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お金は「豊かさ」を意味しない?“世界でもっとも貧しい大統領”ホセ・ムヒカの人生哲学

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1日8時間、約40年続く仕事。あなたはこの仕事に何を求めますか?

お金、地位、名声……きっと多くの人は、これらを得ることで世間から認められたいという想いがあるのではないでしょうか。しかし、ある大統領は目の前の欲には目もくれず、わずかな月収で暮らし、生活費以外のお金は全て寄付にあてるという大統領らしからぬ行動で、大きな注目を浴びました。

その名は、ホセ・ムヒカ。ウルグアイ共和国で2010年〜2015年にわたって大統領を務めた彼は、”世界でもっとも貧しい大統領”と呼ばれた人物です。

「今月の一冊」シリーズ初回は、彼の言葉をまとめた書籍、「世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉 (著:佐藤 美由紀)」をご紹介。本書で語られている、ムヒカ氏の「豊かさ」の哲学は、世界中の人々を引きつけています。この本を読んで、幸せや豊かさのあり方を考えてみませんか?

【あらすじ】

・住むのは大統領官邸ではなく農場。ムヒカ氏の「質素」な生活
・お金持ちでも「貧乏」?豊かな人は物に支配されない
・セコい生き方はしない。弱者に手を差し伸べるのは当たり前
・あなたが望む豊かさって?本書をヒントに考えてみよう

住むのは大統領官邸ではなく農場。ムヒカ氏の「質素」な生活

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私は貧乏ではない。質素なだけです。(16ページ)

ムヒカ氏は大統領に在任している間、通常であれば大統領官邸に住むところ、妻が所有する小さな農場に住んでいました。農家と同じように野菜を育て、自らトラクターを運転して農作業をする。しかも月収の9割は、慈善事業への寄付などに充てているため、資産もほとんど持っていません。

乗っている車といえば、1987年製のフォルクスワーゲン・ビートル。大統領専用車は使わず、どこへいくにも自ら愛車を運転して向かいます。ある時、この車を100万ドルで買い取りたいという富豪が現れましたが、あっさり断ってしまったといいます。目先の利益にとらわれないムヒカ氏の考えがよくわかるエピソードですね。

お金持ちなのに「貧乏」?豊かな人は物に支配されない

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私たちは、欲しいものがどんどん手に入る生活こそ裕福だ、という価値観の中で生きてきました。一生懸命働いて、働いた分だけお金が入り、そのお金で欲しいものを買う。

それが豊かさのように思えますし、それを目指して働いているという人も中にはいます。もっといい物がほしい、もっと高級な車に乗りたい、もっと大きな家に住みたい…こうした願望を持つようになったら、生活のレベルも上がったように感じるかもしれません。

しかし、これこそがムヒカ氏が言うところの「貧乏な人」。

貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のことである。(22ページ)

物質的に満たされていることばかりを考えていれば、それだけたくさんの消費をすることになります。そうした大量消費社会では、お金を得るために長く働く人ばかり。

もちろん、「好きで働いているのだから問題ないだろう」という意見もあるかと思いますが、ムヒカ氏は「仕事は好きかどうかは別問題。働いていない時間こそ自由を指す」と言い、こう続けています。

物であふれることが自由なのではなく、時間にあふれることこそ、自由なのである。(28ページ)

ムヒカ氏にとっては、生きる時間=自由な時間。そこには、自分の好きなことに費やすばかりでなく、人間関係を築いたり、愛や友情を育んだりする大切な時間も含まれます。一生懸命働いて物をたくさん得るよりも、自由に使える時間が多い方がずっと豊かだという考えなのですね。

セコい生き方はしない。弱者に手を差し伸べるのは当たり前

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ムヒカ氏は自由を得るために質素な生活を望み、自身の月収の9割を寄付にあてています。弱者に手を差し伸べるということも、彼の人生哲学の一つ。

人生はもらうだけでは駄目なのです。まずは自分の何かをあげること。どんなにボロクソな状態でも、必ず自分より悲惨な状態の人に何かをあげられます。(39ページ)

こうした考えを持つようになった背景には、ムヒカ氏の幼少期の経験があります。幼くして父親を失った彼は、小学生の時から母親と二人三脚で働きながら、貧しい生活を送ってきました。また、彼の友人も貧しい暮らしをしている人が多く、そうした人々を身近に感じながら育ってきたのです。

だからこそ、余裕のある者がそうした弱者に手を差し伸べることのない状況に、悔しい想いをしてきました。そんなムヒカ氏の心中がよく表れている言葉があります。

世界が物とお金と資源で溢れているなか、人に車を貸すことも惜しみ、貧乏人に手を差し伸べず、野良犬にご飯も家もあげないような、こんなにもセコい世界は他にあるのでしょうか。神様に謝りたい。(43ページより)

自分だけが豊かならそれで良いのか、と問いかけることもなく、物質的な豊かさのためだけに生きていて良いのか?と疑問を投げかけています。

あなたが望む豊かさって?本書をヒントに考えてみよう

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本書に載っているムヒカ氏の言葉は、自身の哲学をもとに語られる生の言葉。ゆえに非常に重みがあり、私たちに大きな気づきを与えてくれます。

現代は便利な物にあふれ、物質的にはとても豊かです。一方で、めまぐるしい早さで色々な物が消費されてしまっています。消費のために長い時間働き、自由な時間を失っている場合だってあるのです。

仕事で成功し、お金があって物をたくさん買えたとしても、それが必ずしも豊かであるとは言えません。ムヒカ氏は質素を貫き、また、信念に基づいて弱者に寄りそうことで、真の豊かさを手に入れているのです。本書でムヒカ氏の言葉に触れ、自身の望む豊かさの形を、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

【著書の基本情報】
著書名:世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉
著者:佐藤美由紀
版元:双葉社
定価:本体1,000円+税

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松田 北斗
ライター
サムライト編集部