サポートプロジェクト中間報告会レポ

普段は企業などで働く社会人が、NPOと協働するプロジェクト「NPOサポートプロジェクト」。その中間報告会が、4月22日(土)東京・世田谷区立男女共同参画センター らぷらすで開催された。

「パラスポーツ」「子育て支援」「LGBT」、それぞれダイバーシティーの推進に取り組むNPO3団体が今回のサポート先。3つのチームに分かれた社会人チーム12人が、プロジェクトの経過報告を行った。

「NPOサポートプロジェクト」とは

「NPOサポートプロジェクト」は、社会人チームとNPO団体が一緒になってNPOの事業推進に取り組む有期のプロジェクト。様々なNPOの課題解決を図るとともに、社会人チームのメンバーが2枚目の名刺を持つきっかけを生んでいる。

2009年にスタートしてから45回目を迎える今回のプロジェクトでは、2月19日にNPOの紹介を行うイベント「Common Room」 を開催。プロジェクトチームのキックオフ、中間報告会を経て、6月11日に最終報告会を行うことになっている。

4月22日の中間報告会は「チーム間のプロジェクトの状況共有」と「チーム外からのフィードバック・アドバイスを受ける」ことを目的に開催された。

NPOサポートプロジェクト発足までの話はこちら>今回のテーマは「ダイバーシティー」。二枚目の名刺Common Roomに行ってみた!

パラスポーツの認知拡大に”素人の目線”で協力 ~日本パラ・パワーリフティング協会~

最初の報告は特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティング協会(JPPF)のプロジェクトを推進している男性4名女性2名のチーム。

パラ・パワーリフティングとは、パラリンピックにも登録されている競技種目。仰向けの姿勢で、腕を伸ばしきるまでバーベルを水平もちあげる競技で、体重別に階級が分かれ、障害の程度に関わらず純粋に力の強さが試される点が魅力だ。

そんなパラ・パワーリフティングの普及を行うJPPFが抱える課題は、広報力が弱いこと。JPPFはパワーリフティングの競技者だった理事長の吉田進さんと事務局長の吉田寿子さんの2人で運営している団体。2020年の東京パラリンピックを前にして障害者スポーツへの社会的な関心が高まる昨今だが、広報を担う人材やノウハウが不足している。

この課題にサポートチームは3つのアプローチで取り組んでいる。

1.SNSやオフィシャルサイトを活用した情報発信
2.競技者を紹介するインタビュー記事・映像の作成
3.イベントの広報・集客の仕組みづくり

すでに競技者へのインタビューを行い、映像制作を本業にしているメンバーが編集中。情報発信やイベントの仕組みづくりに関しては、7月に開催されるパラスポーツのイベント「スポルテック」に向けて準備中とのことだ。

「障害を持たれているということで感動的なエピソードが聞けるかと思いましたが、競技者の皆さんは“辛いことなんてない”とカラッとしていました。その姿をそのまま伝えていきたいです」と、インタビュー担当のメンバー“せい”さん。

他のチームからは、「コンテンツを充実する一方で、情報に触れる人の母数を増やすべき」といったコメントや、「アスリートだけでなく健康増進の視点から伝えてみては」といった提案が寄せられた。

また、JPPFの吉田理事長は「今回の発表にとても感心しています。提案がどう実現するのかとても楽しみにしています」とコメント。これまで競技者の世界で試行錯誤して来たNPOだが、外部の目が入ることがいい刺激になっているそうだ。

チームメンバーは発表会の最中もとても打ち解けた様子で、仲の良さが伝わって来た。「普段の所属や年齢を超えて、チームメンバー全員の気持ちが一つになっている感じがあります。会社ではない刺激があります」と、メンバーの“トム”さん。

「素人」であるからこその客観性があり、初めて触れるからこそワクワクする発見がある。今後の展開がとても楽しみになる発表だった。

育児で孤立した母親に知ってもらうためには? ~ホームスタートジャパン~

ホームスタートは、未就学児がいる家庭に研修を受けた地域の子育て経験者が訪問する「家庭訪問型子育て支援ボランティア」を行う団体だ。

週に一度2時間程度、定期的に約2~3ヶ月間訪問し、友人のように寄り添いながら「傾聴」(気持ちを受け止めながら話を聴く)や「協働」(育児家事や外出を一緒にする)等の活動を行い、この活動が核家族で孤立しがちな母親の支えになっている。

元々はイギリスで始まったモデルだが、2009年よりホームスタートジャパン(HSJ)が日本国内での普及に本格的に取り組んでいる。各地域でHSスキームと呼ばれる実施団体が立ち上がり、当初13箇所だった実践地が現在では90箇所にまで広がった。

そんなHSJの課題は、「潜在的な利用者への認知拡大」だ。チームメンバーは、HSJや現場のHSスキーム担当者にヒアリングすることで、見えて来た課題を次のように説明した。

「家庭を訪問する“ホームビジター”と呼ばれるボランティアが増える一方で、利用者が増えていない。現状の広報だと、外国人や家に籠りがちな潜在ユーザーに情報が届いていないのです」

この課題に対して、プロジェクトチームは「HSJのことを端的に伝えられる素材プロトタイプの作成」を目標に定め、活動を開始することになった。中間報告の時点では、ホームスタートに関わる方々へのヒアリングを通して、迷いながらも課題と目標を設定するところまで行い、6月の最終報告に向けて広報用の素材を作るとのことだ。

結婚しているが子どものいない男性メンバーである“ふくちゃん”は、「子どもができた時に役立ちそう。NPOも子育ての現場も初めてで日々勉強になっています」とコメント。NPOを一方的にサポートするのではなく、関わる側が気づき学ぶ機会を得ていることがこのプロジェクトの価値の一つなのだ。

同時にNPOの側も、専門特化した世界から視野が広がったと言う。HSJで事務局長を務める山田幸恵さんは、「最初はメンバーの皆さんから質問攻めに会いました。質問していただくことで、“あ、そういうことが疑問なんだ”というのがわかりました。業界の外の目線を取り入れることでいろんなことに気がつきました」と語った。

会場からも「検診場所にフライヤーを置いたらどうか」「タウン誌に載せてはどうか」など活発な意見が出た。課題を解決する具体的な施策の実行には至っていないが、こうして議論したことが、社会人チームのメンバーたちが当事者性を持って考える機会にもなったようだ。

自分たちに何ができるのかと迷走 ~グッド・エイジング・エールズ~

「僕ら、全然役割を全うしていない」。そんな発言から報告を始めたのが、NPO法人 グッド・エイジング・エールズのサポートプロジェクトチーム。メンバーは会社員(小売業)の”ニイさん”と医療秘書の“ネエさん”の2人だ。

NPO法人 グッド・エイジング・エールズ(以下、グッド)は、「LGBTと、いろんな人が、いっしょに楽しめる未来へ」をコンセプトに活動している団体。葉山で毎夏オープンする海の家「カラフルカフェ」、LGBTもそうでない人も一緒に楽しめるランニングイベント「カラフルラン」、セクシュアルマイノリティを撮影するフォトプロジェクト「OUT IN JAPAN」など、6つのプロジェクトを企画実施している。

団体の特徴は、「プロボノ」のメンバーによって支えられていること。「プロボノ」とは、職業上で得た知識やスキルを活かして、社会に貢献していくこと。グッドでは、広告会社、金融、IT企業、メーカーに勤める会社員や、ファイナンシャルプランナー、司法書士、看護師などの資格を持って働く人などが、おもしろくて楽しいものを世の中に産み出していこうと、日々仕事の合間を縫って活動している。

プロジェクトメンバーの2人は、代表の松中権さんの自宅で行われている定例ミーティングに参加し、活動の場を「カラフルカフェ」に絞ってプロジェクトを進めることになったそうだ。

「カラフルカフェ」の抱える課題は、「来場客がLGBT当事者か、意識の高いアライ(LGBTに理解のあるストレート)の人たちだけで、客数が頭打ちになっている」こと。2人の役割は「LGBTにどう関わっていいかわからないストレートの人たちにアプローチして、新規の来客を促進すること」と設定した。

ところが、カラフルカフェのオーナーたちとのミーティングを重ねた結果、冒頭の発言に行き当たる。当初は「誰かのために、なにかお手伝いできれば」という想いを持っていた2人だが、グッドのメンバーとの交流を重ねるうちに「グッドのメンバーの皆さんは能力のある方々ばかりですよね」「私たちには何も能力がないよね」という気づきに至り、迷走が始まってしまったそう。そしてそのまま、中間報告を迎えることになったのだ。

報告を聞いて、会場に来ていた松中権さんが口を開いた。
「確かに、これまでグッドに参加して来たメンバーは課題意識の高い人たちばかりだったから、ニイさんとネエさんは異色。ただし、世の中にとっての当たり前とメンバーにとっての当たり前との間に意識のズレあるから、2人には間に立ってつなぐ役割を果たせるのではないかと思います」

プロボノメンバーで「カラフルカフェ」を実現する土台は出来ていても、そこに集客したり認知を広めたりすることには、他のサポートプロジェクトと同様の課題があるとのこと。

そして悩める2人にこうアドバイスした。
「企画立案にしばられず、この一夏を楽しんでもらえればいいと思っています。どんなに頭で考えても、LGBTへの理解はその人に体験が有るかないかによりますから」

ニイさんとネエさんは7月8日の「カラフルカフェ」のオープンを目指して改めてプロジェクトをスタートする模様。もちろん、2人とも運営メンバーとして海の家に立つことになる。会場からも参加するという声があちらこちらから聞こえてきた。

うまくプロジェクトが進行するとは限らない、最初からできることが明確になっているわけではないけれど、そこに関わる意味はある。2人の取り組みは悩みつつ進んでいく。

「NPOサポートプロジェクト」の役割ってなんだろう?

以上、3つのチームの中間報告をレポートした。どの団体にも共通して言えるのは、「広報」に課題があるということ。そして、社会人チームは組織や業界の内と外とをつなぐ役割が担えるということだ。

専門技能を持った助っ人として団体の役に立つというアプローチもあるのかもしれないが、素人であるからこその視点が生きる部分もある。また、組織の外にいるからこそ見える本質もあるだろう。

目指す社会はどういったものなのか、どのように実現すれば良いのか、このチームで何をするのか。チームで決めたミッションをもとに個々がアクションを起こしていく中で、「目指す社会はどういったものなのか」を忘れないで欲しいとコーディネーターを務める二枚目の名刺の鈴木むつみは語る。

「サポートプロジェクトに正解はありません。答えのない世界に“わからない”も“失敗”もないんです。みなさんのアクションの一つひとつが、自分たちなりの答えをつくるかけがえのない軌跡。だからこそやりきることを大切に、自分が納得できるラストを迎えられるよう、最終報告会に向けて本気で取り組んでみてください」

それをやる意味は何なのか、どんな社会を実現したいのかという本質論は、組織の中で日々働いていると段々と見えなくなっていくもの。外からやって来た人が新しい視点でズバズバと踏み込んでいけば、組織の中にいる人たちにとっても良い刺激になるのではないだろうか。また社会人にとって、本業に取り組む意義を再確認するきっかけにもなるだろう。

最終報告までは残り1ヶ月ちょっと。各チームのメンバー達の奮闘は続く。

写真:原田麗奈(ライフログ)
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大竹 悠介(おおたけ・ゆうすけ)

大竹 悠介(おおたけ・ゆうすけ)

ライター・編集者。まちづくりNPOなどで広報・イベントディレクション等を含む複業を実践中。早稲田大学大学院にて地域ジャーナリズムを研究した後、広告代理店を経て現職。2拠点居住やサテライトオフィスなど地方を舞台にした新しいライフスタイルに関心がある。