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ビジネスマンでもありラグビー解説者としても活躍している野澤武史さんが、自身の“2枚目の名刺”としてスポーツ×ビジネスで2枚の名刺を持つ人々にインタビューしていく連載「野澤武史のゴリ押し!」。

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社会人2年目の頃から金融業界とラグビー界で2枚の名刺を持って活躍し、現在は「スーパーラグビー」の日本チームの事業運営をするジャパンエスアールでDeputy CEOをされている渡瀬裕司さんへのインタビューの続きをお届けします。

「渡瀬さんの2枚目の名刺時代」についてインタビューした前編はこちら

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JSRAのCEOとしての挑戦

野澤:今の肩書きを教えてください。

渡瀬:2015年からジャパンエスアール(以下、JSRA)のデュピュティ(代理)CEOです。JSRAは世界最高峰のリーグ「スーパーラグビー」に昨年から参加した日本チーム「ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ(以下、ヒトコム サンウルブズ)」を運営していて、私の主なタスクは、2016シーズンのレビューをして改善点を洗い出し、2017年の事業計画を立てること。経営を委ねられているということだと思います。

野澤:JSRAは今どんなチームで動いているのですか?

渡瀬:企画と広報、それに運営管理ですね。それぞれを専門にするメンバーがいるので、そこをどうつなげるかということを考えたり、今季から日本代表のヘッドコーチに就任したジェイミージョセフと定期的に強化策を話し合ったり。環境を整えることが私たちの仕事です。1年目は時間がない中で一生懸命にやってきて、2年目は自分たちで歩いていけるようにしなければならない。2年目は1年目以上に厳しい挑戦になると思います。

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選手獲得のための財源も課題

野澤:JSRAは現在の日本ラグビー強化の中枢だと思うのですが、ビジネス畑出身の方が沢山いる。ゴールは利益なのでしょうか?

渡瀬:社団法人なので、ゴールは利益ではなく強化。ただ、強くなるためにはテクニカルな部分はもちろん、財力がなければ強くはなれない。将来的には海外の超一流選手を呼んで来ることも必要になってくるかと思います。海外のスーパーラグビーのチームだと、選手登録は約40人。強いチームだと選手との契約金が一人平均1,000万円で年間4億円。その他の出費もあるので、15億程度で他チームは運営しています。

野澤:なるほど。強化にも財力が必要なのですね。

渡瀬:ヒトコム サンウルブズの場合は、秩父宮ラグビー場が満員で2万人、年間5試合すると10万人。チケットの平均単価が5000円としても、10万人で5億円。残りの10億円をどうするか、それを何年後までに実現させるのか。強くなるにはスピードと財力が必要です。一気にはできないので、強化と財政面のバランスを考えながらやっています。他の海外チームの運営は参考になるし、刺激になります。彼らの熱意は凄まじい。

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シーズンストラクチャーを変えていきたい

野澤:まずはどのような改革から行う予定ですか?

渡瀬:常々ヘッドコーチと話をしているのは、「何勝することを目標にしようか」ということ。どの試合をターゲットにするのか、勝つためには何が必要なのか。それを2019年シーズンまで考えていますね。

野澤:JSRAが選手との契約だけでなく、スタッフや組織のマネジメントまでのすべてを引き受けているんですね。日本ラグビーの強化と直結しているということは、トップリーグ(日本国内リーグ)との関わりも出てきますよね。

渡瀬:そうですね。各チームとの交渉になります。今後の課題は、年間の試合数の問題。スーパーラグビーが15試合あり、トップリーグも14試合。さらに日本選手権があって、加えて日本代表戦もある。すべてに絡む選手は疲れてしてしまいます。スーパーラグビーはコンディショニングも勝負のひとつだし、次のワールドカップのことを考えると、どこかの段階でシーズンストラクチャーを変えていく必要があるのだと思います。

野澤:そこで難しいのは、多くの選手のサラリーは企業が負担しているということですよね。

渡瀬:それもあります。JSRAは40人の選手を確保するためには40人×1000万円を目指すと、4億円の財源を持たなければなりません。これは専用スタジアムの問題にもつながる話です。現状でも1試合3万人は見込めると思います。

野澤:春のジャパン対スコットランド戦(2016年6月25日、味の素スタジアム開催)は3万人以上の観客が来場しましたね。

渡瀬:ヒトコム サンウルブズの試合は、昨年5試合で9万人が来場しました。リピーターがたくさんいて、アンケートを取ったら、平均2.7回来場しています。つまり母集団は3万5000人くらい。したがって、今は5万人のスタジアムを作っても有効ではないのだと思います。

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人と飲むことも大事!

野澤:渡瀬さんの現在のゴールはどこにあるのですか?

渡瀬:当面は、来シーズンに何勝するか。5勝はしたいですね。その次に黒字化すること。もっと長いスパンで言えば、プレーオフに出られるようになるところまでやっていきたい。選手も育成クラスを持ちたいので、日本協会と連携しながら進めていきたいですね。

野澤:いち学校のコーチから始まって、すごいことになりましたね。

渡瀬:それでも自分が知らないことも多いし、面白い。将来的な夢は、JSPORTSの解説者の枠をゴリ(野澤のニックネーム)から奪うことかな(笑)。

一同:(爆笑)

野澤:渡瀬さんからお話を伺って2枚目の名刺の神髄を見たような気がします。まずは声を掛けられるポジションにいなければならない。そして、呼ばれたら結果を出さなければならない。

渡瀬:何が大切かは分からない。私は運がいいのかもしれないし…。あとは、いっぱい人と飲むことが大事だと思います。(野澤を見ながら)正月に教え子に呼び出されても渋谷に行く、とかね(笑)。

野澤:そんなこともありましたね。あの時は失礼いたしました(笑)。

渡瀬:飲みは、自分ののれん代だね(笑)。

野澤:地道な人的ネットワークも重要だということですよね。「渡瀬さんにそう仰っていただいた」ということで、僕は奥さんを説得できます(笑)。今日はありがとうございました。

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【取材後記】

今回、渡瀬さんにインタビューさせて頂き、2つの点について卓越した能力をお持ちだと感じました。それは、決断力とメタ認知能力です。人生の岐路での足の踏み出し方は大胆で、その決断力は自己を客観視できる能力が土台となっていると私は思います。皆さんのtake awayは何でしたか?

 

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野澤武史

野澤武史

歴史教科書で有名な山川出版社で経営に携わる一方、日本ラグビーフットボール協会リソースコーチとして若手選手の強化・発掘を手掛ける。テレビ解説や、新聞・雑誌ので執筆も行い、著書には『7人制ラグビー観戦術-セブンズの面白さ徹底研究』(ベースボールマガジン社)がある。グロービス経営大学院卒業(MBA取得)。