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「好き」や「得意」を人のために役立てる「パラレルキャリア」という働き方〜趣味のパーティー企画が企業の受注を得るまで

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あなたは「パラレルキャリア」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 副業ブームの世の中で、本業以外に趣味や特技を活かして活動する20代後半から30代前半の人が増えている。

今の立場も大事にしながらやりたいことや夢を実現する方法として、副業とはまた違ったアプローチの働き方と、こうした働き方を実践している一人の女性を紹介したい。

※この記事は、2枚目の名刺公務員プロジェクトのメンバーである高沖紗希さんが執筆したレポートを、本人の許可をいただき、編集部で再編成したものです。

高沖紗希さんが運営する三重にあるモノ・コト・ヒトにスポットを当てたWebメディア「ミエニアル」

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夏の終わりのある日。「秋のホームパーティー」と称したそれは、都内にあるマンションの一室で行われた。友人夫妻をもてなすためテーブルに並べられた料理は、秋の味覚を先取りした秋刀魚の煮付けを中心に7品。どれも料理自体の彩りとともに、盛り付ける器の色や柄にもこだわっている。

秋刀魚の煮付けを載せたのは色鮮やかな絵付け模様を特徴とする九谷焼のお皿。そして、お皿の下に敷いてあるのはカラフルなペーパーナプキン。こういった消耗品も安くて可愛いデザインのものを雑貨屋で探してくる。

このテーブルコーディネートを始めとして、パーティーの企画から運営までをプロデュースしたのは、“ホームパーティープランナー”の村上あゆ美さんだ。今回のように季節感も大事にしながらのホームパーティーを多数主催し、企業や商品PRのためのパーティープロデュースも請け負っている。

その実績は数々のメディアにも取り上げられており、どんどん活躍の場を広げている彼女だが、実は営業職の会社員が本業だという。ホームパーティープランナーとしての活動は、平日の夜や休日のみ行っているそうだ。村上さんのように複数の仕事や肩書きを持って活動することは“パラレルキャリア”と呼ばれ、近年このような働き方をする人が増えている。

村上さんはなぜ会社員の仕事以外にホームパーティーをするようになったのだろうか? パラレルキャリアの魅力にも迫るインタビューを行った。

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(色鮮やかな器が料理を一層際立たせている「秋のホームパーティー」 撮影:村上あゆ美)

 

ホームパーティープランナーになるまで

村上さんがホームパーティープランナーとしての活動をするようになったのは、2014年1月のこと。始めたきっかけを伺うと、「『ホームパーティーを趣味と呼べるように一年間極めてみよう』って『決めた』からだったりします」。そんな回答が返ってきた。「パーティーのプロデュースに関わるようになるまでの私は、『趣味は?』と聞かれる度に答えに困っていました。これが私の趣味ですと自信を持って言えるものが何もなかったんです」

そんな時に村上さんが思い出したのは、学生の頃に留学していた米国で頻繁に参加していたホームパーティーのこと。アットホームな雰囲気の中、時には参加者が持ち寄ることもある手作りの料理が並んだテーブルを囲むのが好きだった。

立食パーティーのようなかしこまった場は苦手だった村上さんも、ホームパーティーでは初対面の人とも仲良くなれる気がしたという。「4年半住んだ米国で、最後の最後まで自分の気持ちを英語で伝えきれる自信は持てなかったけれど、それでも今でも交流のある友人たちはホームパーティーをした子たちです。あのアットホームな空気の中だからこそ、じわじわと自分を伝えることができたんだと思います。その経験を通して、自分でもホームパーティーを企画したいなという気持ちはずっと持っていました」

まずは月1回の開催を目標に、多い時では月に3回程ホームパーティーをしていたという村上さん。「やっていくうちに、もっとこうした方がいいんじゃないかとか、逆に自分にはこれは向いてないなとか、色々わかってきたんです。そもそもやってみないと、それを本気でやりたいのかも、何が課題なのかもわかりません」。最初は自宅で気の合う友人を集めてホームパーティーをしていたのが、今では企業から依頼を受けてのパーティープロデュースも行うまでになった。

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(ホームパーティープランナーの村上さん。本業は営業職の会社員)

 

パラレルキャリアという働き方

働き方や生き方の価値観が多様化している昨今では、村上さんのように本業以外に好きなことや得意なことを活かし、パラレルキャリアとして活動する人が増えている。

12の事例を紹介!2枚目の名刺を持つのなら、まず読んでおきたい「パラレルキャリアの基本」

ここで注意したいのは、パラレルキャリアとは必ずしも収入を得ることを目的としていないという点だ。従って、利益を追求しないNPO法人での活動や、主婦や地域住民としての仕事も含まれる。「自分の趣味や特技を、人のために使おうって思った瞬間からパラレルキャリアだと私は思っています」と村上さんは言う。

「会社員をしながら、主婦をしながら、子育てをしながらでもパラレルキャリアはできます。もし、これをライフワークにしたいなと思うものが見つかったら、まずは身近な人に共有してみてください。誰かの役に立つことで自分に自信が持てたり、人生に対するモチベーションが保てたりすることってあるんです」。村上さんは、こうして社外でも活動の輪を広げることで充実した日々を送っているように見えるが、パラレルキャリアをしていく上で、苦労はあったのだろうか?

 

キラキラはボロボロの裏返し

「私、キラキラとボロボロは紙一重だと思っています。キラキラ輝くために、裏では必死にならなきゃいけないし、自分がやりたくて始めたことなのに時にはそれが自分を苦しめていたり、仕事や家庭やその他のことのバランスが取れなくなったり、自分の理想とのギャップに自己嫌悪になったり」

ホームパーティーのキラキラした写真の裏には、その世界観を作り上げる者ならではの葛藤があったのだ。また、自分では一生懸命に取り組んでいることでも、周りから「『趣味』なのにどうしてそんなに必死になっているの?」などという言葉をかけられたこともあったという。やっている自分自身も何を目指しているのかわからなくなり、呆然とした日もあったとか。

「でも、頑張っているのは私だけじゃない。私と同じようにパラレルキャリアで自分の夢や目標に向かって頑張っている仲間もいるし、みんな似たような思いを抱えているからこそ、その頑張りを称える機会も必要かなと思っています」。その言葉通り村上さんは年に一度、それぞれのライフワークを頑張る仲間たちを集めたパーティーの主催もしている。

また、パラレルキャリアに興味のある人や実践する人たちが集うオンラインサロン「Think In Move」(通称TIMサロン)を友人と共に立ち上げ、運営している(下の記事は、TIMサロンのイベント「WOMAN TIES vol.2」参加レポ)。

 

「やりたいこと」がなくても大丈夫。あなたの「強み」をパラレルキャリアに活用しよう!

 

やりたいことを見つける方法

村上さんには“ホームパーティー”という軸があったものの、何かを頑張りたいという気持ちはあっても自分のやりたいことがわからないという人も多い。そのような人に対してのアドバイスを伺ってみた。

「例えば、ただの『好き』や『得意』だったことを、『どうすれば誰かの役に立つか?』という視点で考えてみるのがおすすめです。そして自分ができることで友人に協力するなり、自分で企画してみるなり、小さくてもいいから実績を作って、その実績を使ってまた次の実績を作って……の繰り返しです。自分で企画したことをブログで報告して、友人から依頼が入ったものをまたブログで報告して、一つ一つ積み上げてきたら、ある時、ブログを見た企業さんがメールをくれて。それには精一杯するので実績にさせてくださいというスタンスで向き合って、それをまた実績にして、その実績を見てくれた違う企業さんからまた依頼がくる。もしくは、自分がアプローチしたい企業さんに今までの実績を持っていくということをしてきました」

小さなきっかけを大事に大事に磨いて育て、発信を続けてきたからこそ今があるのだと話す村上さんは、地道にコツコツと活動を続ける努力の持ち主だった。

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(ライフワークを頑張る女性たち。このパーティーも村上さんが取り仕切っている)

 

パラレルキャリアで新たな可能性を見出す

もちろん本業だけで生きていくこともできるし、本業にやりがいを感じており何の不満もないという人もいる。また、パラレルキャリアという働き方が合わない人もいるだろう。ただ、本業に満足していたとしても、パラレルキャリアをすることでできる人とのつながりや自身の可能性は人生をより豊かにし、本業にも良い影響を与えるのではないだろうか。

パラレルキャリアに強い関心を抱く20代後半から30代前半にかけての人たちは、社会人としても落ち着いてきて新たな可能性を見出す余裕が出てきた頃と予想されるが、一般的な会社の組織ではまだまだ若い社員として扱われている時期。やりたいことや能力があっても組織の壁に阻まれてできないことも多いだろう。そんな中でも心の中にある想いに蓋をせず、諦めず、自分らしく生きる道としてパラレルキャリアという選択肢があることをここに示したい。

トークイベント開催のお知らせ

NPO法人二枚目の名刺、TIMサロン主催の「WOMAN TIES」、パーソルグループが提供するボランティアを通じたキャリア支援プログラム「ママボラン」がコラボして、パラレルキャリアに関する女性向けのトークイベント「#わたしのパラレルキャリア」を開催します!

複業(副業)、プロボノ、ボランティア、ライフワークなどのスタイルで活動する人たちのパラレルキャリアの始め方・働き方、実際にやっていることなどをざっくばらんに聞ける会です。

「本業以外に何か始めたいけど、一歩を踏み出せない」

「ライフイベント(結婚・出産など)による働き方の悩みを抱えている」

「自分の強みを生かして働いている人の話を聞きたい」

という方は、ぜひお申し込みください!

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《イベント概要》WOMAN TIES vol.3 #わたしのパラレルキャリア

TIMサロン×二枚目の名刺×ママボラン 共同開催

日時:9月29日(土)13:30〜16:00

会場:パーソルホールディングス株式会社・外苑前オフィス

〒107-0061 東京都港区北青山2-9-5 スタジアムプレイス青山5F

参加費:2,000円

定員:30名(子連れ可/託児サービスはありません)

イベント詳細・お申し込みはこちらから

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編集者

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高沖紗希
ライター
公務員×2枚目の名刺プロジェクトメンバー。好奇心旺盛でじっとしているのが苦手な三重県職員。パラレルキャリア活動として、2018年8月に三重県のモノ・コト・ヒトにスポットを当てたwebメディア「ミエニアル」をオープン。メディアを通じて、「住んでいる場所や置かれている状況に関わらず、個人でやりたいことをやる」という考え方を実践中。
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