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「新しい働き方」の最前線が集まる場所-DODAソーシャルキャリアフォーラムの現場から【前編】

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昨今、自然環境・貧困・高齢化社会・教育などを含めたさまざまな社会課題を解決するために取り組む事業のことを指す「ソーシャル・ビジネス」という言葉が生まれ、一般的にも知られるようになってきました。

ソーシャル・ビジネスに取り組む企業やNPO団体などに関わり、その場所で働くことを「ソーシャルキャリア」と呼び、総合人材サービス、パーソルグループのパーソルキャリア株式会社(旧:株式会社インテリジェンス)は2016年3月からフォーラムを開催してきました。

「『社会を変える』を仕事にする」というタイトルの下、職員・プロボノ(社会人が自身の専門分野や知識、スキルを活かしておこなう社会貢献活動)を募集している企業・NPO団体などをおおよそ20社集め、転職を希望している人、プロボノで関わりたい人、ソーシャルセクターそのものに興味がある人などが、すでにそのような場所で働く人たちと直接に対話し、マッチングする機会となっています。

2017年は、3月に大阪、7月に東京で開催ということで、フォーラムの現場に足を運びその熱気を体感してきました。

目の前に支援を必要とする人がいる。
そこにどんなサポートをするか。それが私たちの仕事。

発達障がいがある子どもを支える仕組みを作りたい。
アジアの発展途上国で教育機会に恵まれない人たちを支援したい。
東北地域で若者がこの地域を受け継ぎ担えるように育みたい。
虐待や貧困によって支えのない子どもたちを助けたい。

「課題がある」「困っている人がいる」「支援を必要とする人がいる」
それぞれの団体は、その現場を知り、対象としている人に向けて課題解決の具体策を見つけ、提案と実行を繰り返しています。

25団体が、自分たちが今どんな社会課題を解決しようとしているか、そしてどんな人が団体に必要かということを伝えるプレゼンテーションを行いました。
中でも今回は3つの特徴ある団体をご紹介したいと思います。

 

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プレゼン後のマッチング時に希望者に話を伝えている安田祐輔(やすだゆうすけ)さん

1)株式会社キズキ(以下、キズキ)

キズキは現代にて増加傾向にある中退・不登校となった学生に対して個別指導する学習塾の運営を中心に活動しています。その他に大学や専門学校から中退してしまう学生への予防支援事業や、新宿区での若年者就労支援事業など、若者を中心に教育のサポートを行っています。
元々はNPO団体としてスタートしたキズキですが、その後NPO団体と株式会社と2つの事業展開にわけ、組織体系を分けるからこそできるサポートの厚みを作っています。

プレゼンテーションにおいて、「残業を減らす」という働きやすい環境づくりを追求した社内の取り組みだけではなく「この組織で働くことによってどのようなキャリアプランが見えるのか」ということを、実際に働く内容とフェーズごとに分け明確にしていました。
「我々の企業ではこんなスキルを持つ人を求めています」ということだけではなく、「働き関わってくれるあなたにはこんな風に成長できるステップがあります」ということがあると、社会課題を解決するという熱意だけではなく、自分自身がこの事業に関わることでどう成長していくかの道筋も見えてきます。

「何度でもやり直せる社会を創りたい」とミッションを掲げる会社だからこそ、関わり始めようとする人たちとの未来をも見据えていることが理解できました。

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プレゼンテーションでは参加者との掛け合いがあり会場を沸かせた。プレゼンテーターは木村彰宏(きむらあきひろ)さん。(以下、木村氏)

2)認定NPO法人Teach For Japan(以下、TFJ)

「この中で『教育』を受けたことがあるよ!という方は手をあげてください」。
「この中で今の『教育』に課題があると感じている方は?」
「この中でその課題に一歩でも行動したよ!という方は?」
こんな質問からプレゼンテーションをスタートしたTFJは、教育の現場に優秀で情熱のある人間を2年間教師(フェロー)として赴任させ、子どもたちには時代を切り拓く刺激を与え、教師や学校機関には多様な考え方によって学校・教育文化へも影響を与え、変革を起こしていくことをプログラム化し運営している団体です。

プレゼンターである木村氏ご本人が、株式会LITALICOという幼児教育や障がい児への支援事業、障がいをもつ人への就労支援などを主事業とする会社に勤務しながら、TFJでも採用を担当するという働き方をされています。

組織においてすでに兼業・副業を含めた「多様な関わり方」という形で実践者がいることは大きな特徴だと思いました。

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全員がプロボノとして関わる組織の在り方を発表する理事の横山正宏(よこやままさひろ)さん

3)認定NPO法人Living in Peace(以下、Living in peace)

「メンバーが全員プロボノで休日や平日の夜の時間を使って団体の活動をしています」
認定NPO法人Living in Peaceは「働きながら、社会を変える」というモットーを掲げて活動しています。
お金を借りられない人々に小口の金融サービスを提供するマイクロファイナンス機関への支援を行う世界の貧困削減を主軸とした活動と、児童養護施設の建替支援・児童養護施設を退所後に進学する子どもに対する奨学金支給など国内の子どもの貧困解決を主軸とした活動の2つを主な事業としています。

メンバー全員が本業の仕事を持ち、それとは別にこのLiving in Peaceに関わっているという形態が他の団体にはない唯一の組織の在り方でした。
ビジネスとして企業として社会とつながる場所があるからこそ、その知見・経験・実践をNPO団体にフィードバックできる、という強みを生かしていると感じます。

募集された業務内容は、経営企画・事業開発から、プロジェクトマネージャー・コーディネーターや渉外担当といった外部と関わるポジション、事務局運営・経理などバックオフィスとして支えるものまで多岐にわたっていました。その中でも「ファンドレイザー」という資金調達を担うポジションがあることは、この業界ならではであり、そのニーズの高さを実感しました。

日本の今は社会課題が山積み。
でも、だからこそ、転換期である。

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「自分が仕事で関わる中でも社会課題があるとわかりました」。と清水凛(しみずりん)さん。(以下、清水さん)

「海外にいたとき『日本はこんなに社会課題があるんだ』と気付きました」。
仕事を通して教育・医療にも問題があることを理解し始め、ソーシャルインパクトという言葉を耳にする機会が増えてきたと話してくれた清水さん。
「先駆者が集まるこの場所に今日は来てみて、小さなところからでも社会課題を解決していくことに自分から携わっていこうと思えた」。と強くうなずいていました。

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1本のメルマガから今回のフォーラムを知り行動につなげた富永周也(とみながしゅうや)さん。(以下、富永さん)

「インターンや転職などいろいろな働き方がある中で、今日初めて『プロボノ』という言葉を知りました」。
都内でメディア関連の会社に勤める富永さんは、ご自身もメディアを通して社会と触れる機会が多く、またご家族にある課題と重なることもあり、自分ごととして社会課題というテーマに向き合い始めたと伝えてくれました。
新しい働き方として再考する機会としてこの時間を受け止めているようでした。

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多くの参加者が各団体の元に集まり個別にコミュニケーションをとっていました。

ソーシャルキャリアフォーラムを見て感じるのは、このセクターが内包するさまざまな働き方の可能性でした。

この場所で社会課題解決に関わることは、社会を変えることに関わるだけではなく、自己成長を実感できること。
組織内で当たり前に兼業・副業をしている人がいること。
今ある自分の仕事を続けながら、社会課題を解決するために時間とスキルを使ってプロボノとしてもう一つの場所に関わっていくこと。

日本の働き方改革が前進しようとしている中、もしかしたらこのソーシャル・ビジネスの業界こそ、すでに多様な働き方が小さな組織の中でいくつも動いていて、改革の現場の最前線なのではないかと思える、そんなフォーラムの様子でした。

次回はこのフォーラムを立ち上げたパーソルキャリア株式会社の竹内麻衣さんに、なぜこの場所を作ったのかその原点と彼女の想いにフォーカスを当てます。

(続く)

撮影:ハラダケイコ

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海野 千尋
ライター
2枚目の名刺webマガジン編集者。複数の場所でパラレルキャリアとして働く。「働く」「働き方」「生き方」に特化した取材、記事などの編集・ライターとして活動している。