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読者の皆さんは、本業先の組織や普段の業務を越えた活動やコミュニティーをお持ちだろうか?

昨今、“越境学習”というワードが注目されているが、汐留エリアに拠点のある企業人事ネットワーク「汐留キャリア・ダイアローグ」が主催する企業横断型のプロジェクト「Life WorkS Project」から生まれた活動も、それぞれのペースで前進しているようだ。

2017年12月22日、汐留ソフトバンク本社で行われたLifeWorkSの中間報告会の模様をレポートしよう。

Life WorkS Project
「働く」はこれから、どんどん「生きる」に近くなる。
自分自身の夢や大好きなことを見つめ直して、それを今の仕事と重ね合わせて。
1人ひとりが、自分らしいと心から言えるこれからの働き方を語り合い、
仕事のカタチをデザインしていく汐留という場所を起点にしたプロジェクト。
2017年7月6日にキックオフが行われた。

LifeWorkS Projectがデザインする未来・会社・社会ーここから汐留のコレクティブ・インパクトが生まれる

課題を解決するためにLifeWorkSProjectができること−ここから汐留のコレクティブ・インパクトが生まれる【後編】

 

中間報告会のテーマは「越境学習のススメ」

キックオフ同様、資生堂、全日本空輸、ソフトバンク、電通、電通アドギア、日本テレビ、パナソニック、パナソニック・システムソリューションズ、三井化学、リコー(音順・敬称略)など、汐留に拠点を置く各企業の20~30代の社員、港区役所職員、港区のNPO団体、慶応・法政の社会学ゼミ生など、150名近くが集った中間報告会。

セクターや組織の枠を越えて、普段の仕事ではあまり関わることのない者同士がチームを組み、5つのプロジェクトを実施している。そのプロジェクトの進捗報告や越境実践者のパネルディスカッションなどを通して、越境学習の意義が確認された。

 

LifeWorkSから生まれた5つのプロジェクト

7月のキックオフを皮切りに、LifeworkSから下記5つのプロジェクトが始動した。

共通項は“汐留を拠点としている”ことだが、汐留に勤務する人だけしか参加できないわけではない。このプロジェクトに参加することが、自分らしい「ライフ」や「ワーク」につながると思うのなら、誰もが手をあげることができる。

1) 社内の取り組みが社外へ!「ソフトバンクユニバーシティ体験会」

様々なスキルや経験、知見を持った人が、互いに教え合い、学び合う機会を創出する取り組み。ソフトバンク社内で行われていたものを、他社を交えた体験会として実施。英会話レッスンやデータ分析の基礎知識やソフトバンク流プレゼン資料の作り方について学んだ15名限定の体験会は、密度の高い学びにつながっているという。

2) 越境者80名が参加する学びの場「School of LifeworkS」

こちらはLifeworkSを起点に生まれた大人数の学びの場だ。セクターを越えて共に学ぼうと、月1回開催されており、参加者は80名を超える。
コンテンツもグラフィックレコーディングのワークショップ(講師:タムラカイ氏)、超情報交換会議の体験会(講師:倉成英俊氏)などと多岐に渡り、自己成長に繋がるツールのインプットから、これからの教育の在り方など未来を見つめる時間など多岐に渡っている。
2018年1月にも「インプロ(即興)で学ぶコミュニケーションのコツ」と題してコミュニケーションにつながる表現方法を学ぶ。

3) ライフとワークが近づく場「かいしゃぱーくしおどめ」

電通に勤務する社員の子どもたちを集め、遊びと学びを伝えることができる特殊能力を持つ社員が「先生役」を担い、働く場所と子どもたちが学び遊べる場所を共存させる動き。
子どもたちの姿を眺めながら社員が仕事することができる。働く人、その子どもたち、ワークとライフが混在する現場を知りたい学生たちがそんな新しい働き方を模索する場所に集結した。

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2017年8月に開催された「かいしゃぱーくしおどめ」の会場内。会社内に子どもと大人が混じり合う。

4) キャリアの専門家が情報交換「汐留キャリアカウンセラーコンソーシアム」

「汐留を生き生きと働けるエリアにするために」と、汐留地区で働くキャリアの専門家が集まり、ある会社で実際にあった相談事を事例とした事例検討会を複数回実施。
キャリアカウンセラー、人事など、約60名が集う情報交換の場となっている。「知識と経験、各社の情報を共有した上で、キャリア支援の基盤を作り、社を越えてつながるモデルを作って行きたい」と登壇者。

5)コンテンツ未定の会合「場所だけ“汐留”に決まっている会議」

自治体職員として働く以外に地域に関わる活動を仕掛ける”塩尻市のスーパー公務員”と呼ばれる山田崇氏と電通社員とが中心となって企画している会議。
特徴は場所だけが決まっていること。内容は事前に決めておらずその場に居合わせた人によってテーマを決めるという場作りは、予定調和ではない反応がその場で生まれ、次の企画に繋がることも。次回は2月、場所を汐留から飛び出し平昌で開かれると発表もあった。

 

組織や場所を往還することが個人の成長につながる

約半年の間に多くの社会人が越境し、新たな出会いや体験をしたようだ。

インスピレーショントークに登壇した法政大学大学院の石山恒貴教授は、「個人が所属する組織を往還する、この“往還”という言葉が鍵だ。自分の居心地の良いホームから離れて、何が起こるかわからない未知のアウェイに行く。その行き来によって生まれる学びがある」と述べていた。

LifeWorkSが芽吹き始めた様々なプロジェクトの経過を聞いていると、まさにこのような越境体験がなされていた。

はじめから想いを持ち大層立派な活動をしていた、というわけではなく、2017年7月のキックオフから一歩でも半歩でもいいから、自分の頭で考えて、自分の体を動かして、自らの時間をかけて、今いる場所から違う場所へと動き始めている。

本業と越境活動は両立できるのか

しかし、彼らのように越境活動をしようと思っても、ハードルが高いように感じている人もいるだろう。さらに越境の仕方は人それぞれで、越境するフィールドを提供するサービスも多く生まれている状況を目の当たりにすると、自分には果たしてどのようなスタイルがマッチするのだろうと逡巡してしまう人もいるかもしれない。

中間報告会の後半は、越境サービスを提供している人たちと越境している人たちによるパネルディスカッションが行われた。設定された問いはこちら(一部抜粋)。

「働き方改革と越境活動に相関はあるのか」

「越境活動は本業に活きるのか」

「本業と越境活動は両立できるのか」

ディスカッションの詳細は割愛するが、社外での仕事も持ちながらソフトバンク株式会社で働く芦澤慎一氏は「越境活動によって視点が増えたり、活動の場が増えたりしている。本業と社外活動の相互に良い影響が起きている」と話し、また、Kyon.Jの名前でカメラマンという越境活動をする社員からは、「自分の好きなことをまずはやってみた。普通に好きでやっていたことが後から越境活動と言われ始めたくらい」と自身の越境活動を語った。

株式会社ビザスクの岡部菜津子氏は、1時間単位から始められる活動なので“越境学習”や“副業”という構えた感じではなく、『当たり前だと思っていた自分の知識や経験が誰かの役にたつのであれば!』という想いで価値を提供したいと感じている人が多いようです」と説明した。

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左から、原田さん、岡部さん、Kyon.Jさん、芦澤さん、ソフトバンク株式会社の佐々木さん

企業に対して社員研修の一環として越境体験を提供する株式会社ローンディールの代表・原田未来氏は、企業人事のスタンスをこう説明する。「大企業約300社と話しているが、企業側は社員が越境することに総論賛成の反応だ。しかし、実際にどの部署でやるかという段階になると、『うちは無理。人を出せない』と進まない状況に陥ることは多い。中長期的な企業目標を持っていないと越境活動を後押しできない。このような危機感や課題意識を持っている企業は早めに手を打ち始めている」という。

「価値観」が自らの越境フィールドへと導いてくれる

最後に、中間報告会で行われたワークを紹介しよう。

自分の好きなもの(趣味・特技・こだわり・マイブーム)などを記載し、「好きなもの」が似ている人やコラボするとおもしろそうな人、自分の価値観を凌駕する人など同志を見つけあってグルーピングしていく。グループができたらチーム名や好きなものを決めて一緒に取り組めそうな活動アイディアや最初の具体的なアクションまで導き出す。マグネットテーブルという手法だ。

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マグネットテーブルから生まれたチームのアイディア。2020年に向けて個人とチームでできることがありそうだ。

「越境してみたいけれど、何をすれば良いだろう」。もしそんな迷いを抱いているのなら、自分の価値観に問うてみること、そしてその価値観に合いそうな人がいる場所に行ってみることをおすすめしたい。

LifeWorkSからも、今回蒔かれた種から実が成るプロジェクトもあるかもしれない。終了後、会の余韻を楽しみ、これから何ができるのだろうか、自分は何をやるのだろうかと、そこここで輪を成し談笑する人たちが、そんな空気を醸していた。