社員が組織を越境して活動することはどんな効果があるのか?前編

2017年8月1日「社員が組織を越える価値を実証する」と題して、コクヨ株式会社のご協力を得てコクヨ品川ライブオフィス ショールーム5Fスタジオにてフォーラムを開催した。定員50名を大幅に超える100名以上が参加を希望し、並べられた椅子が埋まり尽くした様子は、企業における越境学習に対する期待やパラレルキャリアへの関心を感じさせた。

「二枚目の名刺 企業向けフォーラム2017:社員が組織を超える価値を実証する」イベント概要

社外から飛び出すことによってキャリア意識に差ができる?

第2部は、当団体松井より二枚目の名刺NPOサポートプロジェクトによって見えた越境学習の価値をお伝えした。
今回の調査における概要は、プロジェクト参加者に事前・事後・3か月後と合計26回におよびインタビューを実施し、自己評価・他者評価のアセスメント後、効果を定量的に検証し分析をしていったものだ。
松井がプレゼンテーションした内容は、本webマガジン内の「越境学習を科学する」という記事が微細にまとめているためそちらに譲る。

NPO法人二枚目の名刺「サポートプロジェクト」とは?

#越境学習を科学する・全5回連載

登壇するNPO法人二枚目の名刺松井

NPOサポートプロジェクトという越境学習の機会を通して得られた調査情報をプレゼンテーションする松井

今回のプレゼンテーションにおいて、松井は特出した形で以下の参加者に語りかけていた。
「NPOサポートプロジェクトを通じて能力開発や人材育成を実施する際、ポイントは大きく3つあります。1つは『越境さえすれば成長できる!』というわけではないこと。2つ目は、本人が普段の業務で課題に感じていることは、越境を通じた成長ポイントになり得ること。最後に、越境学習のその後、本業の環境下で自分自身の内省や他者からのフィードバックなど気づきを促せる機会が重要であるということ」。

NPOサポートプロジェクトを通じた人材育成/開発のポイント

画像越境学習を実践するまでに個人と組織何を準備しておくべきなのかということと、越境学習後に個人と組織でどんな振り返りを行う必要があるかを端的にまとめている。

前提として本人が現状の自分の能力を把握していなければ、越境学習をした変化を感じることはできないし、それは当事者だけで行うものではなく、本人とそれを客観的に見る組織とで、把握・実践・検証していくことが重要であることがわかる。
越境学習を通じて個人の成長や組織のイノベーションを実現するには、人材に対してつぶさに観察し続ける行為が大きいのだという理解と共感を参加者から得られていた。

パラレルキャリア・社外活動が個人のキャリア意識にどのように影響しているか

登壇する株式会社リクルートキャリアサンカクチームの古賀氏

画像サンカクのロゴTシャツを着て登壇する古賀氏

次に、会社員の社外活動を支援するサービス「サンカク」を運営する、株式会社リクルートキャリア サンカクチーム古賀敏幹氏(こがとしき 以下古賀氏)が「副業を含む社外活動がキャリア意識に与える影響」と題してサンカクと二枚目の名刺の協働リサーチ結果*1を紹介した。

「今は『社外に出ていきましょう』という個人向けのサービスもあれば、人材育成のために企業向けとして提供しているサービスもあり、コンセプトや目的も多様化してきています。そのため、この領域に興味を持ち始めた人にとっては、期待する結果を得るためにどんな活動を選択すべきなのか、判断が難しくなってきているのではないかと思います。そこで『どんな社外活動をすると、どんな結果を得られるのか』ということを、データに基づいて解明し、説明したいと思いました」。 検証したポイントは個人のキャリア意識の変化。社外活動が個人のキャリアや意識、アクションに対してどのように影響するのかに焦点を当てた。

仮説として導き出していた、『社外活動に参加する目的』・『従事する社外活動の特性』・『本業の取り組み方』の3つのカテゴリが、キャリアに対する自信に影響すると仮説をおき、どう影響を及ぼすかを見つけるため細かな因子を抽出した。

「例えば、『社外活動に参加する目的』の1つ目の因子は、“キャリアチェンジの機会探索”。本業に対して何らか不満があったり、本業だけだと補えない何かを探していたり。2つ目としては“新規の経験・人脈獲得への期待”。新しいチャレンジをしたい、新しい何かに繋がる人脈を得たいという目的です。3つ目が、誰かの役に立ちたい・誰かの課題を解決したいという“社会貢献への意欲”、4つ目はもっとお金が欲しいという思いに繫がる“副収入への意欲”。この4つに分かれました」。 詳細は以下のスライドに記載する。

調査結果①因子分析の結果

画像「社外活動に参加する目的」と「社外活動の特性」。合計7つの因子を可視化。質問事項200項目をカテゴライズ化したものだ。

調査結果②因子分析の結果

画像「本業の取り組み方」と「キャリアに対する自信」。合計4つの因子を可視化。

調査結果は、それぞれの要素がどのように個人のキャリアに対する自信に関連しているのか、因果構造を可視化したもの。実線はプラスの影響、点線はマイナスの影響を示し、数値は影響力の強さを表す。

因果構造の調査結果

例えば、このスライドから分かることの一例として。赤色の“他者と影響を与え合う機会”という因子がキャリアに対する自信(黄色の「社内で活躍できる自信、社外でも活躍できる自信、転職の機会」にすべて繋がっており、“新規の経験や学びの機会”という因子はキャリアに対する自信(黄色)に繋がる実線がない。

他者と影響を与え合う機会があることによって個人のキャリアに対する自信が深まる。これは本来当たり前のように聞こえる言葉だが、まさにそれが構造的に可視化された検証結果になっている。

このように、抽出された要素がそれぞれどのように関連しているかを構造分析し、個人のキャリアに対する自信について3つの結論を導き出した。

1:社外で「お勉強する」というだけではダメ!

「『社外活動の特性』の中でも“新規の経験や学びの機会”から『キャリアに対する自信』の因子には影響が出ていないんです。わかりやすい例を言いますと、資格を取るとか新しい知識を得るとかそういう勉強をしていたとしても、それを通じて何か外からフィードバックを受けたり、逆に誰かに影響を及ぼすような機会がないと、自分が“社外に出ても活躍できる”という自信に直接につながらないということ。それが見えてきました」。

2:本業も当然頑張らなきゃダメ!

「“仕事における当事者意識/主体性”は『キャリアに対する自信』のすべての因子にプラスの関連があることがわかりました。当然のことかもしれませんが、本業に対して当事者意識/主体性を持って取り組む人は、キャリアに対してちゃんと自信を持っている人が多い。しかし、今回の調査で分かった特徴的な点として、“他者と影響を与え合う機会”という因子から“仕事における当事者意識/主体性”という因子へのプラスの関連性が見られたということです。つまり社外活動を通じて他者と影響を与え合う機会を得ることで、本業においても当事者意識を持って取り組むようになるということが構造として見えてきたわけです」。

巷には『ラーニングロマンチスト』という言葉もあるが、外ばっかりに目を向けていてはダメで、社外活動を本業に還元させるためにどんな取り組み方をすべきなのか、それを示唆する結果が得られたと言える。

3:何かに不満を抱えた社外活動じゃダメ!

「社外活動に参加する目的として、“社会貢献への意欲”や“新規の経験・人脈の獲得の期待”という要素があると、“他者と影響を与え合う機会”への関与する数値も大きい。そういったポジティブな目的をもって社外活動に参加することによって、結果、本業に対しても良いフィードバックが返ってくることがわかってきました」。

松井、古賀氏双方から越境学習における人材育成のポイントや、個人が得られるキャリアに対する意識の向上など数値を元に伝えたプレゼンテーションは、多くの参加者の頷きとメモを走らせたりスライドを撮影したりというアクションに導かれていた。

後編は、第2部の後半に行われたディスカッションの模様をレポートする。

 

*1今回の調査についての概要
(方法)社外活動経験者700人・未経験者約300人計1,000人に質問事項200項目をカテゴライズ化してアンケートを実施。統計後、因子分析により因子を抽出。抽出された因子について、因子間の関係を共分散構造分析し検証した。
(社外活動とみなすもの)①副業 ②ボランティア活動 ③プロボノ活動 ④趣味やサークル活動 ⑤地域のコミュニティの活動 ⑥勉強会・ハッカソン ⑦自社内の机の下の活動 ⑧異業種交流会
(前提)本調査前に、社外活動を経験したことのある30名にアンケートを実施し「①社外活動に参加する目的」「②社外活動の特性」「③本業の取り組み方」の3つが、「キャリアに対する自信」に影響を及ぼすと考え、仮説を設定。

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写真:海野千尋

(前編終わり)

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佐野俊輔

佐野俊輔

農業系の専門紙で長らくキャリアを積んだのち、デンマークに留学。帰国後は、別企業でキャリアを継続させる。関心事は、「人生の中でできるだけ多くの選択肢を持つにはどうしたらいいか(年齢にとらわれず!)」