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【プロジェクトメンバーの報告】サポートプロジェクトは、デザイン思考を用いた“デザインプロジェクト”だった

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私こと水谷和也(Kaz)は、NPO法人二枚目の名刺が主催するサポートプロジェクト「きょうされんプロジェクト」に2018年6月〜9月に参加しました。

今回は、3ヶ月間のプロジェクトを振り返り、私たちの取り組みと、私にとってのサポートプロジェクトの意義をご報告したいと思います。

働く「幸せ」を感じられない自分を変えるために

私は、長い間「服のモノ作り」の世界で働いてきた人間です。学生の頃からファッションが好きで、「服で人を幸せにしたい」という想いで某アパレル企業に入社。13年間働いてきました。

2009年から6年半の間、中国・上海に海外駐在し、「モノ作りの司令塔」として工場を飛び回る忙しい毎日を送っていたのですが、仕事の重責とストレスで約6年前から精神疾患を患い、2年前に病気が悪化、日本へ帰国することに。

「服で多くの人を幸せにしている」はずなのに、当の本人は幸せを味わえない日々。しまいには「身体表現性障害」と診断されて3ヶ月間の休職へ。私の人生はどん底に陥ってしまいました。

40代で一番働き盛りの時期なのに、身体がいうことを効かず、私は「これから一体どう生きていったらいいのだろう?」と、先の見えない自分の将来に悩んでいました。

そんな時、「一度きりの人生に挑戦して、幸せな生き方へLIFE SHIFTしたい」と考えていた私は、「二枚目の名刺」サポートプロジェクトのことを知り、千載一遇とばかりに説明会(コモンルーム)に思い切って飛び込んでいきました。

きょうされんサポートプロジェクトへの参加ーー福祉業界の難しい課題を知る

コモンルームで出会ったのが、障がい者が一緒に働く全国の共同作業所を支援する団体、きょうされん様(旧称:共同作業所全国連絡会、以下敬称略)。

彼らからの依頼は「内向きな障がい者福祉業界を外向きに変えたい」というもの。

障がいを抱える当事者として、障がいを持つ方々の課題解決に携わることで、私にも新しい人生を切り開けるかもしれない!と感じ、プロジェクト参画を決めました。

今回の「きょうされんサポートプロジェクト」のメンバーは、「障がい者福祉」の世界を知らない素人ばかりの7名。最初の2、3週間のミーティングでは、団体を設立するまでの話や福祉業界の根深い課題、障がい者の置かれている厳しい現状などを解釈することに、私たちはひたすら時間を費やしました。

日本の障害のある人の雇用の状況

日本には936万人もの障がい者(日本人の14人に1人)がいるけれど、働く障がい者はわずか93万人、働きたくても働く場所がない障がい者がなんと270万もいるなんて……

私たちは、いきなり日本の障がい者雇用の厳しい現実を目の当たりにしました。

でも、私たちのような「障がい者福祉」を知らない社会人の強みは、「しがらみなくゼロベースで考えられること」、そして「ビジネス感覚」を持っていること。

私たちは、根深い課題を知れば知るほど、逆に第三者の立場から、「自由な発想で課題解決のアイデアを出せるのではないか?」と徐々に感じていきました。

多様でフラットな関係性だからこそできる面白さ

「二枚目の名刺」のサポートプロジェクトの良い点は、様々な業界から集まった多様な社会人達がチームを組むこと。年齢や性別、業界、肩書きもバラバラ。お互いをニックネームで呼び合い、名刺交換もなければ、お互いの本名すら途中まで知らないような、全くフラットな関係性の中、プロジェクトを行います。

本業では味わえない学生サークルのようなアットホームな雰囲気で、自由で活発な議論をすることができ、またお互いの性格や個性(強み)を知ることで、気がつくと楽しいチームの「輪」ができ、いい化学反応が起き始めました。

プロジェクトの中盤では、「現場」から障がい者のことを学びに、障がい者が働く「共同作業所」を訪問。障がい者の働く「チカラ」を多く知り、「共同作業所」とは障がい者にとってのもう一つの「コ・ワークスペース」なんだ、と理解が一気に深まりました。

そして、チームのアイデアが日増しに大きく膨らんでゆき、「障がい者福祉を明るく変える楽しいイベントに挑戦しよう!」と一気にスケールアップしていきました。

本気でやるからこそ、沢山の困難も……

イベント開催を決めるところまでは順調に進んだものの、素人集団が手がけるには非常にチャレンジングな試み。そんなに簡単にはいきませんでした。

あてにしていた、無料のコワークスペースを借りることができず、集客の目玉となる講演者探しにも四苦八苦。タイトなスケジュールの中での焦りから、途中メンバー間でぶつかることもありました。

しかしリーダーとしてチームをまとめてくれた「しーきーさん(岸さん)」が本業の人脈を使って自社の協賛を獲得することができ、状況は一気に好変。「社会に良いこと」をすると人は共感してくれることも幸いし、今まで会えなかったような方々からの講演協力を得たり、メンバーそれぞれが持つ強みが発揮されたおかげで、イベント開催が見事なまでに「カタチ」になっていきました。

「障がい」という概念を明るく変える「イエローリボンフェス」日本初開催へ!

企画決定からわずか2ヶ月半、日本の障がい者支援の象徴である「イエローリボン」のロゴを使った日本初のイベント、「イエローリボンフェス」を開催することが決定。

「当たりまえに働き、選べる未来を」という、障がい者が当たり前に働ける社会作りを目指すきょうされんの理念をテーマに、「障がい」という暗いイメージを180度変えるような、斬新で楽しいフェスを9月15日(土)渋谷(SLACK SHIBUYA)にて開催しました。

イエローリボンフェス

通常の障がい者関連イベントとは全く異なる、カジュアルでお洒落な空間演出をしながら、障がい者が作った「障がい者商品」の展示販売や障がい者アートの展示、障がい者のイメージを変える4つの講演(トークショー)、そして障がい者置かれている現状課題や障がい者雇用に関するパネル展示を行い、「障がい者の働くチカラ」を伝えることにより、多くの方々にご来場いただきました。

イエローリボンフェス
~イベントで伝えたメッセージ~
・障がい者も皆な同じ人間、障がい者を知り「意識」のバリアフリーを創ろう
・「障がい者の働くチカラ」を認め、皆んなが一緒になって「チカラ」を引き出そう
・2020東京五輪開催、SDGs(持続可能な開発目標2030アジェンダ)が障がい者雇用の課題解決への大きなチャンス!

私のとっての「デザインプロジェクト」

今回の「二枚目の名刺」のサポートプロジェクトで学べたこと。それは「デザイン思考」による、イノベーティブな発想で社会問題の解決を、実践を通して学べたこと、まさに私のとっての「デザインプロジェクト」でした。

「デザイン」というと、芸術やアートのようなイメージを想像しがちですが、「デザイン」の本質とは「問題解決」であり、これを「真・善・美」で具現化することです。

そして「デザイン思考」とは、未来の見えない答えのない時代(VUCAな時代)の中で、社会全体を俯瞰しながら、右脳による未来志向で斬新な発想と、左脳による論理的な問題解決思考を組み合わせた、社会変革を作り出す為の、体系化された新しい学問です。

デザイン思考

もちろん3ヶ月間では、本当の意味での「イノベーション」は創り出すことはできません。しかし、このような「デザイン思考」による未来型の問題解決思考こそ、日本社会や企業に求められる、社会人にとっての大切なスキルだと私は信じています。

そして、今回のプロジェクトでの一番の成功要因は「デザイン思考」で必要とされる、バランスの取れた多様な個性を持つメンバーに恵まれたことでした。

~「デザインプロジェクト」の成功要因(多様性のあるチーム)~

「導」ーチームをまとめて、様々な人を繋ぎ、プロジェクトを成功へ導くリーダー
「創」ーマイナスをプラスに変える斬新なアイデアと美意識を創るクリエイター
「理」ー課題やタスクを冷静に整理して、プロジェクト運営するマネージャー
「宣」ーSNSなどのメディアをフル活用し多くの人に広め、拡散させてゆく広告塔
「支」ー常にチームの為に献身的に尽くしてくれる、母親のような縁の下の力持ち

社外の人脈・仲間作りが、本業への新しい刺激と次の人生の糧になる

予防医学研究者の石川善樹氏曰く、社会人が「幸せ」な職業人生を送るためには3つのライフステージがあるといいます
・一つ目は20~30代にかけて、本業でハードワークして仕事で成果を出す時期。
・二つ目は30~40代にかけて社外の仲間を作り自分の「ブランド」に気づく時期。
・三つ目は50代以降に、自分の人生で果たすべき「志事」を達成させる時期。

(出典: Newspicks アカデミア石川ゼミ)

 

多くの社会人は、30~40代の働き盛りの時期に仕事に忙殺される中、出世競争や他人との比較、自己実現と現実のギャップに悩む時期があるはずです。
また、今後の人生は一つの企業で定年まで勤め上げるのが困難な時代になり、「幸せ」を見いだすことが難しい時代です。そんな時、自分の働く「幸せ」を考えるきっかけ作りを提供してくれるのが、この「二枚目の名刺」サポートプロジェクト。上の図の2つ目のステージ(ブランディング期)にあたります。
今まで知らなかった新しい仲間ができ、社会貢献を通して多くの学びを得られる貴重な体験。私は今回のプロジェクトを通して、新しい「幸せ」のヒントを得ることができました。
今後、私と同様に、「二枚目の名刺」サポートプロジェクトで、皆さんにとっての新しい「幸せ」のヒントを見つけられたらいいな、と思います。

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ライター

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編集者

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カメラマン

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Kaz(水谷 和也)
ライター
親から授かった「和」という名の意味、「家族や仲間との繋がり」「和らぎや平和」を大切に生きる、東京下町が大好きな人間。仕事のストレスで「身体表現性障害」になったことをきっかけに、一度きりの人生への挑戦を決意、日本を明るく「幸せ」な社会へ変革を志す、自称、デザインシンカー。現在は某アパレル製造小売業に勤務。