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「社員が組織を越える価値を実証する」イベントレポート【後編】

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2017年8月1日、NPO法人二枚目の名刺は「社員が組織を越える価値を実証する」と題してフォーラムを開催した。前回に引き続き、白熱したフォーラムの第2部のデータにおけるトークとディスカッションに焦点を絞る。

前編はこちら

越境活動をどのように展開していくか

第2部の後半は、法政大学大学院の石山恒貴教授(いしやまのぶたか 以下、石山教授)をモデレーターに、株式会社リクルートキャリア古賀氏、松井とのディスカッションが行われた。
社外活動を本人の成長・変化につなげるためには、どのように行動すればよいか
サンカクの研究調査から導き出された、越境活動における3つの結論を軸に、議論が展開された。

イベントの様子

100人を超える参加者が見守る中ディスカッションに移る石山教授、古賀氏、松井

越境活動には、どんな内容が適しているのか

石山教授:調査結果から、社外活動をする際には、いろいろな人と影響を与え合うことが非常に重要になってくると考えられます。越境活動をする際には、具体的にどんな内容が重要とお考えでしょうか。

松井:活動の中で、メンバー同士の本音でぶつかりあえること、他者からのフィードバックを受けることによって自分の考えが変わる、という側面が非常に重要と考えます。例えば、二枚目の名刺が実施するNPOサポートプロジェクトでは、「実践とアクション」に重きを置いています。ただの勉強会や交流会ではなく、多様な背景を持つメンバーが一緒のチームで物事を動かすことを実践することが大事で、それを通じてお互いの考え方の違いを感じ、自分自身の視野を広げ、発想の変化を実現できると感じます。
私自身、サポートプロジェクトのメンバーには時として非常に辛辣に聞こえるフィードバックをすることもあります。それは本人にとっては辛く感じることもあるかもしれませんが、それが「ひと皮むける」体験につながっているのではないかと考えています。

サンカク古賀氏と二枚目の名刺松井

石山教授の質問に答える二人。左:サンカクの古賀氏、右:二枚目の名刺、松井

古賀氏:「ただ取り組んでいるだけ」ではいけないと思っています。サンカクの活動を広げる中でも、昨年から、サービス参加者に対して、参画先の企業からのフィードバックを提供するケースを実験的に始めています。「やって終わり」にしないことが、活動を有用にさせることにつながると思っています。
また、私自身、数年前に二枚目の名刺のNPOサポートプロジェクトに参加して、NPOの支援の中でWEB広告の出稿を担当しました。当時はエンジニアの仕事をしていましたが、普段の仕事とは違って、エンドユーザーがダイレクトに反応してくれる様子を見て、その効果を感じることができたのは大きいことでした。そこから、自分が社会に対して影響力を与えることができる実感と、それについて他者からフィードバックを得るという形で、お互いに影響を「与え合う」ことが重要だと感じました。

本業と越境活動との関係はどう作っていくのがよいか

石山教授:調査結果から、越境学習の効果は、「本業で当事者意識を持って取り組んでいる人」に非常に顕著に表れています。本業(1枚目の名刺)と越境学習(2枚目の名刺)との関係はどのように作っていくのがよいと考えているのでしょうか。

松井:1枚目の名刺で主体的に頑張っている人が2枚目の名刺でも積極的に取り組む人は多いという印象を私は持っていますが、重要なことは1枚目と2枚目の循環なのだと思います。1枚目での経験を持って2枚目にもチャレンジする。2枚目での新しい経験を1枚目にも還元する。そんな風に、1枚目と2枚目でそれぞれの経験を“循環”させることが、自身の能力開発やキャリアに自信を持つことへつながるのだと思います。

石山教授

古賀氏、松井にグッと深い問いを投げかける石山教授

石山教授:そうすると、少し意地悪な質問になりますが、本業で頑張っている人・実績を上げている人じゃないと、越境学習に参加してはいけないのでしょうか。

松井:よく聞かれる質問ですね(笑)。例えば、本業で頑張っている中でも、そこではどうしても組織のミッションに応えていくことが優先され、与えられたミッションをきちんと実施することを評価されることが多いでしょう。一方、2枚目では、「自分はこういったことに携わりたい!」という個人的なテーマ、例えば「国際協力」や「女性・子育て支援」など、自分の大事にしている価値観を反映しながら活動できることがあると思っています。1枚目と2枚目にはそんな風にテーマや価値観の違いがあるのかな、と考えています。

古賀氏:これまでに僕がお会いした人たちの中に「社外活動をする前に、まずは本業を頑張れ」と言う人は確かにいて、僕自身もそれが全く間違っているとは思っていません。ただ、本業にどのように関わっているとしても、本業からだけでは得られないことを社外から得られる可能性があるということもまた事実だと言えると思います。

どんな目的・動機で越境活動を実施していくのがよいのか

石山教授:また意地悪な質問になりますが、現在の本業に対する不満から、キャリアチェンジのために越境学習に取り組むことは「よくないこと」なのでしょうか。私自身、会社員だった時に何度も転職していますので、「よくないこと」と言われると何となく抵抗感があるのですが……。

松井どんな動機で参加することが良いのかは、社外活動の内容によるのかな、と考えています。本業の不満から社外活動に参加することを否定はしません。 例えば、二枚目の名刺の活動の場合では、副収入が欲しくて参加している人は非常に少ないですし、本業に不満があって参加するというよりも、社会貢献への意欲を持っている、社会への熱い思いを持っている人が多い印象を受けています。

返答する古賀氏と松井

石山教授の質問において、返答しながら参加者に応える二人。

古賀氏:まず、僕の一個人の意見として、働く上で“キャリアに対する自信”を持てているかどうかが大切だと考えています。それを持っていることによって、自分のキャリアやその選択を能動的に向き合うことができ、個人が組織に依存することなく幸せになれるのではないかと思います。
今回の調査結果でも分かったように、そのためには「本業に対する不満からキャリアチェンジのため」だけではなく、ポジティブな動機を持って越境学習や社外活動に取り組むことがその個人の幸せに繋がるのではないかと思います。その観点では、本業にこだわらず「社外活動にまず取り組んでみる」という姿勢でもいいと考えています。
今回の調査結果では、社外で人に影響を与えることができれば、それが本人の意識を変化させる可能性を示唆しています。結果、本業へ還元できることもありますし、本業へのやる気を取り戻すことにつながる場合もあるでしょう。大切なことは、本業に限らず、自分の中でいくつもの選択肢を持っていることではないでしょうか。

松井:今の古賀さんのお話を聞いて「越境学習の方法には、いろいろなやり方があっていい」と思いましたね。二枚目の名刺のNPOサポートプロジェクトは、3〜4か月の間、しっかりと取り組みますが、サンカクのような、もっとライトな形で越境学習できる場があってもいいのだと感じました。
また、二枚目の名刺・サンカク以外にも、越境活動を展開している組織はいくつもあり、それぞれ違いを持っています。さまざまな動機を持っている方々が、自身の動機や目標にあった形で、越境学習を実践できることが必要なのでしょう。

フォーラムから浮かび上がる展望

予想以上に多くの参加者が集まった今フォーラム。会社に持ち帰って検討するためだろうか、多くの参加者が熱心に、発表者の話をノートにメモし、スクリーンに映されたスライドの写真を撮っている姿があった。フォーラムの終盤、立食のネットワーキングでは、参加者同士で名刺を交換する姿が。これが越境活動のよききっかけになることを願う。

本フォーラムで登壇し発表された3社(ギャップジャパン・パーソルキャリアホールディングス・NTT西日本)をはじめ、越境活動への取り組みが深化していることが感じられる場となった。また、越境活動に関する、2つの異なる調査結果を通じて「越境学習の効果」が定量的に示されたことで、今後の推進力が高まったと言えよう。より高い説得力を持って、活動の意義を説くことが可能となる。
しかし、これらはまだ「小さな一歩」に過ぎず、前例のない中、試行錯誤で進めている部分もたくさんある。
実際にフォーラムに足を運んでくれた方だけではなく、越境活動に関心を持ち、このリポートを読んでくださった皆さんとも力を合わせ、個人、組織双方に活動の輪をさらに広げていきたいと考えている。

(後編終わり)

写真:海野千尋

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ライター

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編集者

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カメラマン

カメラマン

佐野俊輔
ライター
農業系の専門紙で長らくキャリアを積んだのち、デンマークに留学。帰国後は、別企業でキャリアを継続させる。関心事は、「人生の中でできるだけ多くの選択肢を持つにはどうしたらいいか(年齢にとらわれず!)」
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