「複業フェス2017」Session2 三者三様フリーランスの働き方

2017年5月14日(日)、東京都中央区月島のシェアアパートメント「月島荘」で開催された、複業をテーマにしたイベント「複業フェス」を全3回でレポート。

「複業フェス2017」レポートは全3回!
第1部:「働き方のパイオニア企業に訊く、なぜ今『副業解禁』なのか」
第2部:「『人生100年時代』を生き抜く新しい働き方とは?」
第3部:「会社を辞めずにやりたいことにチャレンジする “複業家” の生き様とは」

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第2部のテーマは「『人生100年時代』を生き抜く新しい働き方とは?」
コンサルタント、広報、WEBとそれぞれの専門を持つ3人のフリーランサーが登壇し、それぞれの働き方を紹介。また、フリーランスとして生きることのメリット・デメリットについて語った。

1)三者三様フリーランスの働き方

ハンチング帽とメガネがトレードマークの黒田悠介さんの肩書きは「ディスカッションパートナー」。週に1回か月に2回、1回につき2時間、経営者と面談をして経営課題などを聞く。いわば「壁打ち」の相手をする仕事だ。現在7社と契約をして時間単価は2~3万円。…ということはなかなかの稼ぎになるだろう。

ワークライフバランスを重視する黒田さんは、オンとオフとをしっかりと分ける。先にプライベートの予定を入れて、後に仕事の予定を入れるそうだ。時間あたりの単価を増やすことで、週に十数時間しか仕事に充てていなくても十分な稼ぎがあるという。

前職はキャリアカウンセラー。フリーランスになった理由を「キャリアの多様性を、自分で実験したいと思ったから」と語る。「文系フリーランスって食べていけるの?」というブログで、企業に雇われないフリーランスとしての働き方を日々発信している。

このセッションの中で紅一点の女性、平田 麻莉さんは広報の専門家だ。現在4社と契約し、企業の広報PRを担っている。また、企業のエグゼクティブ向けの教材づくりに携わったり、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の代表理事を務めたりと、まさに複業家として生きている。3歳と1歳の子どもがいて、子育てとの複業という点でも働き方の挑戦をしている。

ワークスタイルは「シームレス」。広報の仕事では週末の稼働も多く、平日と休日の区別がない。家事や育児をしながら仕事の電話をかけることもあるという。

フリーランス7年目の平田さん。大学在学中から創業したてのPR会社に参画して人材会社の広報に携わった。退職後、大学院のMBAコースで博士課程まで進学。並行して母校の広報の仕事も行った。大学院在籍中に出産し、それから1年半は専業主婦。子どもを保育施設に預けられるようになってから、フリーランスで広報の仕事を引き受けるようになって現在に至る。

会社員時代は雇用の流動化や派遣切りの社会的議論のど真ん中におり、当時から個人と企業の関係をずっと考えてきた。立場は変わっても関心のテーマは一貫しているそうだ。

3人目のフリーランサーは新井一平さん。日に焼けたがっしりとした見た目の男性だ。地方の中小企業をクライアントにWEB周りの仕事をしつつ、「カレーづくりのイベント」(通称:一平ちゃんカレー)をライフワークとしている。

独立は1年半前。それまで所属していたのが、社員20名ほどのコンサル会社。地方のクライアントが多く、出張の際にはその地方に逗留し、地元の人と関係をつくってきた。1年ほど経つと地元の人たちから仕事を頼まれるようになり、独立して支援したいと思う相手が5~6社できた段階で独立し、フリーランスになることを決めた。

現在は月の20パーセントを東京で、残りの80パーセントを地方で過ごす新井さん。農業の手伝いをしながら、田んぼの畔でキーボードを叩くノマドワークを展開中だ。

2)「フリーランス」という働き方のメリット・デメリットとは?

一つの組織に雇われない、フリーランスとしての働き方を実際にしてみて感じるメリットとデメリットはどのようなものがあるだろうか?

平田さんは「好きな仕事を好きなようにできる」ことがメリットだという。いろんなことに関心を持つタイプの平田さん。自分の好奇心が向くことや、手伝いたいと思ったことの手伝いをできることがフリーランスの良さだ。会社員では個人的に疑問があっても組織の一員として担当しなければならない仕事があるのに対し、フリーランスでは自分が意義を感じられる仕事を吟味できる。それが最大のメリットだそうだ。

一方でデメリットは、フィードバックを受けられないことだという。クライアントはフリーランスに対して育成コストをかけない。マネジメントする側にとってみれば怒るのも労力。何か不足点があっても、明確なフィードバックとして返してくれることはない。常に自分を客観視し、期待以上のパフォーマンスを出す努力を続ける必要がある

新井さんは、「会いたい人に会いにいける回数が増えたこと」がメリットだと語る。時間の使い方が自由になり、静岡県の実家にも月に3回は帰って家業の手伝いをしているそうだ。

人と人との関係性が深まるかどうかは“二度目まして”が重要。だから、会いたい人にどんどん会いに行く。新井さんはこのペースだと時間が足りなくなると笑う。

黒田さんは「自由度が高いことの裏返しとして、営業も経理も教育も全て自分で抱え込まないといけない」ことがデメリットだという。また、クライアントの社長と噛み合わず報酬面でトラブルになったこともあるそうだ。自分に合うクライアントといかにしてつながるのかというポイントも、フリーランスにとって重要なことだろう。

(フリーランス ディスカッションパートナーの黒田悠介氏)

3)フリーランスに向いている人、向いていない人

それでは、フリーランスとして働くことへの向き不向き、個人の適性には、どんな条件があるだろうか。

「フリーランスかどうかはあくまで手段レベルでの話です」と前置きをした上で、黒田さんは「ポジティブであること」という条件をあげる。「死ぬ以外はかすり傷みたいなもの」「うまくいかなければ会社員に戻ればいいかな」くらいのポジティブさがフリーランスにとっては重要だという。

平田さんは、「巻き込み力」と「自分なりのビジョンを描く力」が、フリーランスに必要なスキルだという。「巻き込み力」の観点では、会社員以上にコミュニケーション能力が大事だ。上下関係があると意思の決定も伝達もシンプルに行われるが、上下のないフリーランスの立場だと頼む方も頼まれる方も丁寧さが求められる。

また、「ビジョンを描く力」の観点では、仕事をする意味や成長の方向性を自分なりの軸として持つことが必要になる。フリーになると雪だるま式に仕事は増えることもある。自分の軸がないとフラフラしてしまう。一貫したビジョンをもって、自分自身が仕事を通して成長するイメージを描けるかどうかが重要だ。

フリーランスとしての名刺を一枚も持っていないという平田さん。外注を受けるのではなく、所属している会社がいくつもあるという形だ。広報領域に限定せず、クライアント企業の社内会議やチャットにも参加しているそうだ。「インサイダーとして互いに何でも言い合える関係性を意識しています。たまたま雇用形態の違いがあって掛け持ちをしているだけで、同じチームの仲間なんです」と語る。

新井さんは「人を巻き込む力」は重要としつつも、相手の不安に深く入り込み過ぎないことも重要だという。ストレスをためずに仕事ができるのは、どこかで一線を引いて、一歩引くからだ。クライアントと同化せず、外部の目線を持っているからこそ自由に言えることがある。そして、ワークスタイルとして健全でいられる。仕事のことを全く考えない時間も意識的に作っているそうだ。

(株式会社瞬 代表取締役CEO/アマチュアカレーグランプリ優勝者の新井一平氏)

4)フリーランスの3人が今後挑戦したいこととは?

「フリーランス」という概念ではまとめられるものの、三者三様の価値観と働き方をしている3人。それぞれ、今後どのようなことに挑戦しようとしているのだろうか。それは、平田さんのいうところの「軸」だと言えよう。

黒田さんはこれまで「キャリアの自立性」をテーマに、一つの組織に依存するのではなく複数の組織と関わって働くワークスタイルの普及に取り組んできた。

その流れの延長として、今やろうとしているのは「キャリアのつながりを滑らかにする転職サービス」だ。「フリーランス」と「正社員」、転職者が自分で選べるマッチングのシステムを作り、「フリーランス」と「正社員」の行き来をしやすくしようとしている。

平田さんは広報の仕事を減らし、フリーランス協会の活動の比率を高めようとしている。生まれたばかりのフリーランス協会の活動を軌道に乗せることが、さしあたっての目標だ。

そしてフリーランス協会として、次のようなことに取り組んでいく。

・フリーランスの事業及びキャリア形成支援(ネットワークづくりやコワーキング・会計法務などの支援)
・フリーランスの労働環境改善・向上に向けた仕組み構築(損害賠償保険や福利厚生サービスの提供)
・フリーランスの実態理解促進のための啓発活動(フリーランスの実態調査、政策提言を含む)

(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事の平田麻莉氏)

新井さんは自然志向。農家民宿とコワーキングスペースを掛け合わせた「リトリートワークスタイル」という働き方を作ろうと模索している。例えば八ヶ岳で仕事ができる場所を作るなどだ。

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読者の皆さんの中にはフリーランスという生き方を自分ごととして捉える人もいれば、そうでない人もいるだろう。もちろんフリーランスになることが万人にとっての最適解ではない。

「フリーランス」になるならないは、あくまで「手段」レベルの話であって、平田さんの言うように重要なのは「何を人生の軸に置くのか」ということだ。会社員として組織に身をおくことに合理的な理由があれば会社員でいればいいし、やりたいことが独立しないとできない(あるいは独立した方が自然)と考えるのであれば、フリーランスになるなり起業するなりすればいいだろう。

少なくともフリーランスとして生きている3人の存在は、フリーランスとして生きることへの漠然とした不安を解いてくれるのではないだろうか。「会社を辞めたら死んでしまう」と思っている人にこそ、この話が届いて欲しい。

今回は働き方がテーマだったが、働き方を語ることはまだ第一段階なのではないだろうか。その先に、ひとりひとりのビジョンの話ができる、実現したい夢の話ができる、そういう次元にまでシフトできたなら、より生き生きとした表情の人が増えるのではないだろうか。

続く

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大竹 悠介(おおたけ・ゆうすけ)

大竹 悠介(おおたけ・ゆうすけ)

ライター・編集者。まちづくりNPOなどで広報・イベントディレクション等を含む複業を実践中。早稲田大学大学院にて地域ジャーナリズムを研究した後、広告代理店を経て現職。2拠点居住やサテライトオフィスなど地方を舞台にした新しいライフスタイルに関心がある。