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【前編】「危機管理のプロは、なぜ単身でイスラエルに乗り込んだのか?」はコチラ

持っている複数の名刺がうまく循環し始めた

酒井:Points of You®の会長をされていることが、本業にも活きているなと感じることはありますか? またあれば、どう活かされているのかということを教えていただけますでしょうか。

市居:自分自身の視野が広くなりましたね。本業で関わる人たちは、防災・防犯に特化している方が多いので、そこで得られる知見は限られたものでしかなかったんだなということがわかりました。Points of You®に出会って、間口が自分でも信じられないほど広くなったと思います。防災へのアプローチについても、心のケアに目を向けられるようになったり、より広い視点でサービスを提供できるようになったと思います。

実は、国際NGOの理事という三枚目の名刺も持っています。海外の紛争や災害に遭われた避難民の方々を支援する団体ですが、そこでの心のケアと災害に遭われた方々の心のケアにはリンクする部分がありますし、そのようなケアのニーズも増えてきていると感じます。

例えば、一昨年の4月にネパールで大地震が起きましたが、そもそもこれまで地震が起きないと言われていた国なので、防災や災害時の教育を受けていないわけです。今ネパールの若い人たちが国を再建していく中で、防災を強化するような取り組みを始めていますが、その中に私が入り、防災研修や心のケア、あるいはPoints of You®を用いたリーダーシップの育成など、複合的なトレーニングを実施しているところです。

酒井:今、市居さんの中で、一枚目と二枚目と三枚目の名刺がうまくリンクし、循環しているんですね。

市居:もともとつながる部分はあったのですが、複数の活動を始めたことで、全てがうまく関係しながら回り始めたところですね。

「心の貧困」にアプローチできるトレーナーを育成したい

酒井:Points of You®をこれからどうしていくのかというビジョンはあるんですか?

市居:今は、日本社会というよりも、「国際社会の中でPoints of You®のコーチング資格を持つ方々がどう活躍できるのか」ということについて考えています。

私はPoints of You®アジアの代表でもあるのですが、日本だけを市場として見るのではなく、世界中で活躍できるトレーナーを育成していきたいですね。日本だけではなく、アジアの問題も含めて解決できるようなトレーナーになって欲しいなと…。そのためには、トレーナーの方々が活躍できる環境を整えたいという思いがあります。

酒井:「アジアの中で解決しなければならない問題」というのは、どんなことなのでしょうか?

市居:貧困や災害への対応力を高めることが、大きな部分ですね。災害が貧困につながるということもありますが、単純にお金がないといった意味での貧困ではなく、「心の問題」に大きなフォーカスを当てています。

お金がないからといって全員が不幸せかというと、必ずしもそうではないですよね。一番問題なのは「心の貧困」と言われているものです。ネパールも最貧国と言われていますが、心のトレーニングをすることで変わってきている部分があります。そうしたアプローチができるようなトレーナーを世界各地に送り込んでいきたいですね。

宗教や文化を超えて大切にされるものを提供したい

酒井:本業とPoints of You®の両方を、国際的な視野で考えられているんですね。その他に、何かこれからやっていきたいことはありますか?

市居:まずはアジアの中で、宗教的な枠を飛び越えて、同じものに価値を見出す人たちが集まるコミュニティーを形成できたらいいなと思います。宗教的な課題は非常に大きな問題の一つですので、私が生きている間に叶えられるとは考えていませんが、そこに一石を投じることができればとは思いますね。

酒井:「同じもの」というのは?

市居:Points of You®がそうなればいいなと思いますが、いわゆる「共通の価値ある何か」ですね。東アジアでは価値のあるものが、西アジアでは無価値なものとして捉えられるといったことではなく、どこであっても価値あるものとして大切に扱われるような、宗教的なものや文化的なものを超えて、人々が共有できるものを提供していけたらなと思っています。

酒井:市居さんの中にこうした想いが沸いてきたのは、Points of You®に出会ったからという部分が大きいのでしょうか。

市居:そうですね。今Points of You®で抱えている課題の一つが、インドネシアでの展開です。宗教的な問題で、これまでにイスラエルから直接インドネシアへのアプローチができていなかったのですが、私がアジアを管轄するようになったため、日本からインドネシアにアプローチすることになりました。

最近ようやくインドネシアのチームが動き出したところです。それがゆくゆくはヨーロッパやアメリカなどにも通じていけばなと思っています。どこどこの国のものだから、どこどこの文化のものだからといった枠を超えて、一つの価値あるものが、同じように価値あるものとして捉えられるような世界を作っていきたいですね。

発信すること=幸せに働くこと

酒井:壮大で、素晴らしいビジョンですね。最後に、市居さんにとっての「幸せな働き方」がどんなものか、教えていただけますか?

市居:実は私自身、「幸せ」について考えたことがあまりなくて。もっと言うと、私の中の「働く」という概念が、まわりの人の「働く」という概念とは違うと感じています。

酒井:といいますと…?

市居:楽しんでやっているからということもありますが、基本的に「働く」という価値観が、私の中にあまりないんです。こうしたいという想いがあって、それを対外的に発信したときに反応してくれる人が一人でもいたら、それはもう「幸せ」なことで、「幸せに働けた」ことになるのかなと。いやむしろ、誰も反応してくれなくても、そういった状況を楽しんでいる部分もあります。“あ、これは反応あるんだ”とか、“反応しないんだ”とか(笑)。そういった楽しみがあるだけでも、幸せに働けているのかなと思います。

酒井:「発信」というところがキーワードになっているわけですか?

市居:そうですね。よく起業された方が「自分が発信すると誰かが反応してくれる」と仰っていますが、私も考えたことを自分の中であたためるということが、どうも苦手なようでして。「何が言いたいんだ?」と言われることも多いのですが、それでも発信しちゃうんです。支離滅裂なことでも、とりあえず言っちゃってる(笑)。

今は運よく、Points of You®の活動が大きくなってきたので、誰かが反応してくれるし、論理立ててまとめてくれる人もいます。でも私はそこに対してはあまり幸せを感じていなくて。支離滅裂でもいいから、思ったことをポンと話すことに幸せを感じるんですよね。

酒井:面白いですね。あまり形になる、ならないといったことにはこだわらないんですか?

市居:こだわらないです。よく「0→1が好きな人もいれば、1→100が好きな人もいる」と言われますが、私は完全に0→1を好むタイプですね。Points of You®は0→20くらいまで足を突っ込んじゃったのですが、そこまでやりたくてやったわけではなくて…。常に0を探して、それを1にすることをしたいと思っているんですよ。

物事の掛け合わせで、新しく魅力的な価値を生み出したい

酒井:その0というのは、全くないものではなくて、何かと何かの掛け合わせのような気がするのですが、どうでしょうか?

市居:おっしゃる通りです。他のツールやプロジェクトに対して、「Points of You®はこんなところが優れているから取り入れてみたら?」というのではなく、Points of You®とそれらを掛け合わせたときに、どうなるのか、何ができるのかといったことの方に興味があるんです。

酒井:掛け合わせることで、可能性も広がりますね。

市居:まさにそうです。「Points of You®の競合になるものは何?」と聞かれることがありますが、私の中には競合という物の見方はないんですよね。競合にしてしまうと、あら探しが始まってしまうので、正直あまり生産性を感じないんです。競合となり得るものにもファンがいる。じゃあその強みって何だろう? 逆に弱みをPoints of You®で補えそうかな? 強みはPoints of You®でも使えるのかな? 比較的そういったものの見方をすることが多いですね。

酒井:まさにPoints of You®に触れたときに感じたのが、Points of You®のセッションで大切にされている「YES AND」の魅力でした。「YES BUT」ではなく「AND」。お互いの良いところを掛け合わせて、新しく価値を作り出す

市居:トレーナーの方の中には、Points of You®の大ファンになってくれる方もいらっしゃいます。もちろんそれは嬉しいことではあるのですが、私がお伝えしているのは、“それだけ”になってしまうと「視野を広げる」というPoints of You®が提供する価値から離れてしまうよ、ということです。そこは常に意識しておくべきですよね。

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【取材後記】
失礼ながら(?)物腰の柔らかな青年としてのたたずまいの市居さん。そこに秘められた情熱や行動力とのギャップに驚かされるが、国や文化を超えて「価値あるもの」を伝えて行きたい、という壮大なビジョンをお聞きしているだけで何とも言えない、爽やかな気分になる。これから、どのような大胆な発信をしてくださるのか。ますます、Points of You®と市居さんから目が離せない。

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写真:布川航太
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酒井 章(TOO☆AKIRA)
一枚目では、企業の人事部門で社員のキャリア形成支援を行い、NPO法人二枚目の名刺では“ミドル代表”として「TOO(隣のおせっかいおじさん)」役を務める。その他、ワークショップ・デザイナーや大学院非常勤講師(グローバルビジネス、キャリア)としての顔も持つ「超名刺ホルダー」。現在、企業人の幸せな働き方を実現する“性善説の人事”のあり方を探求している。