公務員による2枚目の名刺の活動が〝三方良し〟の効果をもたらす理由とは?~2枚目公務員 江上昇さんインタビュー(後編)~

インタビュー前編「新しい時代に求められる公務員像と2枚目の名刺の必要性とは?」は>こちら

2枚目の活動が個人、組織、地域に与えるメリットは?

金治:2枚目の活動が、江上さん(個人)にとってよかったことを教えてください。

江上:仕事では絶対に得られなかった知識やスキルを得られたことです。例えばファシリテーションスキルは、役所の外で活動する中でその大切さを感じ、5~6年前から学び始めました。当時役所の中では重要視されていなかった、マーケティングやデザインの必要性を感じることもできましたし、同時に関わった「プロボノ」の取り組みでは、民間企業の方と一緒に活動することで、民間の視点からの情報を得ることもできました。

それから外に出ていると、役所の良さもわかるんですよね。良さを生かしつつ、役所の足りないところを補って和らげることで、バランスをとっていければと思っています。2枚目の活動をして外に飛び出す人が増えると、役所全体のバランスがとれてくるのでは、と思っています。

あと、人との出会い自体にも価値がありますね。自分の人生観や価値観が変わる出会いもあります。外で活動している人から得られた刺激や知識は、後々自分にとって財産になっています。

公務員x2枚目の名刺プロジェクト

金治:一方で、2枚目の活動が役所(組織)に与えるメリットは何だと思われますか?

江上:役所に対しては、多様性や異なる価値観を持ち込めることだと思います。役所の中だけの情報で考えていては、役所の中から見た最適化になってしまいます。市民から見た必要性や価値は、役所の中から見たそれとは異なることもあります。

例えば役所では、上司に説明するために分厚い資料を作成したりしますが、口頭説明のみで済むものなら、その資料を作成する時間は必要ないですよね。内部用の議事録とかでも一言一句正確だったりしますが、概要で十分でしょう。簡素化できればその時間を地域のために使ったり、超過勤務手当を削減したりできる。

私が市民なら、簡素化できる内部の事務は簡素化してくれ、と思いますよ。そういう価値観を持ち込めることは、役所にとってもメリットだと思います。外の感覚がわかると、役所のズレに気づけます。

また先進的な情報を得ることができたり、今から必要とされるものをいち早く感じられることにも、価値がありますね。

金治:では、2枚目の活動が地域に与えるメリットは何でしょうか?

江上:役所に求められる価値観や、市民の本音がわかることですかね。
「あんたみたいな公務員初めてやわ」と言われることもあるんですが、それって公務員に対してネガティブなイメージを持っているからですよね。極端な表現をすると、地域にとって役所は「要求する相手」であり、役所にとって地域は、「なんとか理由をつけて要求を断るもの」という対立構造が何十年も続いてきた。でもその関係性はお互いにとってデメリットだと思っています。

今求められているのは、役所が地域と同じ側に立って、同じ方向を向いて、同じ価値観で、最適化された答えを一緒に探すことです。それって役所の中にいるだけでは無理で、地域に出て、同じ価値観や空気感を共有した上で話して初めて、対立ではない、同じ方向性を向いた関係性を作れると思うんです。

「お金ないんですよ、どうしましょう? 道路だけなおしときましょうか?」「そうやな、お金ないのわかってんで、一緒に頑張ろう。」という関係性を作れれば理想であり、そこに至るために必要なのが、2枚目の名刺なのかな、と思っています。

個人にとってのメリット 組織にとってのメリット 地域にとってのメリット
・知識
・スキル
・人との出会い
・役所の良さがわかる
・多様性・異なる価値観を持ち込める
・役所のズレに気づける
・先進的な情報を提供できる
・役所に求められる価値観や市民の本音がわかる
・対立関係ではなく共生関係を作れる

2枚目の名刺の活動からいろんなものが切り開けていく

金治:最後に、2枚目の名刺を持ちたい公務員へのメッセージをお願いします。

江上:役所に入って、自分のやりたかった仕事ができないときや、思ったイメージと違うときのほうが多いと思うんですが、その仕事をなんとなく40年やるのかというと、そうじゃないと思うんです。

与えられた仕事はもちろん頑張った上で、仕事ではない自分の関心のあるものからアクションを起こせば、すごく成果が出たり、うまくいったり、人脈が広がったりすると思うんです。そうすると自分もスキルアップして、結果として仕事に活きてくることも多いです。身につけた能力やスキルが見込まれれば、その能力を活かせる人事配置があるはずですし、自分の希望に近い仕事ができれば、仕事での成果も自然に伴ってくるのではないでしょうか。2枚目の名刺の活動からいろんなものが切り開けていくと思うんです。

今の仕事に違和感や不満があるなら、その部分はプライベートでやればいいんじゃないかな、と。多少時間はかかっても、自分にとってのメリットにもなるし、周りの人にも喜んでもらえます。

それからその一歩は何も難しいことではなくて、関心のあるイベントなどに顔を出していると、そのうち誘われたり、主催側に回ったりすることになります。それを10年間続けていると、役所の中だけでは得られないネットワークや友達、立ち位置ができていると思うんです。

仕事でできなければ、プライベートでやったらいい。
まずは、ちょっと面白そうだな、と思うイベントなどに参加してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

金治:本日は、ありがとうございました!

公務員x2枚目の名刺プロジェクト

【インタビューを終えて】

抑圧的な家庭と高校に育ち、高校時代はご両親のことも学校のことも嫌いだったという江上さん。当時は大学に合格するのが人生の目標だったため、「合格したら目標がなくなってしまった」と話していたが、お笑いが好きで、お笑いのサークル(いわゆる落研)には毎日通っていたのだとか。
「お笑い芸人としては真面目だった。」とご自身でおっしゃる通り、インタビューからも終始真面目な印象を受けた。

真面目な江上さんがなぜそこまで“お笑い”に惹かれたのか疑問に思ったが、インタビュー中、同席いただいたご家族からの鋭いツッコミに笑顔で応じる様子を見ていて感じたのは、江上さんにとってお笑いは、家族とご自身が笑顔になるための大切なツールなのかな、ということ。

きっとこれからも持ち前の真面目な性格と大好きなお笑いを掛け合わせ、三方良しの活動を通して公務員の世界のバランスをとりながらご活躍されるに違いない、そんな風に思った。

The following two tabs change content below.
金治 諒子

金治 諒子

公務員×2枚目の名刺プロジェクトメンバー。 母であり、妻であり、プライベートで社会活動に携わる姫路市職員。孤独な子育てを経験し最愛の子ども達の前で笑えない日々を過ごす中で、社会と自分の在り方に疑問を持ち、地域に飛び出すようになる。子ども達の世代まで持続可能な繁栄を願う。そのためにまずは、母自身が自分の人生に主体性を持って行動する。