くことに憧れるようになっていました(笑)」

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次の転職先はスイス本社の刃物メーカー。この2回目の転職のときには、水谷さん自身が仕事をしている実感を得られる「コンシューマービジネス」という軸と「有名企業」という軸に加え、「食かアウトドアに携われる仕事」という軸があったという。

「実は大学に入ってしばらくするまで、すごく太っていたんです。そんなときに周りの友達がみんな彼女を作り始めて、『このままじゃまずいな』と思って、山岳部に入って運動をするようになりました。それで20kgぐらい体重が落とせて、スポーツはもちろん食事の大切さを実感したんですよね。刃物やナイフって、食事にもアウトドアにも繋がる仕事だと思って、会社を選びました」

この『山岳部での経験』がきっかけとなって、水谷さんは刃物メーカーで営業・マーケティングの仕事をすることになるが、3回目の転職もこの『山岳部での経験』が大きく活きてくる。

モンキーマジックとの出会い

NPO法人モンキーマジックは、代表の小林幸一郎氏自身が、視覚障害者である団体だ。小林代表がクライミングの経験者であることがきっかけで、「見えない壁だって、越えられる。」をコンセプトに、フリークライミングを通じて、視覚障害者をはじめとする人々の可能性を大きく広げることを目的とし、活動している。

水谷さんがモンキーマジックと出会ったのは、2011年。インテリア商社で働いていたときだった。

「知り合いを通して、盲学校の生徒を対象にしたキッズクライミングスクールのお手伝いを依頼されたのがきっかけです。山岳部出身で、クライミングに必要なロープのスキルを持っていることが、声をかけてもらった理由でした」

家の近くにモンキーマジックの事務所があったこともあり、代表の小林さんとも飲み仲間の関係になったという。

「それまでの人生の中で障害者の方と接する機会がなかったので、小林に会って初めて知る(障害者の)世界がありました。また、19歳や20歳のときにやっていた山岳部でのスキルを人の役に立つスキルとして活かせることを知りました。自分の得意を活かして誰かに貢献できることの嬉しさや楽しさを実感しましたね」

当時は29歳で、会社での仕事や社会の仕組みをある程度わかったつもりになっていた、そんな時期だったという水谷さん。そんなタイミングだからこそ、日常の会社員生活では見つけられないこの2つの発見が、より新鮮に映ったのだろう。

ここから、水谷さんは「2枚目の名刺」として、仕事をしながらモンキーマジックの運営にボランティアとして携わることとなる。

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(現役のフリークライマーでもある小林代表は、

パラクライミング世界選手権 視覚障害男子B1クラスで何度も優勝するほどの実力者)

 

「2枚目の名刺」が「1枚目の名刺」へ

刃物メーカーでの会社の仕事とモンキーマジックでのボランティアを両立していた水谷さんだが、2018年に次の転機が訪れることになる。8年間ボランティアとして関わり続けていたモンキーマジックへの転職だ。

「長くボランティアとして関わらせてもらう中で、『イベントのお手伝い』をする立場から『事業の運営』をサポートする立場に少しずつ立ち位置が変わってきていました。モンキーマジックで新事業の「OKOSHI(※1)」を立ち上げるタイミングだったときに、前職の仕事のキリも良かったので、その事業の責任者として入職することになったんです」 

ボランティアから正職員へ。入職してからは、これまでの営業やマーケティングといった経験を活かして、寄付協賛先を増やす活動や企業への研修講師など、法人全体の活動を支える立場として活躍している。

「ボランティアから正職員に立場が変わったことでの一番の変化は、責任の重さでしたね。これまでもたくさん法人の運営には意見をしてきたのですが、実際に自分でやると、いかに無責任に発言してきたかを痛感しました。たとえばブログの更新ひとつを取っても、更新頻度が高いに越したことはないんですが、実際にはそこまで手が回らない。隣で見ているだけでは分からなかったことがたくさんありました」

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(モンキーマジックのスタッフとボランティアが集った2018年末の忘年会。有給スタッフは4名。

会計・広報・WEB・IT・国際・デザインを担うボランティアが団体を支える力も大きい)

働く場所も、会社勤めから自宅での作業が中心となった。

「在宅勤務といっても1人での仕事ではなくて、法人のメンバーはもちろん、寄付協賛先やクライアントとの連絡など、ビジネス社会とは繋がっています。通勤時間がなくなって、自由度が高くはなりましたが、一方で自分自身のタイムマネジメントが生産性そのものになってしまう。ようやくペースをつかみ始めましたが、まだいろいろ試行錯誤中です」 

転職されて半年。新しい働き方を模索中のようだ。

 

「ソーシャルを仕事にする」

NPO職員になることを後押ししたものはなんだったのか、水谷さんに訊ねてみると、しばらくの沈黙の後に、こんな答えが返ってきた。

「その当時も、今も、『障害者の世界をこう変えたい』というものは、正直特にないんです。挑戦というか、自分の人生の実験というか……『NPO法人の職員として稼げたらかっこいいじゃん』『自分が豊かになることが、社会の変化に直結するなんて素敵じゃん』って、単純にそれにチャレンジしているんです。もし仮に失敗したとしても、年齢的にまだやり直しがきくかなと思って」

自分が成し遂げたいことや興味のあることに時間を費やし、自分と社会を同時に豊かにしていくという「実験」。今度の仕事選びの軸は、楽しいこと・ワクワクすることに挑戦するという軸だったようだ。

「ここは、自分が知っているフィールドで、自分のスキルを活かしながら挑戦できる環境。ここで、いつかバイネームで仕事をできるようになりたいと思っています。たしかに今は前職のときよりも収入は下がりましたが、企業でサラリーマンをし続けるよりも今の環境の方が、年収1,000万円、2,000万円を狙える環境だと思っています」

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実際に、仕事をする中で、キャリアのステップを踏んでいる実感があると水谷さんは語る。

「たとえば、モンキーマジックが運営業務を受託している神戸のクライミングウォール(※2)のある眼科の医療複合施設は、iPS細胞を使った網膜再生治療の研究を行なっています。ほかにもこれまでの仕事では関わってこなかった大企業の方とご一緒する機会がたくさんあるので、仕事を通してやり取りする会社の規模や幅が広がっていることは実感しますね」

では、水谷さんにとってのNPOでの仕事のやりがいとはなんなのか、最後に訊ねてみた。

「民間企業か、NPOかという軸で考えると、事業会社でCSR活動をする方が社会を変える力は大きいでしょう。それは動かせるお金の金額や、支払う税金の額などが、圧倒的に違うので明白です。だから、規模で動かしたいなら企業にいながらアプローチした方が良いのでしょうね。

でも今いるNPOというフィールドでは、自分たちが楽しいと思ってやっている事業の延長線上に社会を変えるきっかけがあって、結果的に社会的課題の解決につながっている。iPS細胞の研究に少しでも関わってるなんて、自分たちすごいじゃんって。そんな充実感は日々感じていますね」

今自分の心が躍ることはなんなのかをシンプルに問いかけて、始める前から先のことを難しくは考えない。ワクワクするのであれば、企業かNPOかなんて関係ない。

自分に素直に挑戦している水谷さんは、なんだかとても眩しかった。

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モンキーマジックのイベントでクライミングを体験しよう

2枚目の名刺としてモンキーマジックに携わる方法を聞いてみると、「障害者福祉に関心がある方ももちろん歓迎しますが、クライミングを楽しみたい、やってみたいと思っていただける方に、気軽に来ていただきたいですね」と水谷さん。

まずは東京/横浜/つくばで月1回開催しているイベント「マンデーマジック」に参加して、クライミングの楽しさを体験してみてください。その後、イベント運営のサポートや団体運営のサポート等、その方の個性に応じた活動をご相談させていただくとのことです。

イベントの詳細はモンキーマジックのHPよりご確認ください→こちら

③イベント開催時のスタッフ・ボランティア集合写真2018monkeycomp2232

<ボランティア詳細>

◎求める人物像

・クライミングが好きな人/興味がある人

・自分から主体的に行動やコミュニケーションができる人

・SNSなどを使って発信ができる人

・好奇心旺盛な人

◎実施内容

・イベント運営サポート

・団体運営サポート

詳しくはこちら

 

※1「OKOSHI」

モンキーマジックが運営する、障害者をはじめとした在宅にならざる得ない方々の在宅ワークをサポートする文字起こしサービスのこと。インタビュー、打合せ、通話記録、座談会等の文字起こしを発注することが、障害者の就労支援につながります。

詳細はこちら

 

※2「みちびクライミングウォール」

「登る人を次々に光るホールドと音でゴールまでみちびく」というコンセプトの室内クライミングのシステム。光を認識できる程度の視力があれば、晴眼者と同じルールで全身運動のクライミングを楽しむことが可能となるため、リハビリへの積極的な活用や、クライミングをきっかけに運動機会拡大などが期待されています。

詳細はこちら

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大西弘毅
ライター
多様な価値観・働き方に触れること、文章を書くこと、写真を撮ることが好きで、学生の頃から「2枚目の名刺」としてアマチュアライター実践中。1枚目の名刺は経営コンサルタント。3枚目の名刺は国家資格キャリアコンサルタント。
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