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四肢欠損の子がくれた最高の祝福④障害を持つ人々への心的・経済的支援を世界中に!

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はじめに

長濱光とステファニーは、下肢欠損の娘(Mia)を育てる父と母です。そんな私たちが下肢欠損の娘を授かって感じたことの一つに、「世界と日本における四肢欠損の方の暮らしやすさの違い」がありました。

内閣府によると、日本に14万2000人いる(845人に1人)と言われている四肢欠損。身体障害者は360万人(33人に一人)います。でも街で見かけることは、あまりないのではないでしょうか。

「障害を持つ人が街にいることは当たり前のことなのに…」
「四肢欠損の人に平等な機会のある社会を作りたい」

こうした想いをきっかけに、私たち夫婦は、日本で四肢欠損の人々をサポートするプロジェクトを立ち上げたいと思うようになりました。

この連載では、私たちがプロジェクトを立ち上げるまでの過程と、そこで見聞きしたこと、体験したことを、私たちの視点で交互に発信していきます。

そう、私たちの「2枚目の名刺」の始点として。

これまでの記事はこちら

四肢欠損の子がくれた最高の祝福①「四肢欠損の娘・Miaの誕生」
四肢欠損の子がくれた最高の祝福②「娘がもたらした強さと穏やかさ」
四肢欠損の子がくれた最高の祝福③「私たちを変えた出会いと経験」

 

四肢欠損の人々に手厚い支援を行う「The War Amps」

Miaを家族に迎える準備をしていたころ、将来、Miaが参加できるようなさまざまな支援について情報収集していました。

そこで私は、カナダで100年の歴史を持つ非営利団体・The War Amps(ウオーアンプ)がアンピュティー(四肢欠損の方)のために驚くような支援体制を整えていることを知りました。中でも四肢欠損プログラムの「CHAMP(チャンピオンの略)」は、このプログラムに参加する子どもたちを紹介するにあたって、とても適切な言葉だと思います。

もともとThe War Ampsは、四肢を欠損した退役軍人によって1918年に設立された、戦争によって四肢を失ってしまった帰還兵の運動支援や生活支援を目的として組織化された団体です。長年にわたり、その活動範囲を拡大し、カナダ全土のアンピュティーをサポートするようになりました。

著名なメンバーでありThe War Ampsの初代代表シドニー・ランバートは次のように語っています。

「私たちは、四肢欠損の困難を受け入れ、戦争で勝利した時と同じ精神でそれを克服し、苦しみを乗り越え、最終的に私たち自身の生活の中で幸せを獲得し、自分の人生を最高のものに導きます。」

“Let us accept the challenge of amputation and overcome it in the same spirit that gave us victory in the days of war, victory in days of suffering and will ultimately give us victory in our own lives, crowned by achievement worthy of our best selves.”

私はMiaが生まれる前から、この組織に参加してきたため、ランバート氏が言及している「精神」とは勇気、決意、情熱、そして組織化であると理解するようになりました。

The War Ampsのプログラムとサポートを通じて、私たち家族はこれら全ての価値を体現する方法を知り、将来に対する見通しと勇気を得ることができています。

どのようにMiaをサポートすることができるのか、The War Ampsは彼らの経験によって学んだことを私たち新米父母に教えてくれました。

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「障がいについて語ることはタブーではない」という気づき

The War AmpsはMiaが生まれる前からサポートしてくれました。例えば「父母マッチング」と呼ばれるプログラム。これは四肢欠損の子どもを持つ新米の親に、同じような境遇の経験豊富な親を紹介することで、四肢欠損と向き合うにあたり必要な情報と心的サポートを提供することを目的としています。

このマッチングプログラムによって、生後間も無く片足を切断したオタワに住むリアという若い女性、そして彼女の両親と私たちは知り合うことができました。

リアとの最初の電話を私は、忘れることができません。私はリアが経験して来たアンピュテーションに関することについて質問したいことがたくさんありましたが、あれこれ聞くことが失礼にあたらないだろうかという不安もありました。

ところが、リアは私の気持ちを察して、会話をリードしながら、彼女のアンピュテーションについて話し始めてくれました。リアはごく自然に、まるで当たり前のことであるかのように、私の質問のすべてに答えてくれました。リアのこうした態度は、私に重要な教訓をくれました。「アンピュテーションに関して語ることは決して、この社会でタブーであるべきではない」ということです。

あの電話から数ヶ月後、Miaが新生児だったとき、私と夫はリアの両親と話す機会がありました。彼らは惜しむことなく四肢欠損の子どもをどのように育てるか、問題に直面したとき、どのように立ち振る舞うか、Miaが素晴らしい女性になるためにはどのなことをサポートできるかアドバイスをくれました。

私はリアのお母さんの言葉を決して忘れません。リアのお母さんは、「リアは、彼女の弟と比べると、独立心が強く、何かを成し遂げようと心に決めている」と教えてくれました。

リアの両親のくれた言葉によって、小さなMiaと私たちの未来は本当に明るい世界だということを知りました

四肢欠損の人々が集う「チャンプセミナー」

Miaが4ヶ月のとき、カナダ中から四肢欠損の子どもとその両親が集まるチャンプセミナーに初めて招かれました。このセミナーは年に1度行われていますが、その年はトロントで開催されました。

驚くことにThe War Ampsは、出席を決めた私たちのために、モントリオールからトロントまでの飛行費用を負担してくれただけでなく、トロントのダウンタウンの素敵なホテルを用意し、食事の世話までしてくれました。私はこのような寛大な支援を経験したことがありません!

この日まで、私はMia以外の四肢欠損の子どもや大人に会う機会はほとんどありませんでした。

私が受付の方へ歩いて行くと、子どもたちが飛び跳ね、カラフルな義足で走り回るのが見えました。彼らは「普通の」子どものように楽しそうに遊んでいて、運営スタッフも四肢欠損の方々でした。私はまるで、別の国にいるような感覚を抱きました。

外出するにあたり、私たちは他人からの視線を感じることがよくありましたが、それを避けるためにMiaの足を隠そうとする必要は、そこでは一切必要ありませんでした。Miaと他の子どもの間に何ら違いがなかったのです。私とMiaが直面した経験を共有できる子ども、幼児、赤ちゃん、その両親ばかりだったのです。

この時に感じた安らぎにも似た感覚は、私にめまいさえ引き起こしました。それは夢のようでしたが、幸い夢ではなく、現実のことでした。

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心的にも経済的にも支えてくれるThe War Ampsのようなサポートを世界中に!

受付テーブルに行くと、自信に満ちあふれた義手の女性が、手際よくプログラム表とMiaの名札を渡してくれて、圧倒されたのを覚えています。

受付をすませると、すぐに私はMiaと一緒にいる実母のところへ向かいました。私の喜びを、私の目を伝う涙が語っていたのでしょう。私の顔を見た母もまた喜びの涙を拭っていました。

Miaの祖母でもある私の母は、Miaの四肢欠損を受け入れるのに苦労していました。
母は、小さく大切なMiaが、周囲の子たちとは異なる姿で生活していかなければならないことに、心を痛めているようでした。それでも前向きな気持ちを保つために最善を尽くしてくれていました。

ですが、The War Ampsセミナーは「Miaの将来は大丈夫だ」という安心感を母にも与えてくれました。

私たちはこのセミナーが本当に大好きで、Miaの友人とその家族に会えるのを毎年楽しみにしています。

心的な支援に加えて、The War AmpsはMiaの高価な義足のための財的支援を提供してくれています。3年間で義足を4回も変更してきました。 私と夫はこの3年のほとんどを学生として過ごしたので、The War Ampsがなければ、Miaにとって経済的に必要なサポートをしてあげられなかったと思います。

この必要不可欠なThe War Ampsのサポートに対して、私たちは感謝してもしきれません。

アンピュティーに対して包括的な支援サービスを提供してくれる組織は、世界中を見渡してもThe War Ampsだけです。

カナダ人として、私たちは、これらのサービスとサポートの恩恵を受けていることに心から感謝し、日本の若いアンピュティーにもこのようなサポートを提供できないかと、今真剣に考え、積極的に動いています。世界中のアンピュティーとその両親、社会に役立つ情報を提供し、より豊かな人生、社会にしていきたいと考えているからです。

続くーーー

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ライター

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編集者

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長濱光(Hikaru Nagahama)
ライター
四肢欠損の長女が生まれたことをきっかけに、世界中の異なる環境の国で四肢欠損を持つ子どもが、より豊かな経験を積み、社会の中でそれぞれの個性を活かしながら活躍できる環境を創ることを人生のライフワークとして活動しています。
はしもと ゆふこ
編集者
女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。
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