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本業先の企業をも巻き込んだプロボノで得たものは「未来に対する期待」

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がん患者やその家族が集い、無料で専門的な支援が受けられる場「マギーズ東京」が10月10日、豊洲にオープンします。

24歳で乳がんを宣告された自身の経験を、がんで苦しむ人のために役立てたいと、「マギーズ東京プロジェクト」を2014年に立ち上げた、NPO法人maggie’s tokyo共同代表の鈴木美穂さん。そんな彼女の想いに共感し、“2枚目の名刺”としてマギーズの活動を支えてきた4名の女性に話を伺いました。

本業を持つ彼女達が、どんな思いで、どうプロジェクトに関わってきたのか。本業で得たスキルや経験、知識、人脈をどう生かしたのか。そして、プロボノから得たものは何なのか。その答えに迫るべく、全4回にわたってインタビューをお届けします。

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【「マギーズ東京」スタッフのインタビューは全4回!】

1)本業先の企業をも巻き込んだプロボノで得たものは「未来に対する期待」

2)本業としては続けられなかった好きな仕事をパラレルキャリアで実現

3)「ルームメイトの夢が自分の夢に」友人だからこそできるプロジェクト調整役

4)NPOを知り尽くした議員秘書が、がん患者のための施設「マギーズ東京」に掛ける想い

 

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最初に話を伺ったのは、不動産会社に勤務している青山加奈さん。建築チームのメンバーとして、土地を借りたり、限られた予算内で建物を建てるための調整役を担うなど、施設の建設に関わる根幹部分を支えてきた青山さんが、マギーズセンターができるまでの裏話や、施設のこだわりを話してくれました。

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NPO法人マギーズ東京

建築・環境コーディネーター

青山加奈さん

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友人からの一通のメールが、空間の持つ力に魅せられてきた私を突き動かした

—マギーズと出会ったきっかけは?

大学生の頃からの友人である代表の鈴木から「マギーズセンターって知ってる?」という連絡が届いたのがきっかけです。そこには、英国のマギーズセンターのURLが貼られていたのですが、サイトを見ると、美しくて、明るくて、穏やかな建物と空間が広がっていました。「こんなに素敵な場所が、がん患者の方やその家族を支える場なのか」小さい頃から、空間の持つ力に魅せられてきた私にとって、嬉しい衝撃でした。その翌日に鈴木に会い、“マギーズセンターを日本につくる”という夢に向かって一緒に走ってきました。

 

—マギーズではどのような役割を担っているのですか?

敷地の取得や建物に関わる資金面のやりくり、契約の部分を主に担当しました。マギーズ東京は、2020年までのパイロットプロジェクトなのですが、本業が不動産ディベロッパーで、東京湾岸エリアを担当していたご縁もあって、この土地を活用できないかと土地の所有事業社に提案する機会に恵まれました。内定をいただいてからは、社内や関係各社を駆け回り、限られた予算内で建物を完成させるための話合いや交渉を重ねてきました。

 

—本業がきっかけで土地が借りられたのですね。会社もサポートしてくれたのですか?

こうした提案の機会を得られたのは、会社の後ろ盾があったからだと思います。土地の契約には、会社がパートナーとして入ってくれました。当時、日本ではマギーズセンターとしての活動実績が全くない状況で、駆け出しの団体を応援してもらえた事は、忘れられない出来事となりました。到底自分たちだけの力では、このような敷地を借りられなかったと思います。本当にありがたいです。

 

 

予算が限られていても、人の目や手に触れる場所には木のぬくもりを

—土地が決定した後、建築の部分で大変だったことは?

十分なお金があるとは言えなかったことです。また、2020年に建て壊すことが決まっているので、建物自体は軽量鉄骨造という一般的にはプレハブ工法として知られるものを採用しました。本業で付き合いのあるメーカーさんにご協力頂き、マギーズセンターのコンセプトについても深くご理解頂きました。深夜にわたる打ち合わせにもお付き合い頂き、採算度外視で予算を抑えて頂いたと思います。

 

—建物の中でこだわりは?

基本の構造部分はプレハプですが、人が見たり、触れたりする部分は天然の木材を採用しています。実は、天然の木材は現物支給という形で企業からご協賛頂いています。プレハブとは思えない温かい空間は、こうした多くの会社の方々のご協力によるものです。また、窓枠は一般的にはアルミサッシであることが多いと思いますが、空間に温かみが欲しかったので、木製の窓枠をドイツから取り寄せました。こちらも個人で多額の寄付をしてくださった方々がいらした事で、実現しました。日本で木製の窓枠はとても珍しいもの。個人的にも気に入っています。

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マギーズセンターならではの設計で、がん患者の心に寄り添える場所に

—木のぬくもりが、訪れる人の心をほぐしてくれそうです。施設について、少し教えていただけますか?

建物は、自然光が入って明るい、安全な中庭がある、執務室からすべてが見える、セラピー用の個室がある、といった、英国マギーズセンターの「建築概要」に従って設計しています。2棟に分かれていますが、キッチンのある棟は、人が集まるダイニングスペースとして使うことを想定しており、中央に執務室を置いています。もうひとつの棟は、ヨガなどのワークショップ、会議室として使う予定になっています。

 

—とても開放的な空間ですね。

そうですね。外の景色がよく見えるように、窓も大きく作りました。ただし、患者さんによっては、人から見られたくない、他の人からは離れたスペースで専門家に話を聞いてもらいたい、というニーズもありますので、ブラインドで仕切ることのできる個室も用意しています。トイレをふたつ用意し、ひとつは「泣けるトイレ」にしていることも、マギーズセンターならではの設計です。英国からのアドバイス等も反映しています。

 

—周囲には緑もたくさんありますね。

マギーズ東京のある新豊洲は、周囲を運河に囲まれた場所。公園も多く、都心ではなかなか出会えない水鳥に会え、歩道も広く、地上から空が見える面積が広い、新しい街です。きっと湾岸エリアと聞いて、殺風景な印象をもたれる方もいらっしゃると思いますが、少し目線を変えてみると、実は恵まれた景色を感じる事ができます。植栽も、付き合いのある会社さんが協力してくれました。入り口付近は雑木林をイメージし、日本らしさを意識しています。ボランティアの方が、雑草を抜いたり、花を植えてくださったりしたのですが、オープン以降も“みんなで作っていく”環境を残していきたいので、あえて完璧にはしていません。

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プロボノで得たものは、未来に対する期待

—プロジェクトでの経験が本業に生きているなと思う部分はありますか?

「本業へのフィードバックがあるか」という事はあまり考えていません。本業ではないので、難しいとも思います。それでも、今の会社で働きながらプロボノとして活動した事が、結果的に思わぬ広がりを見せた事は嬉しい事実です。

「こういう場所が必要なのではないか」と信じた気持ちや、「この街は、どんな街になっていくのかな」と未来を楽しみにする気持ちでここまでやってきましたが、想いが形になっていくことで、幸せな瞬間が幾度もありました。まだ建物が出来ただけなので、実感が湧いていませんが、これからが楽しみです。

本職では、湾岸エリアの大規模マンションを中心に携わってきましたが、マギーズセンターの建築に関わったことで、ひとつの土地や家、ランドスケープといった周辺環境、小さな空間が人の生活にどう影響するのかを勉強したくなりました。そうした視点を持てたことは、もしかすると、今後の仕事にも活きていくのかもしれません。

 

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「がんで苦しむ患者さんのために、早くオープンしなければ!」と話す青山さん。“マギーズセンターをつくる”という青山さんの夢の実現は、もうすぐそこまできています。

【「マギーズ東京」スタッフのインタビューは全4回!】

1)本業先の企業をも巻き込んだプロボノで得たものは「未来に対する期待」

2)本業としては続けられなかった好きな仕事をパラレルキャリアで実現

3)「ルームメイトの夢が自分の夢に」友人だからこそできるプロジェクト調整役

4)NPOを知り尽くした議員秘書が、がん患者のための施設「マギーズ東京」に掛ける想い

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マギーズ東京

10月10日グランドオープン!

10月10日と11日に、マギーズ東京のオープンを祝うフェスティバルが開催されます。マギーズ東京の内覧ができるほか、ステージイベントやチャリティーフリーマーケット、オークションなども開催予定。参加無料。

【詳しくはこちら】

マギーズ東京HP

マギーズ東京Facebookページ

 

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ライター

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編集者

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カメラマン

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はしもと ゆふこ
ライター
女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。