【最終報告会レポ】社会課題解決プロジェクトに参加した社会人が語った、越境することの面白さとは

「NPOサポートプロジェクト」は、社会人チームとNPO団体が一緒になって、NPOの事業推進に取り組む有期のプロジェクト。

「ダイバーシティー」をテーマにした第45回目のパートナー団体は、日本の障害者パワーリフティング競技を統括する団体「日本パラ・パワーリフティング連盟」、家庭訪問型の子育て支援を行う「ホームスタート・ジャパン」、LGBTの推進に組む「グッド・エイジング・エールズ」だ。

その3ヵ月間の成果を発表する最終報告会が、6月11日(日)東京・御茶ノ水ソラシティで開催された。

最終報告会の各チームの発表から見えた、プロジェクト参加者の想いや気づき、成果が生み出された背景に焦点を当てて紹介したい。

NPOサポートプロジェクト#45の流れは全4回のレポートでチェック!

個々の想いを共有するための“助走期間”

3ヵ月で成果を出すとなると、与えられた時間はそう長くはない。しかしどのチームもキックオフからすぐに走り出していたわけではなく、1~2カ月の“助走期間”を経ていた。

日本パラ・パワーリフティング連盟(以下、JPPF)」のチームは、理事長の吉田進さんと事務局長の吉田寿子さんと毎週会い、「おしゃべり会」のような時間を過ごしているうちに、1ヵ月以上が過ぎていたという。

しかしその間、パラ・パワーリフティング(以下、パラパワー)の面白さをみんなで感じ、その魅力を伝えたいという想いを共有できたようだ。

エンジンがかかるとすぐにプロジェクトのゴール設定やアクションプランが決まり、一気に進展している。

(参画当初競技のことを全く知らなかったというメンバーも、その魅力にすっかりのめり込んだようだ)

パートナー団体との最初の2回の打ち合せが「飲み会」になってしまったという、グッド・エイジング・エールズ(以下、グッド)のチーム。

しかし、この飲み会でLGBTの当事者から話を聞き、マスメディアの報道とは違う実情を知れたことが勉強になっていたと、チームメンバーのニイさんは振り返る。

(迷走していた中間報告会からの快進撃には、目を見張るものがあった)

3チームの中で最も苦戦していたのが、子育て支援を行うホームスタート・ジャパン(以下、HSJ)のチーム。

「HSJの広報、情報発信の課題を整理し、「HSJのことを端的に伝えられる素材のプロトタイプを作成すること」にミッションを置いたものの、なかなか前に進めなかった。

「伝える対象を『お母さん』にすると言ってもひとくくりにはできなくて。それが外国人かもしれないし、母子家庭(シングルマザー)、もしくは父子家庭(シングルファザー)かもしれません。どのような伝え方や言葉が響くかは、どの立場の人を想定するかで変わってくるよね、とみんなで考えれば考えるほど悩んでしまいました」と、トミーさん。

(群馬、埼玉、東京と住まいが離れているメンバーたちは、オンラインでミーティングを行うことも多かった)

「制限時間を決めて『えいや!』でできなかった。ちょっと二の足を踏んだところが反省点」とターボーさんは振り返る。だがこの点は、ポジティブにも捉えることもできるのではないだろうか。

“会社人”としての仕事では生産性や効率が重視されることが多く、「えいや!」で押し切ることも求められるだろう。しかしそればかりではないところに、NPOサポートプロジェクトの面白さがあると感じた。

納得がいくまで考え続けた時間は、それぞれの成長をもたらしているに違いない。

フラットさを持ちつつ、チームを引っ張るリーダー

マイクをリレーのバトンのようにパスしながら楽しそうに発表していたJPPFチーム。

何も決まらないまま時間が過ぎていた4月下旬、役割分担を決めて、それぞれが責任を持ってプロジェクトを進める方向に流れを変えたのは、最年長のトムさんだったという。トムさんは、絶妙なバランスでメンバーを引っ張っていたようだ。

報告会の最後に行われたラップアップでの、JPPFのメンバーの会話を紹介する。

ミクロさん:リーダーシップとは少し違うかな。フラットさを保ちつつも、チームをまとめて引っ張っていけるトムさんはすごい。だからみんなも発言しやすかったんだと思う。トムさん:このチームでは自分だけが40代で、みんなは20代。職場では20代の人は自分にとっては部下になるので、『こうしてください』と指示を出すこともあるけど、このプロジェクトはそういうやり方ではない方法で進めて、みんなが最後に納得感を得られるようにしたかった。それが形になったのかな。

(各メンバーに対し、ポジティブ・スパイしー両方の面でフィードバックが行われる)

一方、HSJのチームは、メンバー間で役割分担がうまくできなかったことを反省点としていた。ターボーさんは、「誰か一人、メンバーに指示を出してくれる人がいたらよかったのですが、みんなそれができなかった。遠慮していたのかなと感じています。誰がリーダーで、誰がどういう役割を担って、どう進めていくのかを決める打ち合わせができていなかった」と振り返っていた。

素人だから思いついたこと、素人だからできたこと

プロジェクトの目的の一つに「パラパワーの魅力を素人目線で探求する」を掲げていたJPPFのチーム。

「競技のことを知らない人に向けてどう伝えるか?」「パラパワーの一番の魅力ってなんだろう?」と考えた末にたどり着いたのは、競技そのものをPRすることではなく、「選手、個人個人の魅力を伝えること」だった。

こうして選手たちのインタビュー動画を制作することになるのだが、インタビューを担当したせいさんはインタビュー未経験者だ。選手の魅力を引き出そうとするあまり、インタビューが“空回り”したこともあったというが、その熱意が選手に伝わったのだろう。選手たちから、飾らない本音を聞くことができたという。

他のメンバーからアイデアマンと言われていたひろさんは、「いきみ顔選手権」を発案した。これは、一般の人向けにウエイトを上げる体験会を行い、ウエイトを上げる瞬間の参加者の顔を撮影、それをJPPFのフェイスブックとホームページにアップするという企画。

面白がってもらうことを入り口にパラパワーを知ってもらうこの企画は、パラリンピック競技を体験するイベント「NO LIMITS SPECIAL 2017」で実現し、子どもから大人まで234名に参加してもらうことができたという。

メンバーの発表を聞いたJPPFの吉田理事長はこうコメントしている「今から思うと、我々はパラパワーが好きすぎて、ギューっと入りすぎて、あまりまわりが見えていませんでした。みなさんの柔軟な発想で前に進むことができたし、これからも一緒にやっていきたいです。たとえ一緒にできなくてもヒントをたくさんもらったので、前に進むことができます」

(JPPFプロジェクトの成果は、2020年の東京パラリンピックへと続く道筋になりそうだ)

企業とパートナー団体をつなぎ、コラボ企画を実現

社会人チームのメンバーが所属する企業とパートナー団体のマインドがマッチングしたことから、生まれたコラボ企画もある。

グッドが葉山で毎年夏にオープンする、年齢も国籍も性別も越えてみんなで過ごせる「カラフルカフェ」。その期間中に行うイベントを考えていたとき、チームメンバーのニイさんがひらめいた。

「LGBTの方にも対応できる浴衣を切り口にしたイベントをやってみたらどうか?」

グッドは「LGBTと、いろんな人と、いっしょに」を掲げて、すべての人が自分らしく過ごせる場づくり、社会づくりを目指ざす団体。ニイさんが所属する丸井グループは、「年代・性別・身体的特徴を越えてすべてのお客さまに喜んでいただける商業施設・サービスのフロントランナーを目指す」企業。

同社はLGBT、特に身体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーの就活生の「サイズがなくて、着たいスーツが着られない」という悩みを解決しようと、今年2月にLGBTの就活生のスーツ探しを応援するイベントを開催。スーツや靴のサイズの幅を広げることで、幅広い客のニーズに応えている。

「自社のマインドと強みを活かしたい」というニイさんの発想から生まれたこのコラボ企画は、7月22日(土)にカラフルカフェで開催される、「浴衣星見会」で実現することになっている。

参加者たちが感じた、プロジェクトの「面白さ」とは?

JPPFのチームのミクロさんは、小田原での仕事を終えたあと、1時間以上かけて虎ノ門に駆けつけ、週1回のミーティングに参加していた。「遠いところから大変だったのでは?」という他のメンバーからの声に、「遠いなんて思っていなかったですね。仕事では関われない人たちとプロジェクトを行いって、実際に成果が目に見えてくるのがすごく面白くて。スポーツに興味や関心はなかったのですが、それでもこのプロジェクトを楽しめたので、どんな人でも参加してみたらそう思えるのではと感じました」と答えていた。

同じくJPPFのメンバー、トムさんは、「最初は競技そのものに興味がなくても、社会人として身につけたスキルやアイデアと競技の魅力をマッチングすることによって、何かが生まれるという面白さがあったと思います」と語っている。

参加者たちが得たものは、スキルや成果物だけではない

JPPFのチームのせいさんはこのプロジェクトで、自分の将来の目標につながるものを得ている。

中高一貫校の体育教師でウエイトリフティングの選手でもあるせいさんは、アメリカ留学時代に関わったウエイトリフティングジムでパラパワーの選手をサポートした経験から、「年齢も競技力も関係なく、様々な人が一緒にトレーニングできるジムを開く」という目標を持っている。

今回のプロジェクトを通して、せいさんはもっとパラパワーに関わりたいと思うようになり、吉田理事長の勧めで、競技の審判・コーチの免許を取得しようと考えている。それだけでなく、教育の現場からもパラパワーを広めていけるのではと思い立ち、自分が通う大学の先生に、パラパワーの選手を授業に招くことを提案している。

トミーさんはHSJの活動を通して、社会が抱える家族の問題を自分ごととして捉えるようになった。
「以前は『働き方』と『家庭』を結びつけて考えたことがなかったのですが、『働き方改革』で残業せずに早く帰るように推進されていることが、幸せな家庭を築いたりお母さんを支えたりすることにつながることが分かりました」と語っていた。

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(自分の職場にいる子どもを持つお母さんなど、身近な人のために何かできないかと考えるようになったという)

形としては現れない、大きな成果もある

3ヵ月間、ともに走り続けてきた「社会人チーム」と「パートナー団体」。最終報告会の会場で打ち解けた雰囲気で話す彼らの様子から、その枠を越えて、個人としての関係を築いていることを感じた。

またこの報告会を通してNPOサポートプロジェクトの成果物とは、出来上がった資料など、目に見えるものだけではないことが分かった。

参加した社会人あるいはNPO団体の次なる目標につながったり、新しい物の見方が加わったり、勤め先の企業とコラボしたプロダクトが生まれることもある。

企業と団体がつながることで広がる可能性や、これからも続く個々の関係性なども、大きな成果物といえるのではないだろうか。

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写真:ハラダケイコ
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小笠原 綾子

小笠原 綾子

ライター・編集者。主に心身の健康問題に関する記事を執筆。地域コミュニティー形成や場づくりに関心がある。自分に合った働き方を模索中。