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部下と信頼関係を築く。これはマネジャーとして働く上で、大きな課題のひとつです。しかし親身になって部下の話を聞いているのに、いい関係を築けず悩んでいる方は少なくありません。

そんな方は、社外活動を充実させてみてはいかがでしょうか? 複業や趣味など、仕事以外の社外活動を充実させている上司は”ボス充”と呼ばれ、若い部下から支持される傾向があるといわれています。

今回は、ボス充の名付け親である株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 古野庸一さんに、「ボス充になるメリット」についてお伺いしました。

そもそもボス充とは

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プロフィール:古野庸一氏

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所所長。1987年株式会社リクルートに入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。キャリア開発に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、ワークス研究所にてリーダーシップ開発、キャリア開発研究に従事。2009年より現職。

――リクルートが主催する「2018年のトレンド予測発表会」にて、人材マネジメント領域のトレンドワードに”ボス充”が選出されました。そもそもボス充とはなんでしょうか?

生活を楽しみ、社外活動を充実させているマネジャーが、会社や社会に良い影響を与えて、社内メンバーから信頼されているような現象です。それをボス充と呼んでいます。

――社外活動とはなにを指すのでしょうか?

複業や趣味、NPOやボランティアでの活動、育児など仕事以外のことですね。

マネジャーが社外活動をおこなうことで、会社では出会わないタイプの方と接する機会が増えます。そこで出会う方と一緒に活動することやリーダーシップをとることで、多様な価値観を持つ人たちをマネジメントする経験が得られるのです。

「人生100年時代」におけるボス充は理想的な存在になりうる

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――ボス充になることで若い部下から信頼を得られるんですか?

若い部下の信頼を得るためのひとつのきっかけにはなると思います。

弊社は2017年に若い部下がボス充をどう捉えているのかの調査をおこないました。その結果、最近の若い方は、仕事だけではなく、社外活動を充実させている上司を支持する傾向があることがわかりました。

自分が思っているより「社外活動が充実している上司のほうが、そうでない上司よりも、若い部下には魅力的に映っている」「多くの若い部下にとって、理想の上司は人間的な幅が広く、かつ早く帰る人である」「若い部下は、上司の社外活動の話を聞きたいと思っている」という結果が出たのです。

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リクルートマネジメントソリューションズ 上司の社外活動に関する意識調査(「ボス充」意識調査)2017より引用

――なぜ若い世代は社外活動を充実させている上司を支持するのでしょうか?

若い世代は自身が多面的な自己、「本当の自分はひとつとは限らない」という考えを持っており、仕事の充実だけではなく、社外での充実も含めて重視しているからです。

近年、これからはVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代や「人生100年時代」といわれています。1社だけ、あるいはひとつの仕事だけにすべて賭けるのはリスクが高い社会。そのことを若い世代は自覚しているからこそ、社外活動を重要視しているのでしょう。そうした考えを持つ若い世代にとってボス充は、理想的な存在といえるのでしょう。

――職場のマネジメントにおいて、社外活動はどのように役立つのでしょうか?

3つあります。

一つは、部下を育成する際の技術向上につながることです。

たとえば、少年野球の監督を社外活動でしていた管理職の方のケース。ただ練習内容を伝えても、子どもたちは考えずにこなしてしまいます。「なぜその練習が必要なのか」を子どもたちが興味を持てる形で伝えることで、子どもたちは自ら考えるようになり、上達も早くなることが期待されます。そうした指導の経験は、会社で部下のモチベーションを引き出す際に応用できるものです。

二つめは、若い部下の社外活動に対する理解が深まります。自身が社外活動をおこなうことで、社外活動の魅力や意義を実際に体感することができ、部下の社外活動に対しても自然と理解が深まるでしょう。

三つめに、先ほども述べたように、多様性の理解にもつながることがあげられます。社外活動によって、仕事の背景や世代が異なる人たちと意見交換するには、自身の考え方を丁寧に言語化し、伝えることが必要です。当たり前だと思っていたことを見直す機会になるだけではなく、他者の当たり前を理解しようとする姿勢が身につくでしょう。

ボス充上司のふたつの事例

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――実際に、社外活動を充実させることで、社内にいい影響を与えている事例を教えてください。

日本電気株式会社で事業部長をしているAさんという方がいます。

彼は、社外活動をおこなう前は事業部長として数字ばかりを気にしていました。しかし、社外活動がきっかけで、事業をおこなう上での社会的意義の重要性を知り、若い部下の意見を吸い上げながら仕事を進めるようになったそうです。

――Aさんは、どんな社外活動をされているのでしょうか?

会社から提案されて、「NEC社会価値創造塾」というリーダー育成プログラムに参加していました。そこで地方創生や介護現場を体験して「自分がいかに知っているつもりになっていたかに気づくことができた」といいます。その体験から、介護に役立つ新規ビジネスにも取り組むようになったそうです。

――会社からの提案がきっかけで、ボス充になる場合もあるんですね。

そうなんです。他の事例としては、富士通株式会社マネジャーのKさんの話があります。

彼は、社外活動によって自社にいるだけでは出会わない人たちに対するマネジメントを経験し、その経験が社内でのマネジメントに生きているといっていました。

――どんな社外活動をされているのでしょうか?

フットバックという競技はご存知ですか。直径5cmほどのお手玉のようなボールを主に足を使って蹴るスポーツです。彼は、あるときフットバックの魅力にはまり、日本フットバック協会を立ち上げました。日本だけではなく世界と情報交換しながら協会を運営しているそうです。

ほとんどの人がなにかしらの社外活動をしている

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――社外活動をはじめたいけれど、なにからはじめたらいいかわからない場合はどうすればいいのでしょうか?

そもそも、ほとんどの人がすでになにかしらの社外活動をしていると思うんです。本当になんでもいいんです。趣味でも、スポーツでも、家庭のことでも、PTA活動でも。それらすべてが社会活動になります。

――社外活動のハードルを勝手に高く設定していたかもしれません……。

基本的には、自身がやっている社外活動を自覚することからはじめるとよいでしょう。注意する点としては、活動するだけではなく振り返って自身の学びにすること。今やっていることは、「どういう学びがあるだろうか」「仕事に役立つことがあるだろうか」など考えてみてください。

――活動を自分から学びに変えていくんですね。

はい。たとえば、育児。これも経験です。産休や育休をとった女性が職場に戻ってくると、人間的な幅が広がっていることが多い。しかし、育休から会社に戻ってきた本人がそのことを自覚しておらず、「ごめんなさい、育休でご迷惑をお掛けしました。」という方がほとんどです。すごく良い経験をしているんだから、自信を持って職場に復帰してほしいですね。

もし学びがわかりやすく仕事に役立っていなかったとしても、人としては成長している。ならば、社内メンバー同士のコミュニケーションやマネジメントの際にもいい影響を与えられると思います。

また、人はいろいろな知識やスキルを持っています。社内にいるときは、その中の一部しか使っていません。しかし、その人のすべてではない。社内で使っていない知識やスキルを社外で使えば、それはそれで社会のためになり、そういう機会を増やすことは社会にとって大切であると思っています。会社がその人の知識やスキルを独占することは、社会にとっても本人にとってもよくないことであると思います。そういう意味でも社外活動を充実させるのはいいことだと考えています。

――マネジャー層と若い世代がお互いに「本当の自分はひとつとは限らない」という考えを再認識できる言葉がボス充なのかもしれないですね。

いい感じにまとめてくださって、ありがとうございます(笑)。