ワーキングマザーが本業外で新規事業のリーダーに。ダイアナが社員のチャレンジを後押しする理由

女性のプロポーションメイキングの総合コンサルティングをおこなう、株式会社ダイアナ

2018年7月、公益社団法人日本青年会議所日本創生グループ事業創造会議が主催するビジネスコンテスト「地域未来投資コンテスト」にファイナリストとして出場し、子ども向けの食育事業『こどもの食を救う、スクール!「食スク」』のアイディアで特別賞を受賞した。

「食スク」は、管理栄養士を招いた食育講座、調理体験、共食、礼儀作法・マナーレッスンなど、単なる調理や食事にとどまらない、子どもの礎となるような食育をおこなう取り組みだ。

事業の中心メンバーとなったのは、同社の堀陽子さん。2児を育てるワーキングマザーとして忙しい日々をおくりながら、本業とは畑違いの新規事業にチャレンジして成果を上げた。コンテストエントリー時は営業事務の仕事をしていたが、現在は経営戦略本部 新規事業部に所属し、エデュケーションプランナーとして働く。

今回は、堀さん、執行役員 経営戦略本部 本部長 大上徹さん、経営戦略本部 経営戦略部 社長室 副室長 高畑公志さんに、未経験から新規事業を立ち上げるまでのきっかけや苦労した点、会社として社員に本業とは異なる挑戦をさせる目的などについてお話をうかがう。

きっかけは、若手社員の社内勉強会

ビジネスコンテスト応募の発端は、2017年の夏に社内で発足した若手中心の勉強会「美来塾(みらいじゅく)」だった。

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写真右から、堀さん、大上さん、高畑さん。

大上:日々の業務に追われていると、担当業務に関するキャリアや知識は広がっても、ビジネスリテラシーや、他の業界の動向などを学んだり知ったりする機会はどうしても少なくなりがちです。学びの場として、社内の20名程度の若手社員を中心とした美来塾が発足しました。

堀:美来塾では、社内でMBAを取得している者などに講師を担当してもらい、ロジカルシンキングなど、ビジネスの基礎について学びました。業務の合間の時間を使い、ランチミーティングの形式でおこなうことが多かったです。

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やがて、勉強会の中で「せっかく集まったこのメンバーで、何かしらのアウトプットや成果を出そう」という話が出る。そこから、「自分たちで新しい事業を創出する」という目的に向け、事業のローンチに向けてアイディアを出し合ったり、具体的に活動したりするようになっていった。

大上:新規事業のローンチといっても、期限を決めず自主的におこなうと、ダラダラとすすめることにもなりかねません。コンテストに参加することで、締め切りを決めてスケジューリングができたり、アイディアが第三者から評価されたりするよい機会にもなるのではないかと考えました。

ダイアナは、女性が活躍する企業としても知られる。社員の7~8割が女性で、取締役や執行役員のほか、部長クラスにも女性が多い。子どもの用事などの休みを取りやすくしたり、エルダー制度(定年退職後、70歳まで働ける制度)があったりするなど、女性が長く働ける環境を整えている。

美来塾の発足やビジネスコンテストへのエントリーも「若手社員に長く働いてもらうだけでなく、社内でキャリアアップをしていける制度を充実させたい」という、会社としての考えも背景にあった。

子どもにもママにもプラスになる「食育の場」を提供

ダイアナでは以前から健康食品などを取り扱い、3年前からは飲食事業もスタートしているが、日常的な食の部分には事業として携わってきていなかった。

食育事業というアイディアは、どこから出てきたのだろうか。

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堀:実はビジネスコンテストの前から、美来塾から生まれたアイディアである「こどもテーブル」(参加者から材料費を集め、子どもと大人が一緒にごはんを作って食べる)という活動を、2ヶ月に1回おこなっていたんです。

こどもテーブルの経験やスキルを活かしつつ、コンテストのための新規事業のアイディアとして生まれたのが「食スク」です。美来塾のメンバーと話していたとき、子どもがいる女性社員の共通の悩みに「毎日の食事づくり」がありました。働いていると、子どもに栄養バランスの整った食事をつくることが難しかったり、子どもと食卓で向き合う時間が少なく罪悪感があったり。食スクのような事業をおこなうことで、働くママたちも助かるし、子どもたちの成長にもプラスになるのではないかと思ったんです。

食スクでは毎回食育のテーマを決め、テーマに合った料理を子どもたちと一緒につくる。「自分の身体は食べているものからできている」と知ってもらい、調理の経験を子どものうちからさせることで、大人になった時に、栄養バランスの取れた食事を手作りできる力をつけてもらうのが狙いだ。

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「食スク」で、自分たちでつくった料理を食べる参加者。(写真=ダイアナ様提供)

ビジネスコンテストの参加メンバーは堀さん、当時妊娠中だった社員1名、入社3年目の若手社員2名の女性4名。現役のワーキングマザーである堀さんが中心となってすすめられた。

当時、堀さんは営業事務の仕事をしており、食育事業は未知の領域。他のメンバーも、飲食事業の管理、人事・総務、カフェ業務などが本業で、食育事業や新規事業の経験があるメンバーはいなかった。

限られた時間かつはじめての経験の中で、どのように新規事業を形にしていったのだろうか。

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堀:本業や子育ての合間にビジネスコンテストの準備をしていたので、ランチの時間を活用して打ち合わせをしたり、LINEやチャットワークなどを活用したりしてやりとりをするなど工夫しました。帰宅後に、資料作りなどの作業を深夜までおこなうことも。当時は本当に忙しかったですが、夫も、家事や保育園の送り迎えなどの面でサポートしてくれました。

メンバーのひとりが管理栄養士の資格を持っていたので、知識を活かして食事内容などに関するアイディアを出してもらったり、他のふたりは制作物などが得意分野だったので、チラシやロゴ、キャラクターデザインなどを担当してもらったりと、それぞれの強みを活かす形で取り組みました。チームのメンバー以外にも、美来塾のメンバーがお金の管理を担当してくれたり、社内マーケティング部門がマーケティングなどの部分でサポートをおこなってくれたり、たくさんの人が協力してくれました。

私自身、それまでは営業事務としてルーティーンの業務がほとんどで、新規事業の知識も経験もありませんでした。社内の専門的な知識や経験を持つメンバーに相談したり学んだりしながら、実務と勉強を同時進行ですすめていました。

多忙な中でも、以前から「今の仕事とは別の取り組みにチャレンジしてみたい」という目標を持っていた堀さんは、精力的にビジネスコンテストの準備に取り組んでいった。

本業とは異なる場、立場での経験は、堀さん自身のキャリアにも影響をもたらすことになっていく。

仕事への姿勢や考え方が変化

地域未来投資コンテストは、2018年の2月末に書類審査、5月に2次審査を実施。約100組の応募のうち、1次審査でわずか8組に絞られた。2次審査ではさらに5組に絞られ、最終審査までの4か月間の間に、実際にビジネスをローンチさせることに。堀さんはこれまでの部署を離れ、新規事業部へ異動した。

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「地域未来投資コンテスト」でプレゼンをおこなう堀さんたち。(写真=ダイアナ様提供)

順調に審査を通過していったように見えるが、実際に事業としてすすめる中では苦労もあったという。

堀:こどもテーブルとは別に参加者を集める必要があったこと、こどもテーブルが1回500円であったのに対し、食スクは1回3000~4000円と価格差があったこともあり、集客には苦戦しました。チラシの配布やポスティング、Facebookでの告知なども実施しましたが、あまり効果は得られませんでした。途中からは、食に限らず子どもの成長に総合的に携われるサービスということで、運動やお金に関する勉強の企画を取り入れたりもしました。

7月21日に実施されたファイナルコンテストで、堀さんたちのチームは特別賞を受賞。コンテストや新規事業の立ち上げを通じて、堀さん自身にはどのような変化があったのだろうか。

堀:今回の食育事業は、自分が「こういうものをつくりたい」と考えてゼロから形にしていったので、責任という部分が全然違いました。

ビジネスコンテストや食育事業に携わる前は、何も行動していないのに文句を言っている時期があったり、仕事に対し「会社の中にすでにある業務をこなしてお給料をいただく」という捉え方をしていたりしました。今回の経験を通して、「自分でつくりだしたもので価値を生み出し、対価としてお給料をいただいている」という考え方になったと同時に、自分で積極的に行動していけばものごとは変わっていくのだと実感しました。

今後は、提供するサービスや集客方法が合っているのかなど、知識や経験不足の面もあるのでさらに勉強をして、事業の基盤づくりをしていく必要があると考えています。食育事業をきちんと収益が取れる事業として成長させ、最終的には独立した会社にすることが、大きな夢ではありますがひとつの目標です。

ワーキングマザーの場合、働ける時間に制約があるだけでなく、新たな挑戦をすることに躊躇してしまう人も多いだろう。堀さんは限られた時間の中で自分なりに工夫をし、畑違いのテーマに取り組んだことで、一定の成果を出せただけでなく価値観や考え方も変わった。

社員がチャレンジしやすい社内文化を

ダイアナは今後も、若手社員のチャレンジを応援していきたいと考えている。

大上:企業が未来に向かって成長していくためには当然、社員たちも同じように成長していく必要があります。そのために、企業理念を理解したうえで新たな事業を立ち上げたり、中核となるビジネスをつくったりできる人材になって欲しい。

経営陣としても、若い社員たちには自分たちでビジネスリテラシーを高めたり、さまざまな経験をしたりしてキャリア形成につなげて欲しいという想いがありますから、会社として今後も後押しをしていきたいと考えています。

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高畑:美来塾は、社員たちにとってひとつのチャンスだと思います。チャンスは自分たちで獲りにいかないと、美来(美しい未来)は築いていけないですし、会社としても「能動的に行動できる社員を増やしたい」という想いがあります。

美来塾ができる前は「たとえ新しいアイディアを社内で提案しても採用されないのではないか」という考えが社員の中にあったかもしれません。ですが、今回のような具体的な結果が出たことで「手を挙げて積極的に行動すれば、それを実現できる場や機会を与えてもらえるんだ」と思える文化が社内にできた。社員が、新しいことにチャレンジすることへのハードルは下がったと思います。

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大上:新規事業の経験がなかった堀が自分の頭で考えたり、社内外の協力を得たりしながら、アイディアをひとつの形にしてひとつの成果を出したのは素晴らしいことです。実際に社内でも堀の姿を見て「自分もチャレンジしてみたい」という声もあがっています。これからも、社員がモチベーション高く働ける環境を会社としてつくっていけたら、と思います。

社員に積極的に新しい挑戦をさせ、担当業務にとどまらないキャリア形成を支援するダイアナ。この取り組みは、社員にとっても会社にとっても、大きな成長につながっていくことは間違いない。

写真:AUSTIN Studio