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自社以外の組織をマネジメントする。パーソル(旧インテリジェンス)の若手がリーダーシップを学んだ社外研修

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2015年春、人材育成のプログラムとして社外活動を導入したパーソル(旧インテリジェンス)。(導入の詳細は樋浦氏の話を参照)

第1号の参加者は、応募総数26人の中から「自己成長に対する本気度」や「最後までやり切る覚悟」をポイントに選抜された若手社員3人だ。NPOとの短期プロジェクト「サポートプロジェクト」に参加し、意識改革や自己変容を促される人は多い。初めての試みはメンバーにどのような影響を与えたのか。

サポートプロジェクトに参加した油谷大希氏(キャリアディビジョン人材紹介事業部コマース&コンシューマー統括部マネジャー)と森谷元氏(ビジネスソリューションズ コンサルティング統括部コンサルティングサービス部)に話を聞いた。

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(左から人事 樋浦氏、プロジェクト参加メンバーの金澤氏、油谷氏、森谷氏)

自分の幅を広げる尖った経験を求めていた

――サポートプロジェクトに参加した動機から教えてください。

油谷:大きく分けて2点あります。1つは、社外に目を向けた研修を受けたかったことです。入社1年目から様々な研修を受けていたものの、参加者はパーソル(旧インテリジェンス)の社員だけ。これだとアウトプットがあまり変わらない感じがして、ほかの企業の社員と一緒に受講したらどうなるだろうと思っていました。

もう1つは、マネジメントの幅を広げるために、自分のチーム以外のマネジメントをしてみたかったのです。これまで培ったスキルを生かし、もっと様々な人をマネジメントし、自分のスキルの幅を広げたかった。とりわけ多様なメンバーと関わってみたいというのが一番のポイントでした。

 

――森谷さんは応募要件を満たしていなかったのに、それでもやりたいとねじ込んだとか(笑)。

森谷:そうです、ねじ込みました(笑)。応募理由は3つあります。1つは学生時代からソーシャルビジネスに関心があったこと。2つ目に、入社1年目に社内のビジネスプランコンテストでファイナルまで残った経験があり、同じような自分の成長につながるような機会にはぜひ挑戦したいと思っていたこと。3つ目が、かつてのパーソル(旧インテリジェンス)の文化、風土を取り戻す取り組みをしたかったことです。就職活動のときに「当社はベンチャー気質な会社だ」と聞いていたのですが、若い世代は目の前の業務に追われるばかりで、尖ったことをやろうというムードが薄れている気がしています。今回の研修で一番刺さったのは、成果までコミットするという部分です。

 

――プロジェクトでは具体的にどんなことに取り組んだのですか。

油谷:僕が参加したのは、家事シェアプロモーション事業などを手掛けるNPO法人tadaima!のプロジェクトです。子供に楽しく家事を体験させることで成長させる「家事教育」を推進していく「キッズ家事プロジェクト」という新規事業に取り組みました。具体的には、なぜ家事教育が効果的なのかのエビデンスづくりに始まり、それを体現している家族のインタビューをまとめ、実際に子供に家事をやってもらうワークまで入ったブックレットのプロトタイプを作成しました。

 

森谷:私は、がんのよろず窓口である一般社団法人CAN netのプロジェクトに参加しました。紆余曲折がありましたが、最終的にはプロモーションマーケティングの実施と、正確にもれなくサービスを提供できるツール作りをしました。

プロモーションマーケティグに関しては、CAN netのサービスを今後ローンチしてやっていくのに、どんなターゲットにどういう手法で届けるのが最も効率的か、意識して設計しました。

サービス提供ツールに関しては、サービスのスタートから終了までの各プロセスで誰がどのタイミングでどんな動きをするかというフロー図を作りました。これをベースに、一つひとつのタスクにどのくらいの工数と時間がかかるのかを算出し、作業量が増えたときに何人を配置すべきかを可視化しました。

 

――プロジェクトのために週に何時間くらい時間を費やしましたか。

森谷:LINEのやりとりでいうと、一番多いときで1日100件ぐらい。週1、2回くらいは実際に会っていました。個人の作業時間としては週に5~8時間くらいでしょうか。

 

油谷:毎週定例のミーティングが1回2時間半から3時間、プラス土日の作業です。個人の作業時間は週に10時間ぐらいですね。

 

5時間ひざ詰めで議論する修羅場体験も

――プロジェクト期間中、モチベーションが下がることはありませんでしたか。

油谷:僕たちのチームは、やるべきことが決まるのがわりと早かったのです。2、3回目のミーティングでは決定して、先方の了承も取り付けられた。先方の代表が毎回ミーティングに参加してくれ、意思決定が速かったのも大きかったですね。ただあまりに順調で、途中少し油断してしまいました。中間報告会直後にチームとしてもあまり機能しないタイミングがあり、そこから再びぐっと上がっていった感じです。

 

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森谷:僕自身、モチベーションは高かったのですが、徐々に右肩下がりになって、明確に失われたのが中間報告会でした(笑)。中間報告の翌々日ぐらいに5時間くらいミーティングをして、V字回復というかI字回復ぐらいの勢いで、そこからたぶん天井すれすれをずっと行ったという感じです。

一時は団体側が何をしたいか理解できず、もう暗雲が立ち込めまくっているみたいな状態でした。それでも何とか中間報告で発表したもののやっぱり駄目で。そうなっていたところから、団体側の思いや覚悟が明確になり、チームビルディングもいい感じになって一気に走り続けられました。

 

――なぜ5時間も話すことになったのですか。

森谷:そもそも先方のオーダーはテストマーケティングで、それを受けてこちらも準備を進めていました。ところが、中間報告会の発表で、団体側が考えるテストマーケティングとこちらが考えるテストマーケティングの解釈が違っていることや、団体の思いややっていきたいことなど前提の部分を十分理解していないと分かったのです。

どうしたらそれを埋められるかといったら、もう直接話すしかないね、と。5時間ひざ詰めで話しました。そこで団体の代表に、生い立ちからなぜこの団体を立ち上げたのか、今どんな現状で、今後どうしていきたいのかを聞かせてもらい、自分たちも思いの丈を洗いざらい話しました。

代表が北海道在住の方で、毎回のミーティングに参加することがなかなか難しかったこともあってそれまでぼんやりしていたことが一気に見えた感じでした。それまで正直言ってあまりいい空気ではなかったのですが、本音でコミュニケーションしたことで雰囲気が良くなり、何より腹落ちした。それがプロジェクトの反転につながりました。

この経験で、相手の思いを本当の意味で理解することの難しさを改めて痛感しました。その人の思いの源泉まで立ち返り、自分の思いを重ねていく作業は簡単ではありませんね。

 

取り組み方やプレースタイルが変わった

――今回のプロジェクトで自分自身一番変わったところはどこですか。

油谷:今回の依頼は、キッズ家事プロジェクトのゼロからの立ち上げでした。何から始めればいいか決まってないところから一緒に知恵を絞り、取り組みを設計しました。僕自身、今までゼロからイチをつくる経験がなかったので、ブレークスルーのポイントになりました。

もう1つは、自分の実績や強みが全く機能しない組織でも、マネジメントできる可能性を感じることができました。今まで僕が率いてきたのは営業部隊で、自分が先頭に立ち引っ張っていくやり方でマネジメントしてきました。でも今回はメンバーの職種も違えば、圧倒的なアウトプットを出すことに長けている人たちばかり。そこで僕は前に出ず、メンバーにタスクや指示を与えることでアウトプットを最大化していくことを心掛け、実践できた。それが大きかったですね。

 

――人事の担当者である樋浦さんは「今回のサポートプロジェクトの一番の成果は参加者3人に人間としての深みが加わったこと」と話しています。

油谷:深みですか。自分ではよく分かりませんが、仕事の進め方は大きく変わりました。実はサポートプロジェクトとほぼ同じタイミングで、女性ばかりのチームをマネジメントするようになったのです。それまではゴリゴリの営業マン中心のチームでしたからやり方を変えないといけないわけですが、ここでサポートプロジェクトの経験が役立ちました。

強引に引っ張るのでなくて、自分の価値観や経験則をメンバーに分かりやすく伝え、やる気になってもらい、成功に導くというアプローチです。僕自身ががんがん動くのではなく、メンバーの自主性を引き出す、エンパワーメントするようなやり方をしていて、手応えを感じています。メンバーからも「前より話しやすくなった。油谷さん、ちょっと最近変わりましたね」とよく言われます(笑)。

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森谷:たぶん変化の振り幅は自分が一番大きかったのではないかと思っています。一言で言うなら、今までは自分の価値基準だけしか見ていなかった。バックグラウンドが違う人たちの中で1つの成果をコミットしなければいけないときに、自分の価値基準だけで判断しようとすると、全く違う方向に行きかねない。それがよく分かりました。多様性という言葉の本質的な重みを知ることができたのは、今後の自分にとって一番いい栄養剤になりました。

今までマネジメントというと、「自分のやり方をメンバーにインストールさせて、アウトプットを出す」というイメージを持っていたのですが、今回多様な人と関わることで、それ一辺倒ではうまくいかないことを学びました。

 

――プロジェクト終了後、先方に何かサステナブルな仕組みや教訓を残せたと思いますか。

森谷:ときどき思いが強いがために、独りよがりになっていると感じることがあり、そんなときに「いやいや、自分たちの価値基準だけで話していませんか」とか「それは外から見ていただけでは分かりませんよね」と言わせていただきました。少しかもしれませんが、客観的な視点を組織に定着させることはできたのではないかと思っています。

 

企業研修で参加したからこそ、最大限に機会を活かせた

――今回のチームでは、お二人のように会社が研修プログラムとして提供してくれる形で参加している人もいれば、個人で参加された人もいました。会社からスポンサードされて参加する場合と、そうでない場合とで何か違いを感じましたか。

油谷:僕のチームで言えば、個人参加と、研修で参加している人では、プロジェクトを通じて成し遂げたいことが違うなと思っていました。個人で来られている人は、どちらかというとNPO団体の活動自体に興味があり、それを世の中に広げたいという考えでした。一方、研修組は経験を通じて自分が成長したいという欲求が高いように思いましたね。そういう動機の違いはあったと思います。あとは本気度ですね。研修で来ると、樋浦さんや「二枚目の名刺」の松井さんが間に入っていただいているので、中途半端なことはできないと常に思いますよね。個人参加と比べると、プレッシャーがあって、本気で立ち向かわないといけない環境になるのは事実じゃないでしょうか。

 

――会社からスポンサードされて参加したほうがいいですか。

油谷:今だったらスポンサードされなくても自分の成長に結び付けられる自信はありますが、最初はサポートなしでは難しいかなと思います。

森谷:学びの深さが圧倒的に違うと思います。最初はやっぱりスポンサードされて、マインドセット、目標立案、進捗確認というプロセスと、最後終わった後のフィードバックをサポートしてもらったほうがいい。スポンサードされていない場合より学びが断然深くなりますから。

 

 

会社概要

パーソルホールディングス株式会社
本社:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング28F
創業:1989年
社員数:5,166名(有期社員含む、2016年3月末現在)
事業内容:転職支援、人材派遣、求人情報、アウトソーシングなど総合人材サービス
URL:http://www.inte.co.jp

 

サポートプロジェクト概要

【実施期間】
・2015年8月~11月(3カ月間)

 

【パートナー団体/プロジェクト内容/メンバー構成】

◼︎tadaima!(家事シェアプロモーション事業など)
[新規事業「キッズ家事プロジェクト」立ち上げ支援]
・インテリジェンス 営業 20代
・IT SE 20代
・IT SE 30代
・大手機器メーカー 経理 20代
・医療機器メーカー 内部監査 30代
◼︎CAN net(がんの何でも相談窓口)
[プロモーションマーケティング、業務改善]
・インテリジェンス コンサルティング 20代
・IT SE 20代
・IT SE 30代
・ベンチャー企業 SE 20代
・大手電機メーカー システム 30代
・広告代理店 クリエイター 30代

◼︎キーパーソン21(中高生向けのキャリア教育)
[新規事業プログラムのマーケティング立案]
・インテリジェンス 営業 30代
・IT SE 20代IT SE 30代
・経営コンサルティング会社 20代
・ITコンサルティング会社 20代
・人材業 営業 20代

(上記情報・肩書は、取材実施 2016年1月時点のもの)

注)本記事は、二枚目の名刺ラボ(2016/1/10開催)で油谷大希氏/森谷元氏がお話した内容と質疑内容をもとに作成しております。

(荻島 央江)

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